縁は繋がる②
「いつかでいいと言ったばかりですよ?焦っちゃ駄目」
よくできた女性だよ。こちらの意図を汲み、わざと戯けてくれている。こんな素敵な奥さんがいるのに浮気するローマンさんは、天罰が下るに違いな……って現在進行形で罰は下ってるか。
「……ええ。きっと打ち明けます」
「うんうん。それとアイヴィーちゃんの都合の良い時で構わないので、遊びに来させて下さい。指導は始まったばかりですから」
「でも、こっちに合わせて貰っちゃ申し訳ないですよ」
「いいのよ。私は暇人だもの。毎日だって構わないくらいだわ」
ナターシャさんのご厚意に頭が下がる思いだ。
「うふふ〜。アイヴィーちゃんも頑張りましょうね」
「ん」
こくり、とアイヴィーが頷く。
「重ね重ねお世話になります」
俺は深々と頭を下げた。
「も〜。本当はこっちがお礼しなきゃいけない立場なのに。頭を上げて下さいな」
「いえ。義父として、娘が世話になる以上、礼を尽くすのは当然ですから」
「まぁ立派だわぁ!アイヴィーちゃんも自慢のパパでしょう」
「ん。悠は私の自慢」
アイヴィーにこう言われると毎度ながら目が潤んじゃう。
「ユーってば泣いてんの?」
「…め、目にゴミが入ったのさ」
顔を覗き込むダーニャに誤魔化すように答える。
「ふふふ……あ!そうだったわ。ユウさんに渡す物があるの」
ナターシャさんは銀色の滑らかな液体の入った丸瓶をテーブルの上に置く。
「これは私が精製した錬成品で『四元水』といいます」
「四元水?」
「簡単に言うと火素、水素、風素、土素の四元素の属性を無機物へ付与を可能にする液体です。ほんの気持ちですが、鍛治技術に精通するユウさんなら有効活用できるでしょう」
……物質に属性を付与するなんて、さらっと言ってるが凄いアイテムじゃないか?
「要らないって言ったらメッですよ」
俺の表情を見て遠慮すると察したのかナターシャさんは、人差し指を唇に立て告げる。
「あはは。参ったな……それじゃありがたく頂きます」
「うんうん!それはそうと」
彼女はふと思い出したように言った。




