禁域シャングラ②
〜5分後 クリファの神樹〜
「おぉー…」
案内された場所には巨大な樹があった。
樹齢何百年…いや何千年…。どれ程の月日が経てばこれだけ育つのだろう。儚げな光を放っている。
余りに神々しくて溜息が口から漏れた。
「この樹は『クリファの神樹』と呼ばれるこの世で最も価値がある存在の一つです。そして…これがクリファの祠」
根元には小さな妻屋根を備えた祠があるが半壊し崩れている。
「…此処は『禁域シャングラ』。遥か悠久の時代…厄災を招く深淵の獣が現れ一人の女神が戦い勝利を収め封印された地でもあります」
「……」
鋼の探求心でサーチした内容と被る。
「祠は女神を封印した迷宮への入り口。悠さんはこの場所で倒れてました」
「……」
「禁域ジャングラは人を寄せ付けぬ呪われた土地でもある。…封印された女神の影響なのか…悍ましい穢れに侵された『魔物』が跋扈していました。…しかし、突如として神樹は光を取り戻し魔物は穢れを失ってこの三日間でみるみる内に土地は豊かになりました」
「私とミドやケーロンは五十年前にこの地に腰を据え神樹と祠を見守っていたのです」
「五十年前…失礼ですけどモーガンさんってお幾つですか?」
「私は今年で364歳になりますよ」
「364歳!?」
「悠さんはこの世界の人間ではないのでご存知なかったですね。『亜人』は種族によっては人間より遥かに長命なのです。…その中でも私はちょっと特別ですが」
スーパーお婆ちゃんだな。モーガンさんは。
「話の続きですが貴方が授けられた才能…暴蝕は世界の理や概念を変える事象系統に由来する幻のスキルの一つだと思います」
「…事象系統?」
「パルキゲニアでは才能はスキルという意味も含まれる。この世界を生きる命の数に比例し無限に等しい才能が存在するわ。認識・秩序・規則を捻じ曲げるスキルを事象系統に分類されますが……歴史上このスキルを持つ者は伝承に名を残す者のみでした」
とんでもないもんを授けられたんだな。
「悠さんは女神の封印を暴蝕のスキルの効果により自身との契約に置き換えたのでしょう」
「強制的に支配下に置き契約させるってありましたね…」
「…一つ謝らなければなりません。実は食事中に貴方のステータスを閲覧し確認しました」
「別に謝ることじゃないですよ」
「違うの。これも知らなくて当然ですが同意もなく他者のステータスを覗く行為はこの世界では裸を盗み見るに等しい。…それ故、他者のステータスを閲覧できるスキルを持つ者は警戒される」
「マジですか」
「ええ。ただ閲覧系スキル保持者は少なく防ぐ手段も数多くあります。戦闘従事者は必ず自身のステータスを隠しますね。一度、ご自身でも確認してみて下さい」
えっと…。
―――――――
ステータス New ←
装備
所持アイテム
――――――ー
「ステータスの項目にNew…?」
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名前:黒永悠
性別:男
種族:人間
称号:穢れを背負う者 New←
職業:契約者 Lv1 New←
戦闘パラメーター
HP4500 MP1500
筋力600 魔力95 狂気1800
体力244 敏捷480信仰-500
技術360 精神90 神秘670
非戦闘パラメーター
錬金:20 鍛冶:30
生産:15 飼育:18
耐性:狂気耐性(Lv Max)神秘耐性(Lv Max)←
不老耐性 不死耐性(Lv3)聖耐性(-Lv Max)
戦闘技:獣狩りの技法←
魔法:闇魔法(Lv2)←
奇跡:死者の贈り物←
呪術:黒蛇纏い・這い寄る白蛇・呪炎←
加護:アザーの加護 夜刀神の加護 ←
従魔:祟り神(親密度15%)←
固有スキル:鋼の探求心 浸食 冒涜者 ←
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称号
『穢れを背負う者』
①深淵を生きる者に与えられる称号。
職業
契約者
①人ならざる者と契約した者の職業。
②派生先→???(必要Lv5)
耐性
狂気耐性(Lv Max)
①狂気に対し耐性を得て異常状態に極めて強く理外の事象に発狂しなくなる。
神秘耐性(Lv Max)
①神秘に対し耐性を得る。五大属性の魔法・奇跡・呪術の威力を緩和する。
不老耐性
①加齢に伴う能力低下を防ぎ外見の変化を遅らせる。
不死耐性(Lv3)
①傷や病気の治りが早くなる。
聖耐性(-Lv Max)
聖属性の攻撃に対し極めて脆弱になり聖属性の装備品は装備不可。
戦闘技
①獣狩りの技法
深淵の獣を斬り殺し封印された女神の技法。
・三日月斬り…獣を祓う袈裟斬りを放つ技。
・孤月…周囲の獣を斬り裂く技。
・一刀・閃…離れた獣に斬撃を飛ばす技。
魔法
①闇魔法(Lv2)
MPを消費し闇属性の魔法を扱う。
・フィアー…敵を恐怖で錯乱させる。自身より弱い相手に効果が高い。
・ダーク…闇属性の球を相手に飛ばす。威力は術者の魔力に左右される。
・グラビティ…術者の周囲の重力の圧を重くする。使用中はMPを消費し続ける。圧力は術者の魔力に左右される。
奇跡
①死者の贈り物
MPを消費し死者の残留思念を拝聴できる。
呪術
①黒蛇纏い
契約した祟り神の力。自身の右腕から無数の黒蛇を操る。
②這い寄る白蛇
契約した祟り神の力。血とMPを代償に白蛇を召喚し敵を攻撃する。
③呪炎
契約した祟り神の力。MPを消費し敵及び敵対者の罪悪感により威力が左右される炎を放つ。
加護
『夜刀神の加護』
①穢れた名を奪われた女神の加護。Lvupに必要な経験値が増加し上昇した際にパラメーターの変動数値が大幅に向上。戦闘時に於ける恐怖心や抵抗感を失くす。
②あらゆる武器の扱い方を瞬時に理解する。
従魔
『祟り神』
①黒永悠が契約した禍の夜刀神。真名を知らない為、召喚は不可能。契約者の意思に反し意思表示を示す事がある。
②現在の親密度では契約者側からの対話は不可。
固有スキル
『浸食』
①戦闘系の希少スキル。武器を使用し敵を攻撃すると耐久度が回復し強敵を倒すと武器の性能が向上する。
『冒涜者』
①神々と敵対する者が持つ概念系の特別なスキル。神々を含め凡ゆる生命体にダメージを与える事が可能。
②対象にダメージを与える程、自身のHPやMPが回復する(戦闘時のみ)。
③全ての属性の補助魔法の付与を受付けない。また聖属性の回復魔法はダメージに変わる。
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「ふぁっ!?」
「驚くのも無理ありません。私も長く生きてますが神を従魔にした者を初めて見ました」
「……最初、見た時と全然ちがう」
「Lv1でその戦闘数値…闇系統の魔法や戦闘に特化したスキル…。特に呪術も扱えるという点でかなり特殊で…ある種、危険でもあるわ」
暴蝕のスキルはLv差があるほど還元値は低いって書いてた。
測定不能の相手に使ってこの数値の上昇はビックリする。
あの祟り神はマジでヤバいみたいだ。そんなのを従えたって…狂気とか既に四桁じゃねーか!?
「ーーさて。ここで私から提案があります」
「…提案?」
「パルキゲニアで生きるために最低限の常識やルールを…そして力の運用の仕方と戦闘方法を勉強してみませんか?」
「逆に土下座してお願いしたいです」
今の俺は赤ん坊と同じで何も分からない。この先、戦闘…つまり闘いが必要になるなら心構えを学ぶべきだろう。
「畏まる必要はありません。これは御礼でもあります」
「なんかしましたっけ?」
「…見てください。この神樹を。この地を。命に溢れ穢れを無くしあるべき姿に戻ったのです。女神が封印されていた時は…神樹は枯れ…地は黒く濁り動物は恐ろしい魔物に成り代わり…正しく地獄の如き場所でした。それが古の時代より続いていた」
壮大な話だ。
「私はそれを変えたかった……。力及ばず叶わない夢でしたが夫の願いでもありましたから」
「…失礼ですが旦那さんは?」
「昔に私を残して逝ってしまいました」
悲哀に満ちた横顔だった。
「………」
「それを悠さんが変えてくれました。私には報いる義務があるのです」
全くの偶然で感謝されるのも変な感じだが悪い気分じゃない。
「お言葉に甘えお世話になります。よろしくお願いしますモーガンさん」
頭をしっかり下げる。
「はい。こちらこそ」
優しく笑う。…この人若い時はモテたんだろうなぁ。
「ふふふ……。悠さんが悪人ならば貴方を無力化し封印術を施すつもりでしたが…そうならずに済んで良かったです」
「ん?」
不穏なワードが聞こえた気がする。
「歳を取り力は年々、衰えていますが今の悠さんならば問題なく対処が出来るわ」
「……モーガンさんって強いんですか?」
「ふふ…私のステータスをご覧になってみては?」
ー対象を確認。ステータスを表示ーー
名前:モーガン・ル・フェイ
種族:ハイエルフ
称号:翠の魔女
職業:偉大なる魔法使い Lv168
戦闘パラメーター
HP85000 MP340000
筋力50 魔力75680 狂気6500
体力50 敏捷580 信仰1500
技術35500 精神86940 神秘40000
耐性:五大属性耐性(Lv Max)聖耐性(Lv Max)
闇耐性(Lv Max)
戦闘技:魔女の秘術・魔眼・外法
魔法:五大魔法(Lv Max)時魔法(Lv Max)
奇跡:四神結界・天使の息吹
呪術:逆齢の禁
固有スキル:制限により閲覧不可。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・制限により閲覧不可。
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「っ!?」
…え、なにこの数値。桁がやばすぎだろ。
耐性と魔法はレベルマックス…?
「今日はもう休んで下さい。明日から覚える事が沢山あって大変ですが頑張りましょう」
「は、はい!!」
絶対に怒らせないようにしよう。
モーガンさんの後ろ姿を見ながら俺は固く誓った。