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レベルを上げよう!〜アジ・ダハーカの龍峰〜②


〜アジ・ダハーカの龍峰 雹晶崫〜


ーー着いたぞ。


背から降りると足が震えていた…。


とんでもない速度で飛び続けるフカナヅチの背に必死にしがみ付いてたせいだ。


急に旋回したかと思えば宙返りしたりしやがって…。


ジェットコースターに安全ベルト無しで乗った気分。


下手したら振り落とされてたぞ。


景色を楽しむ余裕も無かった。地面がここまで恋しくなったのも初めての経験だ。


「あぁー…気持ち悪い…」


乗り物酔いの嫌な不快感が身体に渦巻く。


ーー…情け無い。あれしきで根を上げるとは。


「お、お前が急にアクロバティックに旋回したり宙返りするからだろ…おぇ…」


ーー何分、人を乗せ飛んだのは初めてだからな。…喜ぶと思って普段しない動きを取り入れてみたのだが逆効果だったようだ。


ありがた迷惑なサービス精神だなおい。


「しっかし…ここが雹晶崫か。綺麗だ」


薄紫の結晶が光輝く洞窟が眼前に広がる。輝く結晶の光に反射して鮮やかな色合いが幻想的であった。


ーーうむ。ここは純粋な魔素の高い晶石が何千年…何万年…と龍峰の恩恵を受け育ち形成された岩窟よ。


「へぇ」


レアな鉱石類や晶石が手に入る予感がびんびんだ。


ーー…だが気を付けるのだな。美しき花に毒が有るように此処には猛毒が蔓延る。長く留まれば龍すら抗えん『結晶病』を患う。


「結晶病?」


ーー雹晶崫の魔素は通常の魔素とは比べ物に為らぬほど濃い。龍峰の濃い魔素は身体に蓄積し生物をやがて結晶へと変えてしまう。


「結晶に変わる…」


ーー此処のもう一つの呼名は『死彫崫』。結晶へと変わった魔物や生物が彫像の様に変わり佇む所以だ。それ故、雹晶崫に住む龍や生物は居ない。


とんでもねーとこじゃねぇか。


「濃い魔素って体に悪影響なのか?」


ーー魔素は生物が生きる上で大切な要素だ。しかし過ぎたる良薬は毒に転じるのと同じ。他にも元素が強く作用し魔法の威力は高まるな。


酸素が濃いと人を死に至しめるのと同じ原理と考えて良さそうだ。


ーー異常状態に対し耐性があれば遅延も可能だが通常の毒耐性では太刀打ち出来ぬぞ。


「あ、大丈夫だ。俺は完全な耐性持ちだし」


フカナヅチが双眸を細め怪しむ。


ーー…完全な耐性だと?結晶病を防ぐ耐性持ちなど見たことも無いが。


「狂気の極みって耐性持ちなんだ。完全に防ぐらしい」


今度は双眸を見開き驚く。


ーー狂気の…極み…馬鹿な。極みに至る耐性なぞ人の身では無理だ…いや、祟り神の契約者ならば当然とも言えるか…。


一人で勝手に納得したみたいだ。


俺も気になってる事がある。聞いてみよう。


「戦闘前に古のしきたりって言ってたよな。しきたりなんてモンスターにあるの?」


ーーふん。我等は誇り高き竜の血族。そこらの低俗な魔物とは生物としての格が違うわ。龍峰に住む龍に古来より伝わる伝承…人が龍峰を訪れたら資格があるかその瞳にて審判せよ、と。弱き者に竜の聖地を歩む資格なし。そう教えられた。


「なるほど」


ーー…まぁ、耐性を持つ悠ならば雹晶崫も苦労せぬだろう。クク…精々、頑張ってみよ。


「ありがとう」


何だかんだフカナヅチにも世話になったな。最初、会った時はこうなるとは想像も出来なかったが。


…うん。昼にはまだ早いが俺も腹が空いたし飯でもご馳走してやるか。


「フカナヅチ」


ーー何だ?


「折角だし飯を一緒に食わないか?運んでくれたお礼にご馳走してやるよ」


ーー飯…。人が作る物なぞたかが知れてるだろうが…好意を無下にするのも忍びない。食ってやろう。


態度がでかい奴め。


薫製肉じゃ味気ないし…えーっと…竜の肉って食えるのかな?


サーチして見るか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

水竜ラグリッモの死骸

・竜種のモンスターの死骸。腹回りのバラ肉

や背肉が美味。他の箇所も適切な処理をすれ

ば食用可能。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


お!食えるじゃん。


…待てよ。共喰いにはならないのかな。


「確認だが龍って同族を食ったりするのか?」


ーー龍の世界は弱肉強食。誰もが餌に成り得る。同族と言えど喰らうのが龍よ。


問題なさそうだ。


どれ、調理していくか。



〜1時間後〜



ーー…まだか?そのまま食らった方が早いではないか。


「まぁ、待てって。あとは焼くだけだからさ」


解体をやっとこさ終えラグリッモの骨付きバラ肉に家から持ってきた特製蜂蜜タレをたっぷりと塗る。


フカナヅチの体格なら相当量の肉を食いそうだ。


持ってきた薪木に火を起こしその辺に転がっている石で囲み腰袋から金網を取り出し乗せた。


あとはじっくり焼けば完成だ。



〜30分後〜



「よし。できたぞ。ほら」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

水竜ラグリッモのスペアリブグリル。

・ラグリッモの骨付きバラ肉に悠が調合した特製

蜂蜜のたれを塗り焚き火で焼いた肉料理。豪快だが

単純に美味く涎が止まらない一品。

筋力+150 魔力+200 水の心得(3時間付与)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーー随分、待たせおって…。ふん…只の焼いた肉ではないか。…まぁ、匂いは悪くないが。


鼻を鳴らすフカナヅチ。


「食ってみろよ」


促されフカナヅチが肉を骨ごと噛みちぎり咀嚼し飲み込む。そして余韻に浸るかの様に沈黙した。


ーー………。


再び食う。今度は一気に丸ごと口いっぱいに頬張った。


ーー…むしゃむしゃ…う、美味い。焼いた肉がこれ程、美味だとは!


「喜んで貰えて何よりだ」


単純に焼くだけじゃなく蜂蜜のタレや焼き加減にも気を配ってるんだがそこは言わなくてもいっか。


ーーごくん。…おい。もっと寄越せ。


「はいはい」


再び焼けた肉を渡す。フカナヅチは次々と平らげた。


俺も時折、摘みながら食べる。


うん。良い出来だ。


蜂蜜の甘みと肉の油の甘みのダブルパンチが効いてる。竜の肉も臭みがなく旨い肉…ってか、普通の牛や豚より美味いかも…。


〜40分後〜


ーーげふ。


「満足したろ?」


ーーうむ。よもやこれ程、美味いとは思わなんだ。


大量にあったバラ肉はフカナヅチの腹の中に消えた。


普段から飯準備をしてるから慣れたもんさ。食欲旺盛なアルマとキューに鍛えられたお陰かな。


「腹も膨れたし片付けをして出発しよっかな」


がちゃがちゃと後片付けを始める。


ーー…悠よ。美味い馳走の礼に褒美をくれてやる。


「褒美?」


フカナヅチが雹晶崫の入り口にある結晶を砕き風を纏わせる。すると角が取れ丸みを帯びた結晶石が出来上がった。


ーー受けとれ。


手に取る。不思議な事に半透明の結晶の中には風が渦巻いていた。


ーーこれは我が魔力を封じた結晶石よ。これを空に翳せばお前のMPを消費し雨を降らせる事が可能だ。


「へぇ。凄いな」


ーー…龍が人に物を贈るのはその者を認め信頼した証だ。失くすでないぞ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

嵐飛龍の風玉

・フカナヅチの信頼の証。風玉に雨雲を呼ぶ

魔力が封じられている。持ち主のMPを消費し

雨を降らせる事が出来る。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


雨を自由に降らせる、か。農作業とか捗りそう。


「ありがとう。大事にするよ」


ーー…ふん。戻ったらまた馳走を食わせて貰おう。ではな。


翼を羽ばたかせ飛び去った。


「面白い奴だったな」


一人残された俺は道具の片付けを済ませる。


「うし。じゃあ行くか」


気合いを入れ直し雹晶崫へと進んだ。



〜1時間後 アジ・ダハーカの龍峰 雹晶崫〜



雹晶崫の中には何匹かの竜が結晶の彫刻と成り代わって転がり佇んでいた。


「…け、結晶病ってやばいじゃん…」


どれも皆、苦悶の表情を浮かべている。


そもそも意識があるまま体が結晶に変わるってどんな気分なんだろ…。


耐性があって良かったと心底、痛感する。


ただ、リスクに見合いそうな結晶石や鉄鉱石等のアイテムも採掘しゲットした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・鉱石

雹鉱石×2

龍鉱石×1

重魔鉱石×1

重竜鉱石×1

バトレット結晶石×1

龍峰の結晶石×4

アレキサンドの原石×1

ドラコモンドの原石(大)×1

龍の涙×1

朽ちた龍の死骸結晶×1

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


マップを見ると緑の矢印はまだ先。


モンスターは居ないが油断せず進もう。


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