レベルを上げよう!〜竜の巣〜②
〜2時間後 竜の巣 蝕みの丘〜
水晶の道を進み辿り着いたのは腐った卵の匂いが漂う丘だった。黄色のガスが岩肌から噴き出し自然に出来た池は酸性が強い毒水っぽい。
「硫黄か…?」
生息に適さない環境なのか周囲にモンスターの気配は感じない。
ぽこぽこと池の水に気泡が浮かぶ。
試しに小石を池に投げると音を立て溶けた。
「飲んだら一発で死にそう」
注意して先に進まなくては…ってそうだ!九墨蛇で岩や枯木を掴んで跳んで移動すれば速いかも。
「よいしょっと…」
黒蛇が岩をがっしりと掴む。
そのまま引っ張り跳躍。そのまま次の場所に黒蛇を伸ばす。また掴み…引っ張って…。
「ーーわははは!これってすっげぇ楽だ!」
ガスも酸の池も無視してすいすいと先へ進んだ。
〜50分後 竜の巣 帰らずの穴〜
危険地帯を抜け直面したのは苔が生えた絶壁と洞穴だった。周囲には竜の壁画が描かれ中から冷たい風が吹いている。
マップには大きな赤のマークが点滅していた。
「…案の定、緑の矢印はその先ね」
絶壁を伝おうにも取っ掛かりがない。
「この大きさなら白蛇も余裕で通れるな」
久しぶりに召喚してみよっか。
白蛇を交えた戦闘も練習しとかないと。
「白墨蛇」
三匹の白蛇が現れ舌先を出し俺を囲む。
指示を待ってるようだ。
「よしよし。可愛い奴らめ…って痛っ」
一匹ずつ頭を撫でる。
兇劍のスキル効果でMP消費量は減り腕の裂傷も浅くなったがそれでも尚、痛い。
「出発する前に…」
新たに採取と採掘したアイテムを見ておこう。
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・採掘アイテム
純硫黄石×2
魔石(大)×3
ヤーハ結晶石×1
黒鉄鉱石×1
純銀鉱石×1
純金鉱石×1
翡鉱石×1
ドラコナイトの原石×1
・採取アイテム
硫黄草×1
爆発花×1
輝花パーンラム
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新しいアイテム類をまた手に入れた。
錬成や鍛治が楽しみだ。
危険区域に挑戦する冒険者の気持ちが分かるな。
荷物を整理し白蛇達を見る。ふーむ…三匹って呼ぶのも不便だし名前を付けてやるか。
「えーっと……ハクな。こっちはラン。最後にお前は…シロだ!」
完全にその場の勢いで決めてしまったが三匹は低い特有の鳴き声で返事をしてくれた。
うんうん。気に入ってくれ……たんだよね?気に入ったって事にしとこう。
「さてと」
シロの頭に跨がる。
「出発だ!」
洞穴に入った。
〜竜の巣 帰らずの穴〜
洞穴内には小動物や小型モンスターも生息している。
……がハクとランが次々と一飲みに殲滅してくれるので楽々と先へ進めた。
目立った採取・採掘ポイントもない。ほぼ真っ直ぐに進み大きな赤いマークに接近していく。
暫くしてシロが歩みを止め唸りだした。
「どうした?」
シロに続きランやハクも低い唸り声を発し先を睨んでいる。
「…ちょっと待ってろよ」
待機命令を出し慎重に岩肌から先を覗く。
ーー……グルル…。
広々とした場所の真ん中に陣取る竜。
その向こうには誰が造ったのか崩れた彫刻が並び先へ続く階段が見える。
「…大牙竜か…」
サラマンドルが言っていた言葉を思い出す。
昔、図鑑で見たサーベルタイガーを彷彿させる二本の鋭く大きな剣歯としなやかな筋肉に尻尾。迷彩色の体毛が無い体躯には無数の傷があり竜と言うよりは獣に近い風貌だが…サーチしてみよう。
ーー対象を確認。ステータスを表示ーー
名前:大牙竜ガノンゼオ
種族:獣竜種Lv73
称号:猛き双牙
戦闘パラメーター
HP380000 MP2000
筋力6500 魔力800 狂気200
体力6500 敏捷4000
技術500 精神1000
耐性:雷耐性(Lv 8)水耐性(Lv 6)
戦闘技:トゥーバイツ・デッドファング・獣竜の構え
魔法:雷魔法(Lv 3)
固有スキル:猛追 竜鱗 激怒 疾駆走破
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竜の巣にある帰らずの穴を根城にする雄の大牙竜。翼は無く地上での生活や狩りに特化している。餌を求る以外で縄張りの外に出る事は少なく寝床で過ごす事が大半だが侵入者には剣歯を用いた苛烈なる攻撃を執拗に繰り出すが二本の牙を折ると一時的に動けなくなる。
気に入った場所に永住する為、龍峰へと続く道は今や帰らずの穴と呼ばれ意図せず門番の役割を果たしている。龍峰に進む冒険者の最大の難敵と言えよう。
引き返す者を臆病と罵るのは愚かだ。
それは英断と言えるのだから。
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「強いな」
筋力6500。…物理攻撃を得意とするタイプっぽい。
サラマンドルは巣を守る為に全力じゃなかったがガノンゼオは違う。…今の俺には望むべき相手だ。
幸いMPも回復してきたし召喚したシロ達もいる。
勝てない相手じゃない筈だ。
「シロは正面。ハクとランは左右から挟み撃ち…行け!」
号令に戸惑う事も無く三匹は大牙竜に向かった。
ーー…!
シロ達を視認し寝そべっていた身体を起こしガノンゼオが吠える。
ーーグルォォォ!!
シロが真正面から舌を出し首を上げ威嚇する。
左右からハクとランがガノンゼオに噛み付くが見事なステップで回避した。
ーー…グルルルッ…!
ガノンゼオは油断出来ない相手と判断したの唸って体勢を低くし疾走し攻撃する。
速い!その速度に反応し三匹も身を翻し躱す。
暫くは互角の攻防が続くがガノンゼオがランの胴体に牙を立てた。鮮血が舞い白い蛇鱗が赤く滲む。
…だがランは怯まずガノンゼオに巻き付いた。
ーー…ルォ!?
シロとハクも巻き付き絡む。まるで怪獣の大乱闘……って見惚れてる場合じゃない。
身動きが取れないガノンゼオの牙を折るチャンスだ。
「シロ!ハク!ラン!…ありがとな」
金剛鞘の大太刀を担ぎ納刀状態のままダッシュ。
三匹がガノンゼオから離れる。
「萬月之太刀」
左右の牙に戦闘技を放つ。
大剣のまま放つ重厚な円の軌跡を描く一撃は左の牙をへし折った。右は…ちっ!折れてないか。
踏み込みが浅かったようだ。
ーーグルォォォォォォォォ!!!
痛みで絶叫するガノンゼオ。
このまま決めなきゃ。
大太刀からリッタァブレイカーに切り替え顔面を連続で殴打する。
最後の一撃で爆発を起こし右の牙を折った。
ーー…グ、グル…ルッ。
魔銃を零距離射撃でお見舞いする。
「…おおおおお!」
銃音が鳴り大量の魔弾が突き抜けた。硝煙の向こうで幽鬼の如く立ち尽くし此方を睨むガノンゼオ。
ーー……ル…ォ…。
…だが反撃する力は無く地面に伏せ絶命した。
「よっしゃああああ!」
喜びの叫び声をあげた瞬間、ウィンドウが現れた。
ーーーLv1→Lv2へLevel upーーー
・戦闘数値・非戦闘数値が上昇しました。
・耐性『狂気耐性→狂気の極み』に変わりました。
・戦闘技『月花毘刃』を習得しましたーーー
・戦闘技『ブレイカー→ジャッジメント』に変わりました。
・戦闘技『S・バレット』を習得しました。
・奇跡『吸生の蛇』を習得しました。
・従魔との親密度が上がりました。
・強敵を倒し固有スキル『兇劍』の効果が発動。
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名前:黒永悠
性別:男
種族:人間
称号:穢れと供に生きる者
職業:禍の契約者 Lv2
戦闘パラメーター
HP20000 MP7500
筋力2500 魔力500 狂気4500
体力1150 敏捷1700 信仰-1500
技術1500 精神500 神秘1500
非戦闘パラメーター
錬金:85 鍛冶:90
生産:75 飼育:50
耐性:狂気の極み← 神秘耐性(Lv Max)
不老耐性 不死耐性(Lv4)聖耐性(-Lv Max)
戦闘技:獣狩りの技法・ギミックブレイク ←
奇跡:死者の贈り物・吸生の蛇←
呪術:禁呪・白墨蛇・禁呪・九墨蛇
禁法・縛烬葬 蛇憑き面
加護:アザーの加護 夜刀神の加護
従魔:祟り神のミコト(親密度48%)
固有スキル:鋼の探求心 閉心 兇劍 顕魔
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耐性
狂気の極み
①全異常状態に対し完全な抵抗を得る。また人智を超えた現象に遭遇・直視・傾聴しても正常でいられる。
戦闘技
①獣狩りの技法
・月花毘刃…獣を惨殺する連続剣技。
②ギミックブレイク
・ジャッジメント…HPを継続消費し万力を込めた必殺の一撃を放つ。
・S・バレット…HPとMPを消費し銃雨を放つ。
奇跡
①吸生の蛇
MPを消費し緑の蛇で攻撃する。成功すると敵のHPを吸収する。
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「ふむふむ」
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妖刀・金剛鞘の大太刀
・兇劍の効果発動により妖刀に進化。血を刀身に浴びると斬れ味を強化。
魔槌・屠
・兇劍の効果発動により魔槌に進化。連続で殴打する毎に威力が増し爆発がより広範囲に渡る。
剛銃・アンチレイム
・兇劍の効果発動により剛銃に進化。反動が大きくなった代償に連射速度が上昇。
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漸くレベルが上がったなぁ。
戦闘数値の上昇値が半端ないし戦闘技と奇跡も追加か。
武器に至っては名前も変わっちゃった。…侵食もとい兇劍の効果だけど今更だが不思議だ。
それにジョブチェンジしたお陰か以前より数値の上がり幅が大きくなった気がする。異常状態を完全に防げるのはかなり嬉しい。
労力に見合う成果だな。
「っとそうだ。ランは大丈夫か?」
心配するなと言うように低い鳴き声で応えた。
「傷は…うん…塞がり始めてるな。ーーーよし!頑張ってくれたご褒美だ」
猛角牛の薫製肉を三匹へ渡す。
嬉しそうに食べ始めた。瞬く間に食い尽くした三匹の召喚を解きガノンゼオの死骸と素材を回収する。
「…ちょっと早いが今日は此処で野宿にしようか。龍峰に行く前に装備の手入れもしたいしな」
マップで確認しても周囲にモンスターは居ない。
幸いにも綺麗な湧き水が流れてるしキャンプにはもってこいだ。
「腹も減ったなぁ」
俺は腰袋から調理器具とキャンプ用具を取り出し野宿の準備を始めた。




