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ダーニャとオーランド総合商社 ①

9月16日 午前11時49分更新

9月17日 午後12時18分更新





〜午後14時10分 第5区画 オーランド総合商社〜


オーランド総合商社のロビーは、相変わらず賑わってるが、俺を遠巻きに様子を窺ってる商人も多く、気分はまるで檻の中の猛獣。彼等は噂に敏感だし、恐らく良くない噂が広まってる所為だろう。大体、世間の評判は好意的解釈が三割、残り七割は畏怖と敬遠。ただ、憤りは感じない。


()()()()()()を俺は背負っている。


「やっぱ『オーランド総合商社』はデケーのな!」


「ダーニャは来た時があるのか?」


「姉貴と一緒に一回だけ」


「なるほど」


用件を済ませるべく、受付へ向かう。


「あ……これは悠様、本日もお疲れ様です」


「どうもローランさん」


「それにダーニャ様も」


「……おれを知ってるの?」


「先週、モミジ様と一緒にいらしてましたので」


流石、受付嬢。人の顔を覚えるのは得意分野だ。


「連日の悠様の大活躍も存じております……私も含め社員ギルドメンバー一同、感服しました」


彼女の態度は、出会った当初から変わりない。

こういう人との繋がりを大切にしなきゃと思う。


「それに流浪の詐欺集団も摘発したそうですね?社長も大変、喜んでいましたよ」


「昨日の今日でよく知ってますね…」


「商人は耳聡いので」


自分の耳を触りクスリと笑うローランさんだった。


「本日の御用件は社長ですよね?」


「ええ」


正しくは、()()()だけど。


「今、二階応接室でお客様と交渉中ですので、そちらでお待ち下さい。係の者に連絡し案内させます」


「や、その辺で時間潰して待ってますよ」


冷静に考えると、いつも約束してないのに失礼だ。


……ちょっと好意に甘え過ぎだな俺。


「駄目です。社長より、悠様は最優先で通せと仰せ付かっていますので」


「さ、最優先?」


「それにお客様は悠様も、よくご存知の方々ですから……少々お待ちを」


彼女は電話機に似た魔導具を操作し始めた。


一定距離で文字を連絡し合う通信系の魔導具で、異世界版ポケベルって感じだ。


ダーニャが肘で俺の太腿を小突く。


「……有名人なんだな」


「そうか?」


「おれってばユーの活躍を全然、知らなかった」


「ははは!でもカッコイイって評判は聞かないけどな」


「うん」


冗談で答えると、ダーニャは自信満々に頷いた。


「…え、否定してくれないの?」


「だって本当に聞いてないし」


残酷な現実である。数分後、ローランさんに指示され二階へ移動した。


〜10分後 オーランド総合商社 二階 応接室〜


「こちらです」


羊人族の職員に案内され、長廊下を歩く。透明な窓の向こう側では、複数の部署毎に分かれた大部屋でギルドメンバー達が仕事に精を出している。……昔を思い出す懐かしい光景だ。程なくして、応接室の扉の前に到着すると職員は数回、ノックし職員は開ける。


「会談中、失礼致します。クロナガ様と『巌窟亭』のお嬢様をお連れしました」


「…ハァ?お嬢さまってなんだっつーの!おれ職人だし」


隣にいる俺に辛うじて、聴こえる程度の小声で愚痴る。


見習いでも譲れない矜持ってやつか?


「来ましたね」


「よーう!」


「ど、ども」


レイミーさんの他、歓楽街が誇る看板ギルド(リリムキッス)人気嬢ギルドメンバーエイルとシャーリィがソファーに座っていた。布面積の少ないあの制服姿は蠱惑的だが、私服姿の彼女達も魅力的だ。


軽く挨拶を済ませ、俺とダーニャも座る。


「んあ…そのガキは?」


エイルがダーニャを半眼で凝視し問う。


「『巌窟亭』で働く見習い職人のダーニャだ。今日は俺と一緒に色々、見て回ってる」


「ほほ〜〜…あの『紅兜』の秘蔵っ子っつーことね」


「か、かわいいッス」


「こんちわ!」


お互い簡単な自己紹介を済ませる。


「……実は困った事態が発生してしまい、業務提携を結んだ『リリムキッス』の御二人に相談してました。悠さんの意見も聞かせて欲しいので、話の途中ですが、同席して下さい」


表情は些かも困ってる様子には、見えない。本当、冷静沈着で落ち着いた人だぜ。


「ま、どのみちボスを退治しねーとダメだな」


エイルは服を弄った後、舌打ちする。


「チッ……ユウ、タバコある?」


「ほれ」


「サンキュー!ぷはぁ〜」


営業中は見せない素の彼女の姿だ。俺も言えないが、結構なヘビースモーカーである。


「エイルの言う通りだ、叩くなら今ッス」


「ウチで巣を三つ潰したばっかだからよ〜……残ってるのは、一番でっけぇやつだ」


「それが問題なのですね」


「そーそー」


「「?」」


「嗚呼、失礼。悠さんにも説明しますね」


内容が分からない俺とダーニャは、顔を見合わせた。


〜数分後〜


「いやいや……驚いた」


「驚いた?」


説明を聞き終え目を丸くする。


「実は近い内、依頼でそこに行く予定だったんで」


「…マジ?はは!スゲー偶然じゃんかよ」


「そ、そーッス」


「……成る程、確かに図ったような巡り合わせですね」


問題はなんと()()()()()()の周囲で起きていた。


なんでも塩湖付近は、良質な栄養成分を含む『ソルソルト』という塩が有名で、オーランド総合商社が保有する塩採掘の跡地があるそうだが、謎のモンスターが居着いてしまい、魔窟ダンジョン化してしまった。実際ここ数年間、非常に軽微な被害はあったものの、このような災害に発展した事は一度もないそうだ。採掘労働者は既に避難済みだが、このままだと土地を放棄する羽目になる。レイミーさんは早急に問題を解決すべくリリムキッスに依頼を出し、彼女達の活躍で巣と大半の雑魚モンスターは駆除したが、支配者ボスの討伐に手間取っている。


「わたしの勘だけどボスは希少種だわ」


エイルは双眸を細め、指でテーブルをトントン叩く。


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