プレゼントを贈ろう!①
〜5日後 夜20時 マイハウス 地下工房〜
「や、やり遂げた!……で、できたぞぉ!!」
冒険者ギルドで依頼をこなしつつ巌窟亭の依頼品と贈り物の創作品が完成した。
「何回かやり直したが間に合って良かったなぁ…」
夜遅くまで鍛治をして…書斎の武器図鑑や貴金属の本を読んでは参考にしてみたり…昨日は執務室に遊びに行ってうっかり寝ちゃってラウラに迷惑かけたけど。
錬成品も整理して確認しとくか。
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・特製ポーション×10…回復量は低いが異常状態や病を治すポーション。
・マジックドリンク×6…MPが回復する飲料水。
・ハイマジックドリンク×2…MPが大きく回復する飲料水。
・魔物避けのお香×3…焚いている間は魔物が近寄らない。
・魔物寄せのお香×2…焚いている間は魔物を引き寄せる。
・鉛色の変化液×1…液体をかけた無機物を鉛に変える。
・発光する変化液×1…液体をかけた無機物を発光させる。
・緑色の丸い種×1…緑色の丸い種。
・赤色のギザギザの種×1…赤色のギザギザした種。
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モンスターの死骸と素材も大した量じゃなかったから…まぁこんなもんだな。
依頼品の片手剣は良い感じだ。
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強堅のロングソード+1
・玉鋼と鋼石で鍛えた片手剣。堅い剣身は攻撃時に高い威力を発揮する。ある程度の技量と筋力が無ければ扱えない。装飾はされてない実用性に長けた武器。
必要戦闘パラメータ
筋力60 技術60
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「…確認も済んだ。早速、プレゼントしてみよう」
先ずはアルマからだ。
〜数分後 寝室〜
「アルマいるかー?」
ベッドの上で丸くなっていたアルマが起きて伸びをする。
ーーー…ふぁーあ…にゃによ?…気持ちよく寝てたのに…。
「…あのな。食ってすぐ寝ると太るぞ」
ーーー余計なお世話よ。…夜食でも用意してくれたの〜。
一時間前に食ったばっかりだろ。
…ブラックホールみたいな胃袋だな。
「違う。アルマにプレゼントさ。貰ってくれるか?」
ーーー…プレゼントって…。
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メロディチョーカー
・魔鉱石と銀鉱石で作った鈴と質の良い牛革を使用して製作したチョーカー。鈴の音色は装備者の魔力に
呼応して美しい旋律を奏でる。黒永悠がアルマへの感謝の気持ちを込めて製作した特別な贈り物。
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ーーー………。
チョーカーを黙って凝視している。
ーーー…最近、夜遅くまで起きてたのはこれのため?
「まあな。実は日頃から世話になってる皆にプレゼントでも贈ろうと思ってさ」
ーーー…一から作って……大変だったでしょーに。
「大変じゃないって言いたいが……苦労したかな。その分、出来映えは良いと思ってる。それに…」
アルマの頭を撫でる。
「アルマの喜ぶ顔が見たかったからな」
ーーー……あ…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ーーなによ。この黒いリボン。
『私が裁断して作ったリボンだよ。アルマに似合うと思ってね。……ほら結んであげる』
ーー…わたしに…なんで…。
『アルマの喜ぶ顔が見たいからさ』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ーーー……つけてみてよ。自分じゃ出来ないし。
「おう。……よし!付けたぞ。…うんうん。やっぱり良く似合ってるじゃん」
鈴が小さく鳴った。
耳に優しく残る美しい音色。
ーーー……ありがとね悠。これ気に入ったわ。
「良かったぁー!…気に入って貰えるかちょっとだけ不安だったんだ。これからも宜しくなアルマ」
ーーー…わ、わたしも…あん…に出会えて…よかっ…。…すご…幸……よ…。
…途切れ途切れの小声でよく聴こえない。
「聴こえないぞ」
ーーー………なんでもないわよ!…ふん!魔王アルマ様に仕える下僕としてよーやく自覚が……にゃーにゃにゃにゃ…はっ!?顎を撫でるのは反則よ!
「このやり取りも久々だなぁ」
アルマはプレゼントを喜んでくれた。
次はアイヴィーとキューだな。
〜数分後 書斎〜
「……」
やっぱり、ここだったか。
真剣な眼差しで読書をしているアイヴィーと机の上で尻尾を左右に振り暇そうなキュー。
「ちょっといいか?」
「ん…どうしたの」
ちらっと本から目を離し俺を見る。
「…実はプレゼントがあるんだ」
「プレゼント?」
「ほら」
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ショーヴ・スリ・バレッタ
・玉鋼と魔鉱石を細工し黒く色染させデフォルメ
した蝙蝠の形を象り製作した髪留め。装備者の魔
力に呼応し魔法の威力を高める。黒永悠がアイヴ
ィーへ日頃の感謝の気持ちを込めて製作した特
別な贈り物。
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「…わぁ…!」
「…気に入ってくれたか?」
「うん!…ありがとう悠」
ぱぁっと目を輝かせゴムを外しヘアバレッタを装着した。
「似合う?」
ゴムからバレッタに変えただけなのに印象が変わる。
貴族の令嬢……いや、お姫様だな。
「凄く良く似合ってるよ。まるでお姫様みたいだ」
「お姫様…なら悠はアイヴィーの王子様…?」
「王子って歳でもないけどな」
呆れ顔のアイヴィーが溜息を吐き答えた。
「…そこは王子様って答えたほうが女の子は喜ぶ」
えぇ…?
ーーきゅう…。
キューがこちらをジッと見ている。
「ちゃんとキューにも用意してるぞ」
ーーきゅきゅう!
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真紅のリボン
・質の良い布を裁断し魔鉱石でピンブローチを
あしらったリボン。装備者の魔力に呼応しHPを
上昇させる。黒永悠がキューへの日頃の感謝の
気持ちを込めて製作した特別な贈り物。
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「尻尾に結んでっと…ほらアルマとお揃いだ!」
ーーきゅ…きゅっきゅー!!
キューが俺の顔をぺろぺろ舐める。
「ははは。キューも気に入ってくれたんだな」
頑張った甲斐があったなぁ。喜んで貰えて大満足だ。
〜翌朝 第15区画 ボッツの家〜
ボッツの家に来た。
呼鈴を鳴らすとメアリーが扉を開ける。
「はーい…ってユウさんじゃん!」
「朝早くに悪いな。ボッツとラッシュは?」
「大丈夫だよ。今、呼ぶねー…ボッツ!ラッシュ!」
〜数分後〜
「おはようございます」
「ふぁー…うっす…」
「おはよう」
「んー…」
飛び跳ねた寝癖と寝惚けた表情。ラッシュはたった今、起きたばかりのようだ。
「シャキッとしなさいよね!……っとに恥ずかしい」
「立ち話もなんですから中にどうぞ」
「いや、大丈夫だ。三人にこれを渡すだけだから玄関先で構わないよ」
「…これは……」
腰袋から製作した武器を取り出し三人へ渡す。互いにプレゼントを受け取り驚嘆としていた。
「…うぉぉ!一気に目が覚めたぜ」
「わぁぁ…」
「おぉ」
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リオンの守護盾とリオンメイス
・黒永悠が鍛えた武器。大盾は頑強な性能を誇り獅子の装飾が施されている。また、獅子を模したメイスによる重打の一撃は粉砕に長けた逸品。
・黒永悠がボッツへ日頃の感謝の気持ちを込めて製作した特別な贈り物。
必要戦闘パラメータ
筋力80
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リオンの大剣
・黒永悠が鍛えた武器。片刃のバスタードソードで銀鼠の剣身には吠える獅子が彫られている。重量はあるがそれに見合う破壊力を秘めた逸品。
・黒永悠がラッシュへ日頃の感謝の気持ちを込めて製作した特別な贈り物。
必要戦闘パラメータ
筋力90 技術40
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エールアローと銀の矢(30本)
・黒永悠が鍛えた武器。扱い易さを重視した短弓。翼を模した形状をしている。放たれた矢は美しい放物線を描く逸品。銀の矢は回収すれば再利用できる。
必要戦闘パラメータ
筋力30 技術30
リオンウォンド
・黒永悠が鍛えた武器。金鉱石と魔鉱石を多量に用いた短い魔導杖。先端に獅子のレリーフがあり魔法のMP消費を極微小に抑える効果がある逸品。
必要戦闘パラメータ
MP600 魔力60 精神40
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図鑑や文献を参考に製作した今回のボッツ達へのプレゼントの武器だ。…装飾にもこだわった自信作。
「…どうだ?俺が鍛治で鍛えた武器でな。気に入ってくれると嬉しいが…」
「気に入るも何も…見事な武器だ。…うん。手にも良く馴染む」
「やべぇ!!ちょーかっけぇ!うひゃー!!」
「…ユウさん。ダメだよ……。お金も払わないでこんな武器を貰えないってば」
「気にするな。今日から遠征依頼に行くんだろ?ボッツが武器も新調したいって言ってたじゃないか。俺も鍛治の良い練習になったからさ」
「でも…」
メアリーの頭に優しく手を置く。
「遠慮すんなって。…俺がプレゼントしたいだけさ。受け取ってくれ」
「…ぁ……うん……ありがとぅ」
頰か朱くなり耳がぺたんとなった。
「ひゃー!!ヤッベェ!?テンションが上がる〜」
ラッシュはご機嫌でさっきから一人で騒いでいる。
「ありがとうございます。必ずこの御礼は」
深々と頭を下げるボッツ。
「いいっていいって。遠征依頼で怪我しないようにな」
「はい。…ラッシュ。お前もちゃんと礼を言え」
「ん?…あ、マジでサンキューな。大事に使うよ!」
「ははは。喜んで貰えて嬉しいよ。…じゃあまたな」
金翼の若獅子に向かった。




