レベルを上げよう!〜龍神の水郷〜③
〜龍神の水郷 ドラグマの神樹 稽古2日目〜
翌日の朝。稽古は苛烈を極めた。
アジ・ダハーカは勿論、手加減をしてくれるが力量の差があり過ぎて油断すれば死ぬ。
比喩ではなく言葉通りの意味で。
俺は何とか攻撃を防ぎ稽古を続ける。
そして……。
「ーーあっぶねぇぇぇ!!」
龍斧ティアーマの横薙ぎの一撃を皮一枚で回避した。
「お。よく避けたのう」
斧を担ぐアジ・ダハーカ。
「当たったら死ぬだろ…必死だっつーの!」
「うむ。死の恐怖に打ち勝ち乗り越えてこそ経験値も稼げよう」
したり顔で頷く。間も無くしてLv upのウィンドウが表示された。
「ん…?おぉ!レベルが上がったぞ」
ーーーLv3→Lv4へLevel upーーー
・戦闘数値・非戦闘数値が上昇しました。
・呪術『白墨蛇→神樂蛇』に変わりました。
・従魔との親密度が上がりました。
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名前:黒永悠
性別:男
種族:人間
称号:穢れと供に生きる者
職業:禍の契約者 Lv4
戦闘パラメーター
HP27000 MP8500
筋力3700 魔力800 狂気5200
体力2000 敏捷2700 信仰-1700
技術2500 精神800 神秘2200
非戦闘パラメーター
錬金:92 鍛冶:105
生産:90 飼育:70
耐性:狂気の極み 神秘耐性(Lv Max)
不老耐性 不死耐性(Lv4)聖奪の極み
戦闘技:獣狩りの技法・ギミックブレイク
奇跡:死者の贈り物・吸生の蛇
呪術:禁呪・神樂蛇・禁呪・淵嚼蛇←
禁法・縛烬葬 蛇憑き面
加護:アザーの加護 夜刀神の加護
従魔:祟り神のミコト(親密度50%)
固有スキル:鋼の探求心 閉心 兇劍 顕魔 魔人
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呪術
①禁呪・神樂蛇
契約した祟り神の力。血とMPを代償に三匹の妖美なる白蛇を召喚。術者の命に従い激烈たる攻撃を行う。
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「…あんなに戦闘を繰り返しても上がらなかったレベルが簡単に…」
「どうじゃ。妾の凄さが分かったじゃろう。…しかし其方の場合は契約した祟り神の加護があるからのう。莫大な経験値を要求されるし段々と上がり辛くはなるぞ」
「なるほど」
「加護の恩恵でパラメーターの数値上昇は通常とは比べ物にならんがな。二つも加護を受けてる時点であり得んことじゃが…夜刀神とアザー…。ふむ。アザーとは何処かで見聞きした記憶があるのじゃが…はて?」
アジ・ダハーカが腕を組み首を傾げる。
「…でも本当にアジ・ダハーカは凄いな。流石は龍峰の支配者だ」
率直に褒める。
「ふっふーん。讃美の声は心地が良いのう」
「こっからも宜しく頼むぜ」
近付いて頭を撫でる。
「…ふぁ!?そ、其方は何をしておるのだ!」
「あ。…悪い。いつもの癖で」
アイヴィーにするように頭を撫でてしまった。
「ぶ、無礼じゃぞ…。気安く妾の頭を撫で…うぅむ…上手に髪を梳きおってからに…気持ち良い…」
目を細め身を任すアジ・ダハーカ。
「そっか?」
「うむ。頭を撫でられるなどいつ振りじゃろ。…そうじゃ。アルマ様と最後にお会いした以来か…」
思い出しぽつりと呟く。
「へぇ。…っと馴れ馴れしく頭を触ってごめんな。稽古の続きと行こう」
頭から手を離す。
「あ…」
「どうした?」
「も、もうちょっと…撫でても構わんぞ!女体に触れ合う機会なぞ無さそうな顔をしておるし…と、特別に妾の頭を撫でるのを許可しよう」
素直じゃないのはアルマと瓜二つ。
満足するまで頭を撫でた後に稽古を再開する。機嫌良く怒涛の攻撃を繰り出され死にかけたのだった…。
〜龍神の水郷 水没の遺跡群 稽古15日目〜
龍神の水郷で稽古を開始して早くも二週間。今日は水没した遺跡群の上で稽古をしている。
ーーイグナ・フレイム。
燃え盛る豪火球が迫り足場の遺跡の屋根から跳ぶ。
火球が水面衝突すると爆音が響き水柱が雨の様に飛沫となって辺りに降り注いだ。
「ほれほれ〜。しっかり周りを見て動かんと死ぬぞ」
「ぐっ…S・バレット!」
剛銃・アンチレイムで戦闘技を発動するも銃雨の弾丸は敢え無く回避される。
ーー…隙がある。甘い。
威圧に思わず足が止まり尻尾の一撃を腹に食らった。
「ぐふ」
嘔吐感を必死に堪えた。
ーー蛇ちゃんも戸惑ってますよ。しっかり指示をして下さい。
稽古はより実戦に近くなりオルガとオルドも参加する様になったのは三日前。
神樂蛇で召喚したシロ達と戦う。シロ・ハク・ランは更に大きく美しい純白の白蛇へと変わっていた。
雄々しく頼もしいがアジ・ダハーカに加えオルガとオルドの双竜が相手となると分が悪い。二匹は飛火竜サラマンドルが可愛く見える程、恐ろしい強さだった。
〜20分後〜
「ぜぇ…ぜぇ…し、死ぬぅ…!」
草原の上で寝転ぶ。
ハクが舌で顔を舐め心配そうに覗いていた。
シロとランは水辺を気持ち良さそうに泳いでいる。白墨蛇の時と比べ感情や意思が明確になったみたいだ。
ーー…悪くはなかった。
ーーですね。この調子で頑張りましょう。
「今日はここまでじゃの。湯浴みをしてご飯にしようぞ。…ホットケーキ!ホットケーキ!ふっふ〜ん」
鼻唄混じりに秘湯へ向かおうとするアジ・ダハーカ。
「…ちょ。もう少し休憩させ…」
「オルガ」
ーーはい。失礼しますわ。
「あぁぁー…待ってぇぇー…」
オルガに咥えられ秘湯に移動する。
因みに今日までの稽古で俺はLv8まで上がり新たな耐性・戦闘技・奇跡も習得した。
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名前:黒永悠
性別:男
種族:人間
称号:穢れと供に生きる者
職業:禍の契約者 Lv8
戦闘パラメータ
HP42000 MP10500
筋力4900 魔力1250 狂気6000
体力2900 敏捷4000 信仰-2000
技術3800 精神1250 神秘2900
非戦闘パラメーター
錬金:110 鍛冶:130
生産:102 飼育:90
耐性:狂気の極み 神秘耐性(Lv Max)
不老耐性 不死耐性(Lv5)聖奪の極み ←
戦闘技:獣狩りの技法・ギミックブレイク ←
奇跡:死者の贈り物・蛇縄絡←
呪術:禁呪・神樂蛇・禁呪・淵嚼蛇
禁法・縛烬葬 蛇憑き面
加護:アザーの加護 夜刀神の加護
従魔:祟り神のミコト(親密度54%)
固有スキル:鋼の探求心 閉心 兇劍 顕魔 魔人
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耐性
不死耐性(Lv5)
①傷や病気の回復速度が大幅に上昇する。
戦闘技
①ギミックブレイク
・デス・ペナルティ…HPを大幅に消費し必殺の一撃を繰り出す。
奇跡
①蛇縄絡
・MPを継続消費し術者の範囲10m以内の敵に絡みつきHPを吸収する特殊な蛇の群れを召喚する。
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不死耐性もレベルが上がり新たな戦闘技も覚え奇跡も強力になったが上手く扱えていない。
戦闘数値も上昇してるのに原因は分からなかった。
…相談してみるか。
〜夜19時 龍神の水郷 ドラグマの神樹前〜
夕食後、能力を上手く使えない事を相談してみた。
「ふぉへふぁ…もぐ。ふぇんどふぁふぁひふぃ。…もぐもぐ」
「食ってから喋ってくれ」
アジ・ダハーカがホットケーキを口いっぱいに頬張って喋るが意味不明だ。
朝から晩まで同じメニューで飽きないのだろうか。…この調子じゃ材料も予定より早く底を尽きそうだ。
ーー…『練度』が足りないと主は仰られてるのだ。
オルドが代わりに答える。
「練度?」
ーー練度とは訓練や実戦を積み重ね鍛えられる能力の熟練度を示す言葉だ。
それにオルガが優しく言葉を続ける。
ーー悠の持つ戦闘技・呪術・奇跡は強力だけど練度が伴っていない。アビリティが強力な分だけ練度が重要になってくるの。
「ふむふむ」
ーー練度を上げるには技を反復し使い練習し戦って体に染み込ませるしか方法はない。
ーーステータス画面で視認できるものではないから。
「…使い熟せないのは俺の練度が低いってことか」
「ごくん。…うむ!普通は真っ当に成長すると戦闘数値の数値も戦闘能力も比例し伸びるもんじゃから練度は自然と鍛えられる。悠の場合は契約による数値上昇と加護の恩恵の影響で噛み合っておらんのだ」
「結構な戦闘数はこなしてるぞ」
「オルガが言ったじゃろ?アビリティが強力な分、其方の想像以上に高い練度が求められてるのじゃ」
思い当たる節はある。
戦闘中にHPやMPの残量を気にして戦闘技やMPを消費する呪術の使用頻度は確かに少ない。
本来ならもっと強いって事か…。
「…なるほどなぁ。勉強になったよ。練習して練度を高めなきゃな」
ーー良い心掛けだわ。けど実戦で節操なしにアビリティを使用し続けるのは危険ってことは忘れちゃ駄目よ。ねぇあなた。
ーー…ああ。
「それはそうと…悠〜。おかわりなのじゃ〜」
呑気に皿を突き出すアジ・ダハーカ。
「…ったく。食べ過ぎだぞ」
そう言いつつも皿にホットケーキを乗せる。
「ふにゅー!」
喜色満面の笑顔を見るとついつい食べさせちまう。
ーーふふ。私も食べたくなるわ。
「やらんぞ」
皿を抱えるアジ・ダハーカは威嚇する様にオーラを放っていた。
…オーラ…あ、そうだ!
「もう一つ質問がある。…威圧する…その圧力って自由に操れるのか?さっきの稽古中もそれで動きが止まったんだ」
ーー圧力?…ああ。これは感情を込め魔力を体に滾らせる…それだけだ。難しい技術じゃない。俗に『魔圧』と呼ばれてる。
魔圧…。
ーー強者が使うと相手を警戒させ動きを鈍らせたり初動を封じる事もできるわ。
ラウラやルウラも使ってたっけ。
「よし。俺もしてみよう」
感情を込めて…魔力を滾らせて…っと。
ーー……!
ーーまぁ…。
「むごっ!?」
「ーーどうだ?」
オルドが厳しい口調で呟く。
ーー……お前の場合、従魔の影響なのかか凶々しい威圧感を放っている。
ーーええ。…酷く冷たくて…刺々しい魔圧ね。
「喉にホットケーキが詰まりかけたわ。…悠よ。飲み物をくれ。あま〜いココアなるやつじゃぞ」
魔圧を使えば余計な戦闘を回避できそうだ。取り敢えず明日からは練度も意識して稽古を頑張ろう。
ココアを作りながらそんな事を考えた。




