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依頼と約束!〜ビガルダ宮〜①

5月26日 午前8時40分更新

5月27日 午前8時41分更新






〜向日葵の月16日 午前10時30分 霧隠しの境界〜



起床し背伸びする。


「……ふぁ〜あ…結構、寝ちゃったな」


懐中時計を見て時刻を確認し驚く。


「もうこんな時間か」


疲れが溜まっていたのか随分と寝過ごしてしまった。


「あれ?」


昨日、持っていたはずの手帳が消えた!?


周辺を探すが全く見つからない。


「……風で飛んでちゃったかなぁ」


残念だが諦めるしかないだろう。この濃霧の中、探すのは流石に面倒臭い。


コーヒーを飲み出発した。


充分な睡眠を取って体調が回復したのか足取りが軽い!


想像してたより早く目的地(ビガルダ宮)へ到着できそうだな。しかし、此処はまるで霧の迷路だ……延々と彷徨ってる感覚に陥る。


……さっさっと抜け出したいぜ。



〜午後12時45分 禁域 ビガルダ宮 ユルルングルの庭〜



緑の矢印に到着すると霧が薄れ小雨に変わった。ヤシ類やシダ類の樹木の葉から雫が不規則に滴る。


「おぉ」


緑青で色が剥げてるが立派な双蛇の巨像が俺を出迎えた。


…崩壊した無数の建造物の物陰から猿とトカゲが融合させたような動物が俺を警戒している。


ーーキキッ?……キー?


密林に眠る遺跡のような場所だ。雰囲気はヒャタルシュメクに近いが、古代文明とはまた違う印象を受ける。


「…蒸し暑いな」


湿度のせいか立ってるだけで汗が噴き出した。


「うわぁ…マジかこれ?」


マップを確認してテンションが下がる。


赤、赤、赤、赤、赤……お猿のお尻みたく真っ赤っか。


「ペンキで塗ったみたいじゃんか」


流石にこのモンスターの数を相手にするのは骨が……へぇあ!?


「ど、どうして?」


オセロをひっくり返したように急に()()()()へ変わり、声がひっくり返る。


「……よく分からんが僥倖だよな」


無駄な殺生をしなくて済むのは大歓迎さ。謎めいた密林を進…ふぇっくしょん!!


「ずずっ…風邪を引く前に行くか」


雨に濡れる中、鼻水を啜りビガルダ宮の探索を開始した。


〜30分後〜


逞しいエレファントマングローブの支柱根を潜り進む。


……惚れ惚れするほど立派な樹だ。何十年と根を張り養分を吸って育ったのだろう。


しかし、先へ進むほどジャングルの険しさは増していく。


「……む」


背後を振り返ると一匹の蛇が後を付いて来ていた。


「小さな黒蛇?」


恐らくモンスターの幼体だと思う。黒蛇は首を傾げ俺をジーッと見ている。


「うりうり」


屈んで頭をツンツンしてみた。


ーー……シャ〜!


構って貰い嬉しいのか、舌先をチョロチョロ出してる。


「お〜懐っこい」


哺乳類と別方向の爬虫類特有の可愛さってあるよなぁ?


蛇は人に懐かず警戒が薄れ慣れるだけなので、危険だと聞いた事がある。


……しかし、パルキゲニアと地球の蛇じゃ生態が似てるようで違うのかも知れない。


それに蛇は俺にとっちゃ()()()()()()()()だ。


ーーシャ〜……シャ?


「あ、おい」


腕に攀じ登って首に巻き付く。どうやら離れるつもりはない様子だ。


「……道中のお供ってことで途中まで一緒に行くか?」


ーーシャ!


「よろしくおチビちゃん」


気を取り直し再出発しよう。


〜30分後〜


「………」


無数の地面を這いずり草に体鱗が擦れる音が嫌になるくらい聴こえる。


「どうしてこうなった?」


多種多様の蛇が気付けば俺の後を付いて来ていた。皆、爬虫獣類・蛇種の歴とした魔物だ。


ハーメルンの笛吹よろしく蛇を従えてるみたい。


「うーむ……」


どの蛇も敵意はなく、従順で非常に友好的である。


……もしかして()()()()でミコトの存在を嗅ぎ分けてるとか?


神樂蛇(ハク・シロ・ラン)を召喚して説明……ってどうした?」


ーーシャ〜?シャシャ…シャ!


首に巻き付くチビちゃんが唸る。


「痛てて!締めるなっちゅーに……お?」


前を振り向くとビガルダ宮が忽然と姿を現した。


「あれがビガルダ宮…」


例えるなら密林の秘境に眠る寺院が適切だろう。濠に青紫の蓮の葉が浮かび、蛇の石像が無作為に並ぶ。


……地球なら世界遺産の認定待ったなしの遺跡だ。


「……」


あの朧気に見える頂上の部分が破滅の祭壇かな?


「!」


眺めていると視界を巨大な塊が高速で通過した。樹々を薙ぎ倒し地面が抉れる。


「……うぉぉ」


全貌を視認し思わず声が漏れてしまう。


傷だらけの暗黄褐色の胴体…塞がった片目……怪獣のような大蛇の瞳孔が細まる。小さな家など丸呑みにしてしまいそうだ。


「はっ…!?」


見惚れてる場合じゃない!サーチだサーチ!


ーー対象を確認。ステータスを表示ーー

名前:ユルルングル

種族:爬虫獣類・蛇種(希少種)

称号:地を揺るがす者


戦闘パラメーター

HP4500000 MP3500

筋力20000 敏捷17000

体力29000 魔力1200

精神17650


・耐性

猛毒耐性(Lv Max)

混乱耐性(Lv Max)

物理耐性(Lv7)

魔法耐性(Lv3)


・戦闘技

大旋風

丸呑み

凪倒し

鱗飛ばし

怒天壊振


・魔法

土魔法(Lv Max)


・固有スキル

密林の王

強振動

緑の剛殻

形態変化・迅

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ビガルダ宮の密林を縄張りに生息するモンスター。

爬虫獣類・蛇種の中でも怪蛇という希少種に分類され、全長100mを越す大型の魔物である。その巨体は移動するだけで、脅威となり非常に頑強な蛇鱗と防御系統のスキルも兼ね備え、並大抵の攻撃は通用しない。状態異常に対しても強い耐性を保つ密林の覇者だ。


体格を利用した攻撃の威力は筆舌し難いが、魔法攻撃は得意ではない。また弱点属性である氷属性の攻撃を食らい続けると動きが硬直してしまう。しかし、窮地の際は脱皮し外殻を捨てることにより戦闘能力を大幅に向上させる。


遥か昔、人と蛇の魔物が共生する村があった。


霧に包まれた密林のビガルダで暮らすナ・ハテ族は蛇語を話し蛇神を祀る変わった部族である。


ある日、村一番の勇者と一匹の蛇が()()を交わす。それは村の脅威に対抗すべく、だ……脅威とはナ・ハテ族に伝わる秘宝の噂を知った()()()()()()の侵略行為である。


()()()()()()()()()()を操り、大地を穢す野蛮人にナ・ハテ族と蛇は滅亡寸前まで追い込まれる。


しかし、契約者となった勇者と従魔の蛇が侵略を阻止した。


……だが、美しい沼は毒に蝕まれ、溢れた骸を捕食する虫の糞土で谷は埋まり、生き残ったナ・ハテ族の民はこの地を見限り去ってしまう。それでも勇者と蛇は秘宝が眠る寺院を生涯を捧げ守護した。


そして、寿命を全うし共に逝ってしまう。


残された蛇は密林と寺院(ビガルダ宮)を守り続ける。エキドナと同じくユルルングルも使命を継ぐ蛇の一匹だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「HPが四百万を越えてるだと…?」


過去、サーチしたモンスターの中でダントツの数値である。かなりの強敵に違いない。


武器を構え臨戦態勢を整えた。


「……チビ。離れてろ」


ーーシャ〜〜!シャシャ!!


「チビ?」


首に巻き付く黒蛇がユルルングルに向かって鳴く。


「な、なんだ!?」


突然、右手が震え黒蛇を纏い始める。


「……ミコト?」


背後にミコトの幻影が顕現した。


ーー………!


ユルルングルも他の蛇も敬服するように地に伏せる。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 行幸(ぎょうこう)は、天皇が外出すること。 恐らく「僥倖」の間違いだと思いますよ。 これからも楽しく読ませていただきますね。
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