依頼と約束!〜ビガルダの毒沼〜⑤
5月12日 午前10時13分更新
5月13日 午前7時32分更新
〜向日葵の月14日 午後16時15分〜
時間を巻き戻し、舞台は再びビガルダの毒沼へ移る。
悠は燈會藻の水面で小休止していた。
〜午前11時45分 ビガルダの毒沼 燈會藻の水面〜
点々と不気味に放光する藻が漂う水面を眺めつつ、手頃な枯れ木に腰掛け一服中だ。
「ある程度、探索は完了かな?」
マップで埋めてないのは糞泥の塔林へ続く一帯だけだ。
「モンスターの死骸も素材も大量で万々歳ってか」
貪欲な魔女の腰袋の中は毒沼でゲットしたアイテムでいっぱい!
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・モンスター
沼ダニ・変異種の死骸と素材×12
キラーフライ・変異種の死骸と素材×12
ビガルダガザミの死骸と素材×7
スラッジメイルホッパーの死骸と素材×1
ポイズンスライムの死骸と素材×4
ビガルダスライムの死骸と素材×1
マッドナイトの死骸と素材×1
マッドジェネラルの死骸と素材×1
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・採取アイテム
ビガルダマッシュ×15
ビガルダベリー×15
毒露の滴×3
濃縮毒蜜袋×3
毒水×15
濾された毒水×10
凝縮猛毒水×3
ビガルダリーフ×3
ポイズンリーフ×3
パラライズリーフ×3
コンフュリーフ×3
驚愕の粘菌×1
驚愕の超粘菌×1
邪なる枯れ木×1
邪なる腐木×1
ラフレルシアの種×1
・採掘アイテム(鉱石)
泥岩石×10
泥炭石×8
硫砒鉱×8
毒砂×5
昆虫化石×3
魔獣化石×3
瑠璃毒石×6
・採掘アイテム(宝石)
毒瑪瑙×1
泥涙石×3
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「……ふぅー」
煙を吐き左拳を握り締め、力を込める。
コンディションは万全!寧ろ活力が漲って普段より調子が良過ぎるくらい?
理由は明白で深淵の刻印で状態異常を無効化し、逆に吸収することでパワーアップした状態を常に保っているからだ。
ここは俺にとって最高の戦闘環境に違いない。
「まぁそれなりに人はいるけど」
マップに表示する複数の白マークは冒険者かはたまた他の戦闘職か……危険区域の割に盛況なのはリターンを求めてだろう。
「……っとそろそろ出発すっか」
夜になる前にキャンプできる場所を探さないとね!
目標の破滅の祭壇と蛆溜りはずっと先だ。出来れば次のエリアの境目で……ん?
「不規則に点滅してるぞ」
未踏のエリアで大きな赤マークが消えては光っていた。それを追撃するように白マークも赤マークへ急速接近している。
「……戦闘中っぽいな」
俺も戦う準備と心構えをしていこう。
ペナルティを左手に携え、沼地の奥へと歩を進めた。
〜30分後 ビガルダの毒沼 隠霧の水面〜
「お、思ってたより遠い」
着実にマークへ近付いているが霧が濃くなり視界不良!一寸先は闇ならぬ霧ってか?
それにどうも変だ……やけに静か過ぎる。
警戒心を強め更に先へ行くと、戦闘音が聴こえた。
いつの間にか俺とマップの赤マークと白マークの距離が急激に縮まっている。
「!」
粘膜で濡れた班目模様の皮膚が視界に映り、霧に紛れ消えてしまう。
「また隠れたわね」
突如、現れたのはあの猫人族の女の子だった。
「大丈夫?」
「問題ないわ……ってえ?」
彼女は隣にいる俺を視認し大きく目を見開き、形相が一変する。
「〜〜ッ!こんな奥で何してるのよ!?急いで戻りなさい!」
えぇ……すっごい怒鳴られた?
「私は戦闘中なの!巻き込まれたら死ぬわよ」
「いや俺は大丈夫だから……」
「ハァ!?黙ってーーーーチッ!」
霧の向こうから薄い紫色の塊が飛んできた。
互いにステップで躱し離れる。
「うっ」
凄い刺激臭だな……小便と腐った牛乳を雑巾で拭いてロッカーに一ヶ月放置したような悪臭だ。
ーーグェェェ…グェ?
霧を掻き分け、モンスターが露わになる。
大きな扁平の頭部の幅いっぱいに広がる口には、ギザギザの小さな歯がびっしりと並び、背中から尻尾まで突起した疣から粘液を垂れ流し、班模様の皮膚を保護していた。
真っ先に頭に浮かんだのは巨大なサンショウウオだ。
体調は10m〜13m程で体を揺らす度、粘着質な粘液が飛散している。
「……アタシの背後に隠れて」
「でも」
「黙って言うこと聞きなさい!」
「は、はい」
……また怒鳴られそうだし今は素直に従おう。彼女がピンチになったら参戦すればいい。
「こいつはビガルダサラマンダー……通称『沼主』。毒沼の生態系でトップに君臨する爬虫獣類のモンスターよ」
「ほほーう」
「…体内で精製する解毒困難な神経毒を巧みに操り、あの粘液で攻撃ダメージを減少させる」
「ふむふむ」
「……動きは鈍いけど自身の魔力を遮断し身を隠す霧を吐き姿を消すの。この霧は音を吸収する特性も持ってるわ」
もしかてマークが消えたり光ったのはそのせい?
「面白いスキルかアビリティだなぁ」
「き、緊張感が皆無!?少しはビビッて怖がりなさいよ!」
合槌を打ち傾聴してたらまた怒られた。
ーー……グェェェエェエェェ!
ビガルダサラマンダーは俺達が会話をしている間、大技を繰り出す準備をしていたようだ。
宙に向かって神経毒の唾……粘液の塊を無数に飛ばす。
それが弾け雨のように降り注いだ。
「拒絶のトライアングル」
しかし、彼女は焦る様子もなくアビリティを発動させ簡単に防ぐ。
これは結界魔法……いや、似てるが違う!
粘液の雨は俺達の頭上に出現した三角形の半透明な壁に触れると蒸発した。
左手の人差し指と中指に挟んでるのは薄いナイフか?羽のような形状で小さな光の粒子を纏っている。
「格の違いを教えてあげるわ」
指を左右にスライドさせると一本から五本へ増えた。
……手品!?
「『月猫』……メメント・カルナバッサ様の美技に酔いなさい」
投擲したナイフが空中で停止する。
「?」
「災厄のペンタグラマ」
迸る粒子の光線がナイフとナイフを繋ぎ五芒星を象ると、躙り寄るビガルダサラマンダーの右前肢から緑色の鮮血が噴き出す。
ーーグェェェ……ェエェ…!?
攻撃を喰らい、体勢を崩すと次は左後肢が潰れた。
「……どーゆことだ」
傍で観戦する俺もさっぱり仕組みが理解できない。
体表の疣が小さな破裂音と共に爆け、伸びた尻尾の先っぽまで切断され泥水に落ちる。
ーー…グァ…アァアァ…!
今度は胴体の脇肉が抉れ、黄色い肉が露わになった。
次々とダメージを受け、ビガルダサラマンダーの鈍重な動きが更に緩慢になる。
「……噂は所詮、噂、か。大したことないわね」
彼女……いや、メメントは些か落胆したように呟いた。
「この程度なら出方を窺うまでもなかったわ」
そして最後の一本を投擲する。
「崩壊のフラクタル」
投げたナイフが顔に刺さると五芒星が消える。
ーーグェェェェエェッ!!…ェアァ…ェ……?
突然、光線が内部から炸裂し醜い絶叫と共にビガルダサラマンダーは息絶えた。
「はい終わりっと」
理解の範疇を超えた戦闘だった。
腕力が強いとかスピードがあるとか魔法が凄いとか……単純な戦闘力で測れない強さだ。




