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錬金術の真髄とは? ①

8月30日 午後12時23分更新

8月30日 午後19時25分更新




〜向日葵の月22日 午前9時30分 第2区画〜



翌日、ファーマン邸を目指し煉瓦路を歩く。


「アハハハハ!スッゲー楽ちん!」


「これはどう?」


「……うぉ〜〜〜!?」


「コラ!街中で騒ぐなっつーの」


ちなみに俺一人じゃない。

私服姿のモミジ、アイヴィー、ダーニャも一緒だ。


昨日の話の流れで一緒に行くことになったのである。


キューはアルマに捕まり、お留守番!今頃、稽古場でしごかれているだろう。


「姉貴!アイヴィーの影ってばスゲ〜〜!」


アイヴィーの操る影に乗るダーニャは楽しそうだ。


「降りろっつってんだよこのバカ」


「……は〜い」


諌められ渋々、降りる。


「ったく…ガキなんだから」


「ははは!実際、二人は子供だしな」


唇を尖らせるモミジに答えた。


「次はキューに乗せてあげる」


「キュー?」


「私の()()で竜だから」


「り、竜!?モンスターのドラゴンじゃんか!」


「凄く速く飛ぶ」


「……か、噛みついたりしない?」


「しないよ!キューはいい子だから」


手を繋ぎ仲良く話す二人を微笑ましく思いつつ、背後から眺める。


「可愛い娘さんたちだねぇ」


「え?」


道端のベンチに座る『亀人族タートマン』の老婆にアイヴーとダーニャが声を掛けられた。


タートマンは背負った甲羅が特徴的な亜人である。


「お父さんとお母さんと一緒に散歩かい?」


「お父さんと…」


「…お母さん?」


老婆は俺とモミジを夫婦だと勘違いしているようだ。


「………」


……うわっ……背を向けてるので顔を窺えないがモミジの耳が更に赤くなってる?


ここは俺が()()を解いておこうか。


「えーとお婆ちゃん」


「はい?」


「銀髪の子は俺の娘だけど、隣にいる彼女は妻じゃなくて友」


「コ、コホン!…あー…ウチの子が騒がしくて悪ぃな婆さん」


ほわっつ!?


「いいのいいのぉ子供は元気が一番だもの」


「あ、姉貴?」


ガシッとダーニャの頭をモミジが鷲掴む。


「姉貴じゃなくて……お・か・あ・さ・ん……だろ?ダーニャ」


「いただだだだっ!お、お、かあ、さん!?」


モミジの考える意図が読めず困惑する。


「……モミジ?」


「!な、なにかしら…あ、あ、あなた…」


ちょ、マジで急にどーしたの!?


モミジにそう呼ばれるとむず痒く照れ臭いがしかし、悪い気分でもなく……あーもー!


「モミジがお母さん……お母さん?」


お母さんと呼ばれ嬉しそうに見えたのは気のせいか?いい加減、煙を噴射しそうなレベルで顔が真っ赤だぞ。


「仲がいい家族ねぇ」


「あ、あたり前だぜ!……なぁ?」


「……おー」


もう諦めて適当に返事をした。


その後、家族の振りをした理由をモミジに聞くも言葉を濁すばかりで結局、真意は謎のまま……機嫌は悪くなさそーだし只の気紛れかな?


やれやれ、女心ってのは男には一生解明できない謎だぜ。



〜午前10時 ファーマン邸 リビング〜



「まぁまぁ!あなたがアイヴィーちゃんでこっちがダーニャちゃんねぇ?」


到着後、来訪を歓迎するナターシャさんは俺達をリビングへ案内してくれた。


「はじめまして」


「姉貴の一番弟子のダーニャっす!」


「や〜〜ん!食べちゃいたいくらい可愛い〜」


二人を抱き締め頰に自分の頬を擦り寄せる。


「…あう」


「わ、わ!?」


初対面なのに猫っ可愛がりもいい所だ。


「ナターシャさんって子供好きなんだな…」


「まあな」


……事故で子供を授かれなくなった背景を考えると、彼女が子供好きな理由も分かる気がする。


「それで今日は何の御用だったかしらぁ……まさか婚約の報告とか?」


「こ、こ、こ、婚約っ!?」


ボン、と擬音が聴こえそうなレベルでモミジが真っ赤になった。一々、真に受けちゃうモミジの反応が可愛い。根が真面目なんだろう。


「違います」


「……」


……と言った途端、憮然とした表情へ劇的なビフォーアフター。


「約束してたアイテムを渡しに来たんですよ」


「あらぁ」


「三人はその付き添いですね…な?」


「「……」」


同意を求めるとアイヴィーとダーニャは…宝箱だと思って箱を開けたら塵紙が入ってた…って具合のレベルで落胆した眼差しを俺に向けていた。


「……ケッ!」


モミジに至っては不貞腐れている。


あ、あれ?さっきまで機嫌が良かったのに…。


「うふふ!悠さんは女の子について()()した方が良いわね」


「勉強ですか?」


「……この際だしもっと言ってやってくれ」


「もっと?」


「あぁ〜そーゆーとこよ」


「うん」


「そーだぞ!鈍ちん」


駄目だ…これは味方が誰一人いない!


「あ、あはは!勉強はまたの機会に……これが約束の沈檎の蕾です」


矛先を変えるべく沈檎花の蕾をテーブルの上に乗せた。


ーーーーーーーーーーーーー

沈檎花の蕾×4

ーーーーーーーーーーーーー


「!」


「これが沈檎の蕾か?…ふーん…」


モミジがまじまじと凝視する。


「色が濃い」


「くんくん……なんか薬みたいな匂いがする」


感想は三者三様だ。


「……いえ、正確には沈檎の蕾の開花寸前の状態ね」


ナターシャさんは蕾を触り呟く。


「もしかしてこれだと駄目でした?」


他に沈檎の蕾ってアイテムは蛆溜りにはなかったぞ。


「駄目なんてとんでもない!寧ろ素晴らしいですわ」


「ほっ」


よかった〜。


「沈檎花は咲く寸前、つまり蕾の状態で調合すると薬効が最大限に高まるの」


「へぇ」


「沈檎の蕾から沈檎花の蕾に花が変化する時期は、不規則で狙って採るのはとても難しい……リョーマでも数えて数回程度しか沈檎花の蕾は摘めなかったわ。そもそも、ビガルダの毒沼の奥地へ行ける冒険者自体少ないし」


鋼鉄の探究心でレアな素材が確定で手に入るお陰だ。


「…何にせよありがとう悠さん。貴方のお陰で素晴らしい調合薬が錬成できるわ」


「いやぁ喜んで貰えて良かった」


「へへっ!さすがだぜ」


「私も鼻が高いから」


「ユーって本当にスゲー冒険者だったんだな…」


さっきと一転し褒められて気分上々だ。


「ふっふっふ!必要ならいつでも言って下さい」


「あとは女の子の扱いが上手くなれば文句なしね?」


ちょ、話を戻さないでぇ!


「それは絶望的だと思うから」


「え」


「エリザベートも『くっくっく……あの鈍さには時折、凶暴な殺意を覚える。吾の胸を揉んだ癖に』って言ってたし、ベアトリクスは『私も同じ部屋で一晩過ごしましたが朝起きた時、頭を両断し中身を覗きたくなる衝動に駆られましたわ』って言ってた」


……何故だろう?隣のモミジの顔を見るのが凄く怖い。


「他にも…ふがふが」


「わ、わはははは!アイヴィー?いい子だからちょっと黙っ」


ガシッと首を掴まれた。


「……すっげぇ()()が気になる話じゃねぇか?ああ゛?」



ヒ、ヒィ!?鬼がいるぅ〜あ、赤鬼!赤鬼だ!!い、いやモミジはオーガだけども!


「…うっわ…ユーってば最低」


「あらあらぁ弁明の余地はないかしら」


この後、弁明に時間を費やしたのは言うまでもない。


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