新たな信者 ②
6月8日 午前8時45分更新
6月9日 午後13時30分更新
〜数分後〜
目的は済んだ……けど帰るにはまだ早い。
折角、秘境の遺跡に来た訳だしこの辺りを探索するのも悪くないな。
エキドナに滞在して良いか聞いてみよう。
「エキドナ」
ーーー何でしょうか?
「ニ、三日くらい遺跡に泊まってもいい?」
ーーー黒永様が望むなら何十日、何百日、何年、何百年と構いませんわ。
「ありがと……って俺のことは呼び捨てでいいぞ」
ーーーミコト様を宿す御神体に不敬を働けと?どうか御容赦を…!
あ、これ無理だわ。絶対に拒否する!……って瞳で語りかけてくるもん。
「まぁ無理強いはしないけど…」
ーーー感謝しますわ。
「でも傅くのは止めてくれ」
ーーーですが……。
「御神体の命令な」
そう言うと渋々だが頷いてくれた。
ーーー………御意。
「それよりもエキドナの話を聞かせてくれよ」
ーーー私の?
「ああ!初代との逸話に興味があるんだ」
エキドナは困り顔で首を傾げる。
ーーー……黒永様が仰る『金獅子』とは誰でしょう?御覧の通り此処を訪れる人の子は少なく闘えば大概、一瞬で勝敗が決するもので……余り覚えてないの。
「この中には居ないぞ。生還してるし…えーと、確か……三、四百年前の話かな」
ーーーそれ程、昔に私と戦い生還?……ふむ…そう言われると若干名、記憶に御座いますわ。
「名前はガウラ・レオンハートだ」
ーーーガウラ……嗚呼!
驚いた後、微笑んだ。
ーーーふふふ…時間が経つと思い出も薄れるものね……私に対話を試みた者は、黒永様を除き彼だけ……ガウラは魔物と意思疎通を可能にする変わったスキルの所持者でしたの。
「へぇ」
ーーーあれ程、苦戦したのは後にも先にもガウラだけでしたわ。
「エキドナも相当強いよな」
ーーーそうですね……無数の状態異常を自在に操り融合させる『生体兵器』は自分でも強いスキルだと思います。特に晶像化は強力な状態異常……敵がどんなに強くとも、発症すれば数分で物言わぬ像へ変わる。
「無敵じゃん」
雹晶窟の結晶病とは違うのだろうか?
ーーーいえ、無敵では御座いません。黒永様にはお話しますが、晶像化は自傷行為で防げるの。
「自傷?」
ーーー体が完全な晶像と化すまで、大ダメージを喰らえば解除される。この特性を見破ったのはガウラだけでしたが……生半可なダメージでは解除されないので相当な勇気を必要とするでしょう。しかも、晶像化の状態異常は特濃の魔素を体内で産み出し、石化と結晶化と融合させ産み出すので術者にも大きな負担を強いり結果、高純度の魔素と毒に蝕まれ自身が晶像化する危険もありますわ。それに……。
「それに?」
ーーー私が本領を発揮するのはビガルダ宮と周辺の森林付近のみ……限定された環境下で戦闘能力を大幅に上昇させる制限系統『適者適応』のスキルで他の土地では逆に戦闘能力が弱体化するわ。
「長寿且つ特殊な環境……あぁ!」
調べた本に載っていた文章を思い出し納得した。
それから小一時間ほどガウラ・レオンハートとエキドナの昔話を傾聴する。
伝説の魔物と語られるエキドナは人より遥かに賢いだろう……それに加え強力なスキルとアビリティを操るのだ。
シロが俺以外まともに勝負できないと言った理由も頷ける。
〜1時間後〜
「いやぁ〜ありがとう!面白い話をいっぱい聞けたよ」
ーーー喜んで頂き、光栄ですわ。
ガウラ・レオンハートの意外な……いや驚きの一面を知る事ができた。
「まさか初代『金獅子』がエキドナを口説いたってのは驚いたよ」
ラウラに教えたらショックで寝込むかも知れない。
ーーー戦闘中に…『俺の嫁になれ!』…と叫ばれた時は攻撃の手を止め、唖然としました。
そりゃそーなるわ。
ーーー彼は世界中の美しい魔人を嫁にしたいと笑顔で語ってくれましたが……果たして野望は叶ったのかしら?
志半ばで諦めたんだろうなぁ……む!?
アジ・ダハーカとフカナヅチとウェールズに告白された俺も似たような立場じゃん!……逆パターンだがエキドナに聞いてみるか。
「嫁になれって言われてどんな気分だった?」
ーーー不思議と悪くない気分だったかしら?ふふ……無論、狂ってるとも思いましたよ。死闘の真っ最中に求愛なんて正気の沙汰じゃない。
「まぁ…うん」
控え目に言って変態だと思う。
ーーー……本当に変わった男でしたわ。
それだけ言うと憂いを帯びた表情を浮かべ沈黙する。
「……」
エキドナの横顔は質問の真実を物語っていた。
……俺も他人事じゃない。真剣に向き合わなきゃいけない事を今一度、自覚させられたな。
「……ん」
そーいえばチビはどこ行った?
さっきまで大人しく首元に隠れていたのに。
ーーーどうかされましたか?
「いや道中で会ったヘビが……おーい!チビ〜」
呼ぶと翡翠の像の影から顔を覗かせ鳴く。
ーーシャ〜〜!
「あ、いた」
勝手に居なくなって心配したぞ……ったく。
「ほれ」
細長い胴体を掴み両肩に乗せる。
ーーー……その蛇は?
「密林で後を追っ掛けてきた可愛い蛇さ…うりうり」
エキドナは暫しチビを凝視し双眸を細めた。
「こんなに人懐っこいとは思わなかったなぁ」
ーーーミコト様と契約する黒永様を慕うのは眷属として当然かと。
「眷属ねぇ」
嫌われるより好かれた方が嬉しいし悪い気はしない。
ーーーふむ……良ければ上の階も御覧になりますか?
「ぜひ頼むよ」
ーーー破滅の祭壇に眠る宝を見れば、きっと黒永様も驚きますよ。
「そりゃ楽しみだ」
エキドナの案内で破滅の祭壇へ向かった。
〜午後17時51分 ビガルダ宮 11F 冀望の間〜
「うわ〜…宝の山じゃん」
次の階は部屋中、変な模様の宝箱で溢れ返っていた。
ーーーいえ、迂闊に触れると内臓を腐らせる呪いを振り撒く呪物ですわ。
「あ、本当だ」
罠マークばっか!
ーーー中にはナ・ハテ族の遺品も隠されていますが、この数から探り当てるのは困難でしょう。




