仕事をしてお金を稼ごう!③
〜午後14時 第2区画 巌窟亭〜
「ども」
「おう。約束の日までちっと早かったが宝石の加工はできてんぜ」
モミジから三つの宝石を受け取った。
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ベルカルビー(小)×2
・ベルカルビーの宝石。丁寧な職人技で綺麗に
加工されておりより赤く輝きを放つ。
ベルカファイア(小)×1
・ベルカファイアの宝石。丁寧な職人技で綺麗に
加工されておりより青く輝きを放つ。
ベルカモンド(極小)×1
・ベルカモンドの宝石。丁寧な職人技で綺麗に
加工されておりより美しく光沢の輝きを保つ。
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「綺麗だ…。加工するとこんなに変わるのか。大変だったろ?」
「たいしたことねーって。原石の状態が良かったから加工もしやすかったし」
「やっぱりモミジに頼んで良かった。ありがとう」
率直に礼を言うと照れてそっぽを向く。
「…ふ、ふん!ま、まぁ…オレもいい経験になったし…原石を見つけたら加工してやっからまた持ってこい。…話は変わるがその宝石は売るんだろ。商人ギルドに卸すなら手続きすっか?」
商人ギルド、か。
そろそろ登録に行ってみても良いかも。
「商人ギルドにも登録するつもりだし自分で行ってみるよ」
「は?」
口を開き唖然とするモミジ。
「…冒険者ギルドと職人ギルドに登録してんのに…そのうえ商人ギルドにも登録するつもりなのか…?」
「ああ。最初から三つのギルドに登録するつもりだったしな」
「……三つのギルドに登録するなんざぁ…聞いたとねーぞ。どこの商人ギルドに登録するつもりなんだよ」
「いや。何も決めてない」
指で目頭を押さえる。
「あのな…商人ギルドの商人は商売を職業にしてるプロだぞ。安く仕入れて高く売るっつーのが大前提にあるんだ。それこそ悪徳商人や詐欺師も多い。何も知らない宝石を持ったユウが行くなんて……鴨がネギを背負って鍋も持参して食べてくださいって言ってんのと同じだぞ」
「ま、マジか」
「マジだ。…最近、お前の噂はよく耳にするぜ。商人はそーゆーのにも目敏い。登録の同意書じゃなくて専従契約書なんざ書かされたら一生を棒に振ることになんぞ」
商人怖いよ、商人。
…考えてみれば商売稼業だから利益優先するのも当然だ。騙される方が悪いってのは良く言うが…。
「その顔は諦めるって顔じゃあねーよなぁ。……ったく仕方ねぇな。信頼できる商人ギルドを紹介してやるよ」
「え、いいのか?すっごい助かるけど」
「シケた顔されたらこっちが気になって落ちつかねーよ。騙されても夢見が悪いしな」
「ありがとう!」
モミジの手を握る。
「ば、ば、バッカヤロウ…!?き、急に手ぇ、握んじゃねーよ!?」
「ああ、悪い。つい嬉しくて」
「……どきどき……すんだろーが…」
下を向いて何か小声で呟く。
「ごめん。なんだって?」
「……なんでもねーよ!!……それと心配だからオレもついてく。登録もだが宝石の買取は目利きできる奴が側に居たほーがいいだろ。七日後の午前中に巌窟亭に来い。それまでには話はまとめとく」
「七日後の午前…。わかった」
「それと卸した品物は全部、売れたぜ。これ仲介料引いた代金な」
モミジから6万Gを受け取った。
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所持金:65万7500G
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「俺も忘れない内に渡しておくよ」
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・鉄鉱石×10
・銅鉱石×10
・銀鉱石×10
・金鉱石×10
・鋼石×10
・玉鋼×10
・魔鉱石×10
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増やした鉱石を渡した。
「玉鋼と金鉱石に…銀鉱石まで。大きさも質も問題ない……ほんとにいいのか?結構な量だぞ」
「いいんだよ。皆で使ってくれ」
「…わかった。他の奴らにも言っとくぜ。ありがとな」
「あと依頼を受けたいんだが」
「おう。創作依頼が一つある。ほらよ」
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創作依頼:片手剣が欲しい。
依頼者:金翼の若獅子 ギルドメンバー サグロー二
成功報酬金:25万
依頼期間:3〜7日
内容:刃こぼれし難い片手剣が欲しい。品質が悪ければ金は返してもらうぞ。
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片手剣か。報酬金も高いしこれにしよう。
「受けるよ」
「あいよ。武器の創作依頼か……クレームがきてもユウなら問題ねぇさ。がんばれよ」
「了解……ってそのブレスレットはモミジが作ったのか?」
ちらっと見えた左手の金属ブレスレット。
所々、腐食し色が剥げている。
「ん、ああ。駆け出しの頃に自作したアクセサリーだ。初心を忘れねぇようずっと着けてんだが……そろそろ寿命かもな」
……ふむ。俺も作ってみようかな。
幸い鍛治師の宝箱で鉱石の心配は要らない。
そうだ!どうせなら世話になってる皆にプレゼントできる品物を作ろうじゃないか。
鍛治や細工の良い練習にもなるしね。
「これがどーしたよ?」
「ちょっと気になっただけさ。じゃあ七日後によろしく」
「おう」
巌窟亭を出る。
第6区画で食材の買い出しと日用雑貨を買って自宅に帰った。
〜夕方17時 マイハウス〜
「ただい…ぶほッ!?」
ーーきゅー!!
玄関に入るとキューが顔面に飛びついてきた。
「おかえりなさい」
ーーーおかえり〜。
「…ただいま。ってこら!?」
ーーきゅきゅ?…きゅー!
俺の体を弄るキュー。鼻をすんすん鳴らしどんどん…あ!?…股間付近はアカーン!!
「ちょ、急にどうしたんだ…」
「アイヴィーとリビングで本を一緒に読んでたけど五分ぐらい前からずっと玄関にいたから」
ーーーあんたの腰袋が気になってるみたいよ。
…もしやモンスターの死骸に反応してるのか?
匂いなんてしないのにすっごい嗅覚だな。
ーーきゅきゅきゅ〜!
「わ、わかったよ。…食べさせるから落ち着けって」
〜マイハウス 庭〜
ゴブリンの族長の死骸とバロウルフの死骸を袋から取り出し庭に並べた。
「……悠。キューは本当にモンスターの死骸を食べるの?」
「ちょっと調べたけど魔導生命体はモンスターが好物らしい」
「初めて知った」
サーチの話はしない方が良いだろう。
アイヴィーに余計な気遣いはされたくない。
ーーーすっごいよだれ垂らしてるわよ。
ーーきゅきゅー!!
嬌声の鳴き声をあげ死骸に齧り付くキュー。
…全部は食べれないだろうなぁ。
〜10分後〜
ーー…けぷ。
「…なんて食欲だ」
「キューのお腹がぱんぱん」
ーーー…むむむ。中々、やるじゃないの。
自分より大きな死骸を物凄い勢いで食べ切った。
…どんな胃袋してんだよ。
体積と質量の法則を完全無視してるやん。
ーーぎゅぎゅー。
ふらふらとアイヴィーの元に飛んでくる。
抱っこするが重そうだ。
「きゅ、キュー。…ちょっと重いかも」
満腹になり眠いのかうつらうつらしている。
「ソファーで寝せてあげよう。俺たちも夕飯にしようか。今から支度するからな」
ーーー…キューに負けてられないわ!わたしも今日は限界まで挑戦するわよ。
お願いしますやめてください。
変な対抗心を燃やされると家計が苦しくなる。
〜1時間 マイハウス キッチン〜
「ーーよし」
プルゴッコを解体し完成した料理の品々。技術と筋力の数値は戦闘以外でもかなり役に立っていた。
容易に肉を吊るし裂き骨を取り除けるのだ。
猟師顔負けの技を自力で習得してしまった。
一人暮らしをしていた時に比べ格段に料理の腕前も上達している。プラスな変化だし問題ないんだけど。
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プルゴッコのラグーソースとパッパルデッレ
・プルゴッコの挽肉・香菜・トマトをパッパルデッレに絡ませた麺料理。濃厚なコクと野性味が食欲を誘う一品。テンションアップ(1時間付与)
プルゴッコのタタキ
・プルゴッコの肩ロースを炙った炙り料理。シンプルだが低下熱調理でしっかり内部に火が通った一品。
筋力+5(1時間付与)
プルゴッコの肉サラダ
・プルゴッコのモモ肉を茹で野菜と合わせたサラダ。茹で肉と野菜にフレンチドレッシングが絶妙に合うさっぱりした一品。
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「おーい。ご飯できたぞ〜」
食卓に料理を並べる。
「並べるの手伝う」
ーーー…遅い!背中とお腹がくっつくとこだったわ。今日は食べるわよ〜。
プルゴッコの料理は予想通り好評だった。皆で舌鼓を打ち平らげる。余った肉は燻製にしてみても良いな。
夕食後、時間が空く。
「アイヴィーは風呂。キューも寝てる。地下で鍛冶と錬成をするか」
ーーー暇だし私もいく〜。
〜40分後 地下 工房〜
「…ゴブリンの死骸と素材はこれで消費完了、と」
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・特製ポーション×6…回復量は低いが異常状態や病を治すポーション。
・マジックドリンク×4…MPが回復する飲料水。
・魔物避けのお香×3…焚いている間は魔物が近寄らない。
・魔物寄せのお香×2…焚いている間は魔物を引き寄せる。
・鉛色の変化液×1…液体をかけた無機物を鉛に変える。
・緑色の丸い種×1…緑色の丸い種。
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ーーーくぁ〜…。飽きずによく頑張るわね。
作業台で欠伸をしながらアルマが呟く。
「これが飯の糧になるからさ。ご飯が食えなくなっても良いのか?」
ーーーちゃっちゃっと働きなさい!飯が食えなくなったら喉笛噛みちぎるわよ!
食に対する執着心がすごい。喉笛を噛みちぎるとか恐ろしいわ。
「はいはい。次は鍛治だ」
さてさて…依頼品とは別に誰に何を贈ろうか。
まず、日頃から世話になってるフィオーネだ。ネックレス……うーん。恋人でもない男がプレゼントするには…ま、いっか。感謝の品を渡すだけだしな。
次にモミジ。ブレスレット。これは悩む必要はない。
アイヴィーには…ヘアバレッタ。アルマにはチョーカーでキューはアルマと色違いのリボンとかいいな。
ボッツ達には実用も兼ねて武器にしよう。
装備品を聞いてから作らないとな。
ーーー…なんか楽しそうね。
「まあな」
地下室の扉が開く。
「アイヴィーはお風呂あがったから。先にお部屋で寝るね」
ーーきゅー。
湯上りのアイヴィーに抱っこされているキュー。
「ああ。俺はもう少し鍛治をしてから風呂に入る。明日はギルドに行くのか?」
「うん」
「お弁当作らなきゃな」
「…悠。お仕事も家事も無理しないで。私はいつでも手伝うから言ってね」
ええ子や…。
「はは、心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ。おやすみアイヴィー」
「うん。おやすみなさい」
ーーきゅきゅ〜。
ーーー大袈裟ね〜。無理しても問題ないわよ。馬車馬のごとく働きなさい。
こいつは鬼だ…。
暫く鍛治作業に没頭していた。
…うわっ。もうこんな時間か。夜も遅いし風呂に入って寝るとしよう。




