ダーニャと金翼の若獅子 ①
9月3日 午前10時38分更新
9月4日 午前8時34分更新
〜午前11時15分 金翼の若獅子 ギルド広場〜
中央区画を通り正門をくぐり抜けギルドに到着する。
「め、めっちゃ広いじゃん!」
辺りを見渡しダーニャは感心した面持ちで呟いた。
「最初は俺も驚いたよ」
「…あの連中も冒険者なの?」
ダーニャが指差した先には15、16歳くらいの若い冒険者が数人ほど屯っていた。
「そうだな。多分、Dランクでギルド寮に住んでる冒険者だ」
「Dランク…」
何度か一階で見掛けた時がある。
「じゃあ行こうか」
先ずはフィオーネの所へ報告がてら紹介に行こう。
「うん…」
ちょっと様子が変だな。
「元気なく見えるけど大丈夫か?」
「は、はぁ!?おれはフツーだし!」
履いてあるデニム生地のショートパンツの端を握り、過剰反応する。
……あ、わかった。ダーニャは不安なのだ。初めて来た金翼の若獅子で見る冒険者は、巌窟亭で見る冒険者と変わって目に映るのだろう。
慣れない場所に緊張し萎縮してるのだ。
「ふふ」
子供らしい一面を垣間見たな。
「……なに笑ってんだよ」
「いやすまん」
膨れっ面がまた可愛く、笑みが溢れる。心細い気持ちを隠し、意地を張る姿にモミジの面影を感じた。
「ほい」
「あ…」
俺はダーニャの左手を握った。
「嫌じゃなかったら手を繋いでくれるか?」
「………」
「俺は寂しがり屋なもんでね」
「!」
ダーニャは唇を尖らせ、頰を僅かに染めた。
「…ユーがおれと手ぇ繋ぎたいなら……べつにいいよ」
「そっか」
「…言っとくけどしゃーなしだかんな?」
「はいはい」
「はいは一回!」
いつものダーニャに戻ったようで何よりである。
〜10分後〜
受付カウンターに行き、フィオーネに挨拶を済ませ、モンスターハウスの依頼達成を報告した。
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冒険者ギルド
ランク:S
ギルド:なし(設立中)
ランカー:金翼の若獅子 序列第8位(暫定)
GP:32000
クエスト達成数:59
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報酬金はエキドナの素材を、マリーさんへ渡し直接貰おう。
「ギルドカードをお返ししますね」
「サンキュー」
カードを受け取り懐に仕舞う。
「今回もお疲れ様でした」
……彼女の労いの笑顔は癒しだな。疲れが消え去り、また頑張ろうって意欲が湧いてくる。
男女問わず冒険者に人気が高い理由も頷けるぜ。
しかし、何故だろう?
久々にフィオーネと会話した気がする。
日数的には全然、そうでもないが不思議だ。
「結構、大変な場所だったけど楽しかったよ」
「ふふ!指定危険区域を楽しいって言える冒険者はほんの一握りですよ?」
「そっかな」
「流石、『反逆の黒』の……いえ私のギルドマスターです」
「フィオーネってば褒めすぎ……ん?」
私のってどーゆー意味だろ。
「あ、ダーニャちゃん」
「おっす!フィオーネの姉ちゃん」
俺の隣に佇むダーニャに気付く。
「フィオーネと知り合いだったのか?」
「姉御がギルドガールの定例会で紹介してくれたんだ」
ニッコリとフィオーネが微笑む。
「私のこと覚えててくれたのね」
「うん!」
知り合いと会えて、どこか安心した様子だ。
「今日はどうして悠さんと?」
「それはーーーー」
簡単にここまでの経緯を説明した。
「ーーーー成る程、そうだったのですか」
「ま、社会見学とダーニャの暇潰しも兼ねてな」
「しっかり悠さんに案内して貰ってね」
ダーニャは周囲を見渡した後、フィオーネを見上げた。
「……なぁフィオーネの姉ちゃん」
「はい」
「ユーってどんな冒険者なの?」
え、俺?
「姉御もジッちゃんも『巌窟亭』のみんなもユーはスゲーって言うけどホント?」
「そうですね、皆さんの仰る通り凄い冒険者ですよ」
「……」
「何が凄いか説明すると時間が掛かっちゃうので、簡単に説明しますね?」
「うんうん!」
「先ずはーーーー」
簡単に…と言う割にこれまでの軌跡を、赤裸々にダーニャに語るフィオーネだった。
〜数分後〜
「んじゃ皆はユーを尊敬してっから近寄れねーの?」
「え…」
粗方、話を聴き終えたダーニャは質問する。
「ユーを見てヒソヒソしてるし態度が変だから」
子供は大人が思う以上によく観察してる。
周囲を気にしてた様子は、それが原因だったのか。
「えっとですね」
俺を気遣い、歯切れが悪くなったフィオーネの代弁をしよう。
「皆は俺が怖いんだよ」
「悠さん、それは……」
フィオーネを片手で制止する。
「ユーがこわい?」
「契約者で他人より強いからな」
「どうして契約者で強いとこわいの?」
「ダーニャもオバケは怖いだろ?」
「こわいっつーか…まぁ好きじゃないけど…」
「それと一緒さ」
幾ら好意的に接してくれても、虐殺の件で契約者への恐怖と脅威が蘇ったに違いない。
畏怖嫌厭。それは仕方のない事だ。
人は理解できないものを恐れる。その範疇に俺を当て嵌めるのも、至極真っ当だと思う。もちろん、全員がそうとは思わない。……ただ、大多数の冒険者が俺に恐怖してるのは事実である。
風の評で風評、か。簡単に評価は一変した。
しかし、それを悔いるつもりは一切ない。
「でも……ユーは嫌じゃねーの?皆に怖がられてさ」
小さく首を横に振って否定する。
「俺には家族、友人、仲間がいるから大丈夫」
山積みの札束、煌めく財宝、黄金の塊、どんな物より価値のある俺の財産だ。
「ダーニャは俺が怖いか?」
「ううん!ユーはこわくねーよ」
「それが答えさ」
ニカッと笑い、頭を撫でる。
「……んじゃ次は二階を案内しようか」
流石に仕事の邪魔になるので、そろそろ移動しよう。
「おー」
「邪魔してごめんな」
「いいえ」
「それと例の会合だけど」
「はい!モミジと日程は調整済みなので、後はレイミーさんに返事を貰うだけですね」
手際の良さと行動力の速さが素晴らしい。
例の会合とは以前、フィオーネに勧められたギルド設立前の打ち合わせだ。
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『…ただ、鍛冶施設と道具屋の件は巌窟亭とオーランド総合商社が関わってますので、注意が必要ですね……何せ冒険者ギルドと職人ギルドの提携業務としては初の試みになりますから組合に事例もありません。一度、日程を調整してモミジとレイミーさんと会合しましょう!』
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オーランド総合商社にも行くし、返事を聞いとくか。
フィオーネと別れ、二階に向かう。




