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ラウラとルウラ。③



〜第11位等級居室 リビング〜


「ゆっくりしてくれ。飲み物を出そう」


「悪いな」


大きな自画像や変なオブジェも飾られてるけどエリザベートの居室は綺麗に整頓されていた。予想を裏切る女性らしい部屋だ…。甘く良い匂いが漂ってる。


「…何気に女性の部屋に入るのって初めてだな」


一緒に住んでるアイヴィーはカウント外だ。


ちょっと緊張しないでもない。


「ほら。飲み給へ」


どぶろくに似た酒瓶とグラスがテーブルに置かれる。


「……酒じゃん」


アルコール臭がぷんぷんじゃねーか。


「くくっ。ラウラから聞いたぞ?滅法、酒に強いらしいじゃあないか。…これは『火竜酒・絶舌』。竜人族が好む酒だ。度数はきついが旨い酒よ」


「えぇ…」


「…なんだ。ラウラとは呑めて吾とは飲み交そせんと?…薄情な奴め。訪ねてきて家主の厚意を踏み躙るのか。そうか」


翼と尻尾が不満げに揺れている。


「…わかったって。飲むよ」


「くくく。そうこなくてはな!」


エリザベートって意外と寂しがり屋っぽい。


「では……そうだな。吾等の出逢いに祝して乾杯」


「乾杯」


グラスを合わせる。


ぐいっと一息に飲む……が酒の味はしない。しかし、強力な炭酸水を飲んだ様に喉が熱くなる。


「ふぅ」


「良い呑みっぷりだ」


「…そういえば年齢的にエリザベートは酒を飲んで大丈夫なのか?14歳だよな」


「竜人族はヒュームや他の亜人とは成長の速度が違うと話しただろう。13歳から酒を飲んでるが法律に違反はしてない。…うむ、旨い」


グラスを呷るエリザベート。


「あー。言ってたっけ」


「…して吾を訪ねて来た理由があるのだろう?酒の肴に話してくれ」


「ああ。実はなーー」


〜5分後〜


ここまで来た経緯とラウラとルウラを仲直りさせたい事を説明した。


「……ほぅ。あの二人を和解させたいのか」


「うん。三人が組めば『金翼の若獅子』での影響力や発言力は今より増す。二人の目標……腐敗の払拭や体制改善に大きく前進すると思ってさ」


「くく。確かに三人も組めば上位陣の中でも優位に立てる。あの二人が素直に和解するとは思えんがね」


「…そんな雰囲気だったな」


「例えるなら月と太陽。水と油。光と闇……正反対な性格だからな。ラウラは几帳面で謹厳実直。規律を重視するが反対にルウラは大雑把で自由奔放。好奇心や刺激を重視する。身内な分、余計に互いの嫌な部分が見えるのだろうよ」


「……」


「それにルウラの父と兄も知ってるが二人もラウラよりルウラと良く似た性格だ。寧ろ家族の中ではラウラの方が浮いていたやもしれん」


「お母さんは?」


「ラウラとルウラが子供の頃に他界してると聞いてる。詳細は知らんがな」


「…そっか」


「…悠は何故そうまでして首を突っ込むのだ?面倒事は嫌いなのだろう」


「んー…面倒事は嫌いだが放って置けなくてな。お節介だって自分でも思うけど…家族が仲違いしたままじゃ悲しいだろ?」


「くくっ……ならば頑張り給へ。吾は貴公のお節介を応援してるぞ。…しかし家族か。貴公の家族は?」


「俺が小さい頃に事故で亡くなったよ。一人っ子だったし他に身寄りもいない」


「ふむ、そうか。これは悠のご両親に…献杯だ」


一気に飲み干しグラスを空にする。


「エリザベートの家族は近くに居るのか?」


「吾の家族はベルカから遠く離れた『鯉の里』と呼ばれる竜人族が暮らす集落にいる。…暫く里帰りはしてないが元気にしてるだろうよ」


「ちゃんと顔は見せた方が良いぞ」


「くくく。そうだな」


「…さて、と。それじゃそろそろ」


「まだ飲み始めたばかりだぞ。もっと付き合いたまへ。ルウラも逃げはしない。…ほら」


問答無用でグラスに酒が注がれる。


簡単には行かせてくれなさそうだ。


「…飲み過ぎは体に悪いぞエリザベート」


「竜人族は酒に強い。これしきで酔わん。…さぁ、もっと貴公の話を聞かせてくれ。特に代理決闘で見せた力の真実を話してくれて構わんぞ?」


あんたもかい。


「また別の機会にな」


エリザベートと酒を飲みながら会話を楽しむ。



〜2時間後〜



「おい…おい。大丈夫か?」


「くく…くっ。ゆー…しゃけつよいにゃ…いか」


テーブルに散乱する酒瓶。


結局、ずるずると付き合ってしまった。


エリザベートは酔い潰れてしまう。火照った顔に蕩けた瞳。服が乱れて白肌が露わになる。


胸元のボタンも外してるから谷間が…。


「…もー…もーいっひゃい…」


「駄目だ。ベッドまで歩けるか?」


「くっく…ゆー…われをベッドに連れ…れってにゃにをしゅるつもり…だね…」


体をくねらせ俺を挑発するエリザベート。


この酔っ払いめ。悪酔いし過ぎだ。


「寝てもらうんだよ。ほら」


腕を持つが…。


「や。…あるけにゃい」


振り払われる。あー…もう。仕方ない。


「ちょっとごめんな。よいしょっと…」


「ひゃ!」


左手を肩に回し両足の太ももに右手を回す。


所謂、お姫様抱っこだ。


翼が痛まない様に優しく抱えないと…。


「寝室はどっちだ?」


「あ、あっち。ゆー…おもくにゃいにょか…?」


「華奢だし軽いもんさ。…これからは酒も程々にな。美人なんだし男の前で簡単に酔っ払ったら襲われるぞ」


「……」


真っ赤な頰が更に赤くなる。


エリザベートはぼんやりと黙って俺を見上げていた。


普段の姿からは想像出来ない表情だ。


〜数分後 寝室〜


豪華なベッドに寝せ着衣の乱れを直し布団を掛けた。


「……」


「ーーふぅ。じゃあ俺は行くぞ。起きたら水飲めよ」


「ゆー」


「なんだ?」


「……ゆー。きこうは…」


「うん」


「……」


言葉は続かずそのまま目を閉じ寝てしまった。


可愛い寝息が聞こえてくる。


起こさない様、静かに部屋を出た。


…やれやれ。もうこんな時間か。


夕飯の準備もあるし明日、出直そう。


「今日の夕飯は…余ってる猛角牛の肉丼でいっか」


一人呟きながら帰路についた。



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