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依頼と約束!〜ビガルダ宮〜②

5月29日 午後20時25分更新

5月30日 午前9時40分更新





「………」


こんなの普通じゃ見れない……ってゆーかあり得ない奇妙な光景だ。


「やっぱ蛇繋がり?」


ーーシャシャ〜!


チビが再び鳴いた。


ズッ友ならぬヘビ友ってか?


右手が意思に反し動く兆候は、ミコトが関係してる合図……ナックラビィーの時もそうだった。


夜刀神……蛇神、か。


真名を奪われ祟り神と忌み嫌われても眷属には、女神の威光が伝わるのだろう。


ミコトの幻影が微笑み消える。


ーー………。


道を塞いでいたユルルングルは胴体を起こし退いた。


武装を解除し息を吐き礼を言う。


「ありがとう」


ーー…………。


鼻先を優しく撫でるとゆっくりと瞳孔が丸くなる。


「……もし戦ってれば勝つのに苦労したな」


それと気になったのは謎のナ・ハテ族…秘宝…契約者と(従魔)…野蛮人に不可思議な毒と鉄の巨人だ。


遥か昔とは()()の話だろう?


古代人とは関係はないみたいだが……ふむ。


「とりあえず中へ行こっか」


ーーシャ〜!


ユルルングルと他のモンスターに見守られる中、エキドナが待つビガルダ宮へいよいよ足を踏み入れた。



〜午後14時20分 ビガルダ宮 1F 贄の間〜



寺院の中は真っ暗で何も見えない。


「よっ」


腰に下げたランタンにシーから貰った着火魔導具で火を点ける。辺りが照らされた瞬間、乾いた笑いが出た。


「……ははは…殺意全開じゃねーか」


マップに表示されたばつ印()の数は外敵・侵入者を絶対に許さねーぞ?…って心意気を感じる。


前後左右に高速で突き出される針……その先はプレス機のように四角形の塊が地面を潰しており、極め付けは怪しい緑の水霧を噴く噴射器のような石像の配置だ。


これを越えないと(破滅の祭壇)へ続く階段へ行けない。さほど広くない石畳の空間によくもまぁ配備したもんだぜ。


他に道はないし腹を括るしかない。


「いち、にっ、いち、にっ!」


足を伸ばしストレッチする。


「…こーゆーのは躊躇っちゃダメだよな」


自分の筋力と敏捷の数値を信じて一気に駆け抜けよう。


「よーーい……ドン!!」


ーーシャッ!?


石畳を踏み抜き、土埃が舞う。


針のトラップは弾性を利用したバネの仕組みっぽいな……突き出す動作がある以上、必ず引っ込める。


「とぅ!」


その瞬間を逃さず、無事飛び込み成功っと。次は連続プレス……時間差で落ちるタイミングが違う。


「ふっ!!」


前転し勢いそのまま、転がり抜ける。最後は謎の水霧を噴射する石像だ。


「ほっ…よっ」


噴射する前にペナルティで象を狙い撃ち破壊した。


「ーーーーざっとこんなもんさ」


じゃじゃーん!百点満点!この程度の芸当は余裕ってね。


土埃を手で払い、満足気に腕を組む。


「突破するまで大体、五秒くらい……お?」


怪しい石のレバーを発見したので引いてみると、罠が停止した。


「成る程!これが罠のスイッチか」


止めとけば帰りは楽できそうだな。


ーーシャ〜……シャウ〜〜?


「…あ、悪い」


チビは目を回しているのか頭を項垂れ弱々しく鳴いた。


「さて……次は何が待ってるやら」


多分、祭壇へ近付く毎にトラップの激しさも増すだろう。ビガルダ宮に眠る秘宝の価値が伺い知れるってもんだ。


「まぁ俺の目的は宝じゃなくエキドナだし……な?」


ーーシャ〜?


チビに語りかけ階段を登る。


次も、そのまた次も階層を上がる度、強烈な罠が俺を待ち構えていた。時にスピードで…または荒業でトラップをクリアし登って行く。



〜午後15時13分 ビガルダ宮 9F 呪術師の間〜



「次で九階か」


マップの位置から距離を考えると……あと二、三階?


「今度は何が待ってるやら」


突破する難易度が高い罠が増えてるし油断せず挑もう。


「……わぁ」


階段の先は骸骨に埋め尽くされた不気味な部屋でした……って足の踏み場もないぞ。


「なんだこれ?」


触るのを一瞬、躊躇うが拾う。骨には奇妙な文字が彫られていた。


「……紀章文字と似てるが違うな」


刻まれた文字を眺めていると骨が震えた。


「うわっ!?」


びっくりしてぶん投げる。


尖った頭蓋骨が部屋の中央で浮かび上がり、散乱する骨が凄いスピードで塊となっていく。


「これは…」


あっという間に文字塗れの髑髏の化け物が完成した。


ーー………。


ぽっかり空いた眼窩の部分は不気味な光を灯す。


「リッチ……いや違う」


ーーサーチ対象外。鑑定推奨ーー


「!」


警告音と共に表示されるメッセージウィンドウ。


「鑑定だと?」


あらためて鑑定した結果、モンスターではなくナ・ハテ族の呪術師が製作した呪物と判明した。


縛られし骸骨(カテカポーカ)……死者の人骨を利用する禁呪をスキルエンチャントした呪物で壊しても一定時間経てば何度でも復活する。百人の人骨を使用し発動には製作者の自殺が必要……一度発動すれば解除は不可、か。


ーー………。


骨の槍が俺の頭上に出現し降り注ぐ。骨を武器に操作する攻撃手段が売りのようだ。サイドステップで躱し淵噛蛇を発動した。黒蛇で作る巨拳を伸ばし、塊を粉砕するもカテカポーカは攻撃を続ける。


「ちっ……相手にするだけ時間の無駄だな」


鋼鉄の探究心がなければ分からなかった内容だが、HP・MPが存在しないカテカポーカはこの部屋では無敵……しかし、行動範囲は部屋の中だけと決まっている。


階段に到達した時点でまた物言わぬ骨に戻るのだ。


攻撃を引き付け一気に横を駆け抜け……!!


「ほ、骨が足に!?」


ダッシュした瞬間、脹脛に鋭い痛みが走った。トラバサミのように骨が食い込んでいる。


予想外の攻撃を喰らい隙を作ってしまう。


「や、べっ」


眼前に尖った骨が()()に迫る。慌てて両腕を交差し防御するが途中で止まった。


「……なに?」


ーーシャシャ〜!シャ!


ーー………。


カテカポーカは攻撃を停止させたようだ。


「よ、よく分からんがチャンス!」


石畳を這うように猛ダッシュし階段まで辿り着くと、眼窩の光は消え塊が破裂し部屋中にまた散乱した。


「………どうしてだろう」


暢気に鳴くチビを凝視する。


「もしかして……」


首のチビに当たらないよう攻撃を止めたのか?ナ・ハテ族は蛇と共生した部族……呪術師が(なかま)を攻撃しないようカテカポーカに制限を課したのかも知れない。


鑑定文に書いてなかったけどそう考えると辻褄が合う。


ーーシャ?


「……ありがとな」


鼻先をツン、と指で小突き礼を言う。


俺にとって蛇は幸運の象徴……チビのお陰で痛い思いをしなくて済んだぜ。


螺旋階段を登り次の階層へ向かう。


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