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仕事をしてお金を稼ごう!⑤


〜 一階 受付カウンター 〜


「おはようございます」


「おはよう」


「悠さん。早速、ラウラ様よりソロオーダーを承っていますがどうされますか?」


「依頼内容を見せてくれ」


「はい。こちらになります」


どれどれ…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

クエストランク:ー

ソロオーダー名:実力の証明

依頼者:ラウラ・レオンハート

報酬金:要相談

内容:詳細は依頼者へ要確認。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


…実力の証明ってなんだろう。


「これは…?」


「…申し訳ありません。詳細は私にも伏せられているんです。ラウラ様は八階で執務をされてます。受注される場合は直通の昇降機の使用許可が下りてますが」


「Gランクの依頼は?」


「Gランク依頼は現在、ありませんね」


…ふむ。受注して話を聞いてみよう。


「わかった。このソロオーダーを受けるよ」


「畏まりました。悠さんなら大丈夫だと信じていますが……ソロオーダーは依頼難度が高い依頼になると思います。注意して下さい」


「ああ。了解だ。…っとちょっと動かないでくれ」


「?」


フィオーネの首を凝視する。ネックレスも長さによってタイプが違う。40㎝〜45㎝のプリンセスタイプが一般的って昔、雑誌で読んだことがある。


綺麗な首筋だな。これに映えるネックレス…。


シンプルなデザインが良い気がする。


「ゆ、悠さん?…そ、その…急にそんな見詰められると…私、ちょっと恥ずかしいかも。…い、いや!嬉しいんですが…」


「ん、悪い、もう大丈夫だ」


「…え、ああ…そうですか」


何故か少し残念そうな顔のフィオーネ。


「じゃあ、昇降機の場所を教えてくれ」


「はい。昇降機はこちらです」


応接室を過ぎて奥にある昇降機を使用し八階へ移動した。



〜金翼の若獅子 八階 GMギルドマスター執務室〜


「こんにちわー…」


昇降機で直に部屋に着いた。


「やぁ。散らかってますが気にせずソファーに座ってください」


机の上に山積みにされた書類の山ががラウラの多忙さを物語っている。…この間の応接室も随分と立派だったが…なんだここ。王族の一室みたいな部屋だな。絢爛豪華としか例えようがない。


黒塗の超高級感が半端ないソファーに座る。


ふわっふわだ。ここで寝れるぞ。


「紅茶は?」


「いや、いい。ソロオーダーの件で来たんだ。忙しそうだし依頼内容を教えてくれるか?」


「お気遣い感謝します。でも折角ですからどうぞ。一人で書類処理をしていると息が詰まって」


湯気が立つティーカップが置かれる。


「大変そうだな。秘書はいないのか?」


「いますが他の業務で手一杯ですので」


優雅に紅茶を飲むラウラ。


「無理するなよ」


「…ふふ。それより彼女との生活はどうですか?」


「賑やかで楽しいぞ。父親にとって娘は特別ってよく言うのが……今ならよーく理解できる」


「羨ましいです」


憂いを帯びた表情。…これまた事情がありそうだな。


「悩みがあるなら聞くぞ」


「ありがとう。ですがそれはまたの機会に。…本題に入りましょうか。個人指定依頼ソロオーダーの依頼内容についてです」


「聞かせてくれ」


「…発端は先日、定例報告会の議題で貴方について言及されたからです」


…もっと優先すべき議題があるだろうに。


「…『経歴不明のFランクの無所属登録者フリーメンバーがAAランクの昇格依頼に同行したのは事実か?下位ランクのメンバーを監督・指導の目的で高位ランクのメンバーが同行する事は冒険者ギルド法の危機防衛面の項目で明記されている。しかし逆はない。今一度、AAランクの昇格依頼に相応しかったのか審査を行うべきだ。実力に見合わぬ者なら今回のアイヴィー・デュクセンヘイグのAAランク昇格は取消を検討するべきであろう』…とランカーの一人から提言されました」


「誰だよそいつ」


イラッときた。


「…提言したのは『金翼の若獅子』のランカー序列第9位…『貪慾王ベキーアデ』と呼ばれ名前はユーリニス・ド・イスカオリテ。『金翼の若獅子』の抱える腐敗を一掃する為には避けては通れない僕とエリザベートの敵です」


敵と断言するとは穏やかじゃないな。


「…最もらしく言ってるけど法に明記されてないなら違反でも何でもない。グレーゾーンだろう」


「ごもっとも。…これは建前で恐らく目的は今回の同行を最終的に許可した僕への責任追及でしょう。ギルドの運営能力を指摘して副GMの地位から失脚させたい筈ですからね。彼は」


「…俺が実力を証明しないとラウラもアイヴィーも窮地に立つって事か?」


「ふふ、窮地に立つまでは言い過ぎですよ。これだけで失脚させられる程、甘くはありません。綻びを突きたいだけだと思います」


文句をつけられるのは良い気分じゃない。


「アイヴィーの昇格依頼にケチをつけた時点で俺にとっても敵同然だ。審査だっけ…?受けて立つよ」


「…審査は現ランカーとの実戦試験。彼は自分の配下のランカーとの戦闘を審査条件にしてる。悠さんにとっては不利ですが」


「構わないよ。ラウラだって俺に依頼を出したのは勝ち目があるって踏んだんだろ」


「はい。…ただ、これで悠さんは勝利してもユーリニスと敵対する羽目になる。宜しいのですか?」


「同居人が関係してる話だ。放っとけない」


「…分かりました。ユーリニスにも伝えます。二時間後に演習場へお願いします」


「了解。…あー…それとラウラに頼みがある」


「何ですか?」


「敬語をやめてくれ。あと悠でいい」


ボッツと違ってラウラの敬語は堅い感じがするんだよなぁ。…こう、もっとフレンドリー感が欲しい。


「ですが…」


「……その、なんだ。俺は友達が少ない。ラウラは数少ない男の知り合いなんだ。友達に敬語は使わないだろう?フレンドリーにいこうぜ」


「男…友達……ふふふふ」


愉快そうに笑う。可笑しいこと言ったか?


「急に笑ってごめんね…悠。…これでどうかな」


微笑むラウラ。


「お、おう」


…綺麗だな……って…いやいやいや!何考えてんだよ俺!!相手は男だぞ!?


「…あー…二時間後に演習場だな。俺はそれまで時間潰すよ。また後で」


「ああ。また後でね」


執務室を退室し昇降機で下に降りた。



〜2時間後 金翼の若獅子 演習場〜



約束の時間となり演習場でラウラと待機する。


「結構、人がいるな」


「ランカーが数人と他の冒険者ギルドのGMで今日の審査に立ち合いたいと『勇猛会』と『リリムキッス』のマスターが来てる。後は救護担当の職員だよ」


…本当だ。昨日、名刺を貰ったガンジさんとソーフィさんがいる。俺の視線に気付いたのかソーフィさんが手を振ってきた。


ガンジさんは厳つい顔で俺を見てる。…怖ぇ…。


「しかし遅いな…一体何を……!」


ラウラの表情が険しくなった。視線を追うと四人の男女を引き連れ現れた男を睨んでいる。


「待たせたな」


「…ユーリニス…」


鋭く細い双眸は冷徹さを感じさせる。


オールバックに撫で付けられた濃紺の髪に皺一つない奢侈なスーツに似た服装。


小さな一本の角を額に生やすエリート敏腕弁護士風の男だった。


「…審査の条件はランカーとの実戦試験のはず。背後の三人は何のつもりで連れて来た?」


「私はランカーとの実戦試験とだけ言ったのだ。一対一とは言っていないぞ」


「…戯言を。ランカーのPTに対し彼は一人だぞ。フェアな条件じゃない。審査基準は一対一、だ。三人には外れて貰う」


「審査基準は勝利ではない。善戦すれば基準は満たす。多勢が相手でも問題なかろう。…それにAAランクの昇格依頼に同行した者ならばこの程度の状況にも対応可能な筈だ。それとも……彼の実力はやはり相応しくなかったかな」


「詭弁を垂れようと安い挑発に乗ると思うか?」


火花を散らすラウラとユーリニス。


…仲が悪いって言葉だけでは済まない。深い怨恨を感じるが……これじゃ埒が明かない。


「いいぞ。4対1で」


「ほう」


「悠…!何を言って」


「ちょっといいか」


ラウラと離れた位置で話す。


「仮に一対一で闘って勝ってもあいつの言動を聞く限り難癖つけて有耶無耶にすると思う。…なら4対1で構わない。相手の条件を飲んだ上で勝てば流石に何も言えないさ」


「…他の三人もAとB〜BBBの高位ランクのメンバーだ。ヒーリングポットのマギアイテムはあるが治せる怪我にも限度がある。骨折程度では済まないかも知れないよ」


骨折程度……。骨折って重傷だよね?


ユーリニスの背後にいる四人を一瞥する。


…うん。ナーダ洞窟の支配者ボスの幻のジュエよりは遥かに弱そうだし大丈夫だと思う。


「心配するな。絶対に勝つから」


「……でも……」


懸念するラウラの肩に手を置き真っ直ぐに見詰める。


「俺を信じろ」


強く頷いて笑う。


「…あ…」


目を瞑り肩に置いた俺の手を握る。


「……分かった。君を信じるよ」



〜5分後〜



中央で対峙する。


「ーーではこれより審査試験の説明をする。審査内容は実戦試験方式で行う。審査官は僕と…ユーリニス・ド・イスカオリテ。ルールは…


①立会人が戦闘不能と判断。又、ギブアップの宣言をした場合のみ戦闘終了。


……それ以外の禁止事項はない。限りなく実戦に近い状態で審査を執り行う。質問は?」


「ない」


「俺たちもないぜ。…一つ確認しとくが実戦試験なんだ。不慮の事故でそいつが死んでも罪にはならねぇよな?ユーリニス様よぉ」


筋肉隆々でゴリラに良く似た亜人の男が薄ら笑いを浮かべる。


「ならない」


「…ああ。だが不測な事態には()()()()()()。仮に不正があれば審査を中断し……然るべき処置を取らせて貰う」


俺は加護で何も感じないが確信した。


序列第7位のラウラは……間違いなく俺より強い。


殺気…闘気…気合い…威圧感…?上手く説明出来ないが発せられる圧力が強さを物語っていた。


「『灰獅子』。…私の部下を脅さないで貰えるか?審査する側が畏縮させるのはそれこそ不正だろう」


「…ふん」


上位陣の実力は拮抗してるってエリザベートは言ってたが…なるほど。


部下の質や数が大事になるって話も納得だ。


抜きん出るには良い駒が必要になるもんな。


「……テメェの噂は聞いてるぜ。澄ました顔しやがって…。俺は『金欲の若獅子』所属でランカー序列第98位『豪腕』のバルバリン様だ」


「…黒永悠だ」


「…アイヴィーの保護者らしいじゃねぇか?幼女が趣味なんてよぉ…さっきもへんな生き物連れて二階にいたぜ。バケモンのクセに可愛い顔してやがったんだなあの餓鬼。…心配すんなや。テメェが事故で死んでも…俺が玩具にして飼ってやっからよぉ!ギャハハハハ!」


バルバリンが嘲笑し他の三人も一緒に笑う。


わかってる。これは挑発。安い挑発だ。


わざわざ反応してやる事もない。俺は大人だからな。


………。


「私語は慎め。審査を始めるぞ……悠も気にしないで」


ラウラがこちらを見る。


黙って頷いた。


「それでは……両者、離れよ」


お互いに距離を取る。


「只今からAAランク昇格依頼PT同行の資格があるか否か……黒永悠の実力審査を開始する」




「ーー始めッ!」




開始の号令と共に五発の銃声が演習場に鳴り響いた。


「……なっんだ…と…!?」


「ぐぎゃあああっ!!」


バルバリンのPTメンバーの二人を貫いた弾丸。


射創から血が流れ落ちる。


「…飛び道具使いか!?…コーラル」


「ウォール!」


半透明の壁がバルバリンと残り一人を覆う。


ダッシュで距離を縮め右手に握るリッタァブレイカーで殴る。一撃で粉砕された半透明の壁。


硝子が砕けるように破片が散りそのままコーラルと呼ばれた女性メンバーの腹にめり込む。


「うぐぇ…っ!?…えっ……ぞ、ぞんなぁ…馬鹿……!…オエエエエエエ!!!」


吐瀉物と血反吐を撒き散らし蹲った。


「……な、中々、やるじゃねぇか!?だがなぁ……ランカー相手にゃあ通用しねぇぞぉ!!」


両斧を振り下ろすが左手で斧の刃を止める。


「……お、俺の一撃を素手で…!!?」


力を入れ刃を砕いた。バルバリンの鳩尾を拳で殴る。


「おごぉぉぉ……ッ!!」


膝をついたバルバリンの頭を右手で掴む。


「………ま、ま、まっでぐでぇ…!?」


「玩具にするって言ってたよな」


「あ゛…あや゛まる……!!さっぎの…は…あ゛やま゛るがらぁ……!」


「謝らなくていい。……ただ覚えておけ」


「…まっまっまでぇ!?…ギ、ギブア」


掴んだまま頭を大地に叩きつけた。轟音と土煙が辺りを包む。


蜘蛛の巣上に割れる地面に頭が埋もれてるが体は小刻みに痙攣してる。


死んではいない。



「俺の身内を馬鹿にしたらどうなるか、な」



……あーーすっきりした!


さっきの挑発にかなりムカついてたからなぁ。


「バルバリン及びPTメンバーの戦闘不能を確認。…実力の証明はされた。異論はないな?ユーリニス」


「ないさ『灰獅子』。…随分と良い手駒を手に入れたな。…黒永悠、か。覚えておこう」


ユーリニスは振り返らず彼等を放置したまま演習場から去った。


「これにて審査を終了する!…救護班は負傷したメンバーの手当を頼む」


ラウラに向け親指を立てる。


「な?勝つって言ったろ」


「……うん。でも…ふふふ。ちょっとだけやり過ぎかな」


手を口元に添えて愉快そうにラウラが笑った。



ーークエストを達成しましたーー



こうして初めてのソロオーダーが終了した。



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