休日を過ごそう!〜はじめての魔導生命体〜
〜1時間後 地下 工房〜
MPも回復したし二回目の魔導具錬成に挑戦だ。
ーーー最初が上手くいったからって次も成功するわけじゃないわよ。
「大丈夫だって。一度あることは二度あるって言うだろ?それに失敗する気がしないんだ」
ーーー…ランダも同じことを言って爆発させてたわ。
「祟り神様が憑いてんだ。きっと成功するさ」
ーーー……忠告はしたからね。
不吉な事を言いやがって…。
見てろよ成功させるから。
「残りの死骸・素材・アイテムをぶち込んでっと…」
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・ナーダ洞窟のトロールの死骸と素材×1
・幻のジュエの死骸と素材×1
・赤色の活性剤×12
・青色の活性剤×2
・魔石(大)×4
・紫色の歪な種×1
・特製ポーション×10
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「さぁこい!」
ガタガタガタガタッ!!
…ん、んー?
錬成炉の文字がさっきと違い怪しく光って揺れも非常に激しいぞ。
ーーー…あーあ。だから言ったのに。…この反応は爆発かしら。
アルマはしっかり俺から離れている。
「ちょっ…おま!なに自分だけ逃げてんだよ!」
ーーー大丈夫よ。死にはしないし髪がちりちりになる程度で済むから……たぶん。
「たぶん!?」
揺れが激しくなり錬成炉からカラフルな色の煙が漏れ出した。
祟り神さまぁっ!何とかしてぇえ!?
大きな爆発音が鳴り響く。……爆発はしなかった。
錬成炉から煙だけが溢れている。
「…爆発しなかったぞ」
ーーー……気を付けなさい。魔導生命体かもしれないわ。
「あ、ああ」
錬成炉が不規則に揺れた。警戒しながら近づくと…。
ーーきゅい?
…かわいい生き物が顔を出した。
頭をなぞる様に後ろに伸びた二本の小さな角にくりっとした瞳にキュートな羽根。
黒いしなやかな尻尾を炉から覗かせる。
…小さい竜の赤ちゃんにしか見えねぇ。
「…アルマ。危険な魔導生命体に見えないんだけど」
ーーー…そうね。でも見た目に惑わされちゃダメよ。
ーー…きゅ…きゅ…。
一生懸命に出ようと身体を動かしている。
「……アルマ。可愛いし助けたいんだけど」
ーーー…そ、そうね。でも油断を誘っているのかも。
ーーきゅ…きゅきゅー!
無事、炉から抜け出した。
小さい羽を動かし此方を見ている。
覚束無い足取りでゆっくりと距離を縮め俺の左足にしがみつき愛らしい鳴き声をあげた。
ーーきゅー。
「………」
ーーーゆ、悠。懐かれてるけど……どうすんのよ。
「…どうするって?」
ーーー魔導生命体って普通は錬成者を敵視して襲うし禍々しいモンスターよ。…その子はずいぶんと様子が違う。殺すべきか否か…。
「この愛くるしい生き物を……殺す!?…アルマ…お前…このつぶらな瞳を見ろ。出来るか?」
抱き上げアルマに寄せる。
ーーきゅう?
ーーー…ちょ、ちょっと!確かに可愛いし…わたしだって殺させたくないけど…なんか解決法あんの!?
「……飼う」
ぎゅっと抱き締める。
ーーきゅ!
嬉しそうに頰を摺り寄せてきた。
ーーー飼うって……ペットじゃないのよ!?責任持って育てれるの!?アイヴィーだっているのよ!?可愛いからって中途半端に面倒を見ると可哀想なのはその子でしょ!
「アイヴィーにも説明するしちゃんと育てるから!…絶対に迷惑も掛けないから!」
捨て猫を拾った子供とお母さんみたいなやり取りだ。
「…凄い音がしたけど」
おうふ……。方向性も決まってない内にアイヴィーが騒ぎを聞きつけ現れた。
「あ、アイヴィー。…こ、これはな…」
ーーー…説明するんでしょ。…してみなさいよ。
「…悠が抱いてるのは…竜?」
ーーきゅきゅー!
〜5分後〜
アイヴィーに経緯と事情を説明した。
「……なるほど。アイヴィーは理解したから。つまり悠が魔導具の錬成に成功…。調子にのってそのマギモンも錬成したってこと」
ーーーくひひ。その通りね。反省しなさい。
度々、返す言葉もございません…。
「マギモンは危険だって本で見た。…でもこの子はかわいい。名前は?」
「名前は…まだない。飼うつもりだけど…アイヴィーは嫌じゃないか?」
「アイヴィーは大丈夫だから。抱いてもいい?」
ーーー…結局、飼うわけね。ちゃんと世話しなさいよ。祟り神の契約者に不死族の吸血鬼…そして魔導生命体。短い間にこの家も賑やかになったもんだわ〜。
アルマは少し呆れ顔だったが嬉しそうに尻尾を振っていた。…ツンデレネコめ。
「ほら」
アイヴィーがマギモンを抱く。
マギモンは嬉しそうに顔を舐めた。
ーーきゅきゅ〜。
「ふふ!くすぐったいから。アイヴィーが名前をつけてもいい?」
「ああ。なんて名前にするんだ?」
「ん……きゅーって鳴くから…キュー!」
子供らしいネーミングセンス。
「…この名前気に入った?」
ーーきゅ〜。きゅうきゅきゅー!
喜々とした鳴き声をあげた瞬間、青い光がアイヴィーとキューを包む。
「こ、これは…!?」
ーーー…うそでしょ。…この子……魔導生命体がアイヴィーの『召獣』になったわ。ちょっと二人をサーチしてみて。
言われるままアイヴィーとキューをサーチしてみる。
ーーーーー対象を確認。ステータスを表示ーーーーー
名前:アイヴィー・デュクセンヘイグ
性別:女
種族:不死族 吸血鬼
称号:幸せな幼き少女
職業:影の召喚士Lv1
戦闘パラメーター
HP2000MP4300
筋力255 魔力2280 狂気5
体力14 敏捷515 信仰10
技術255 精神1250 神秘70
非戦闘パラメーター
錬金:16 生産:10
飼育:15
耐性:不老耐性 不死耐性(Lv5)闇耐性(Lv5)
戦闘技:影技 吸血鬼の技法
魔法:闇魔法(Lv5)火魔法(Lv5)雷魔法(Lv4)召喚魔法
召獣:キュー(親密度75%)←
固有スキル:影法師・覚醒・冥闇・召喚・共感
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召獣
『キュー』
①アイヴィー・デュクセンヘイグが使役した魔導
生命体。MPを消費し遠方からも召喚する事が可能。
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職業が変わってる。…アイヴィーが使役した?
契約者とは違うみたいだがキューの方も見てみよう。
ーーーーー対象を確認。ステータスを表示ーーーーー
名前:キュー
種族:魔導生命体
職業:召獣Lv1
戦闘パラメーター
HP500 MP500
筋力20 魔力20
体力14 敏捷25
技術15 精神10
耐性:魔法耐性(Lv2)
戦闘技:召獣技
魔法:火魔法(Lv1)
主人:アイヴィー(親密度75%)
固有スキル:生命帰還・飛行・魔導の心得・共感
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黒永悠がランダの魔導具の錬成炉で生み出した魔導生命体。非常に人懐っこく甘えん坊。まだ生まれたばかりの為、戦闘能力は低い。『生命帰還』のスキル効果により自身よりもLvが高いモンスターを食べると戦闘数値が上昇する。
アイヴィー・デュクセンヘイグが名付け親。自分の主人として認めている。使役を望み召獣となった。
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ーーー召獣は契約者の従魔とは違う。絶対的な主従関係の元に成り立つの。…言い方を変えれば主人と下僕みたいなものよ。
アルマが物知りで助かる。
ーーー…キューだったわね。アイヴィーと相性や波長が余程合ったのか……それとも名付け親のアイヴィーを母親と思ったのか。はっきりした理由は分からないけどその子にもステータスの変化を確認させたほうがいいんじゃない。
「アイヴィー。……何か変わった事はないか?ステータスとか」
「…ステータスが変わった。アイヴィーは召喚士になってる。…召喚士、かっこいい」
「そ、そうだな。かっこいいよ」
存外、気に入ってくれたみたいだ。
「キュー。これからずっと一緒」
ーーきゅー!
何にせよ丸く収まって良かった……いや、でも人工的に生命を造るってかなり違法な事案だよな。
道徳的にも倫理的にも人の道から外れてる気がする。
法律で禁止されたりしてないといいが…。
「…魔導生命体について危険って以外に何か知ってるか?例えばミトゥルー連邦の憲法に……法律に違反してるとか…」
「アイヴィーは知らないから」
…10歳なんだし憲法や法律に詳しい訳ないですよねー。
ーーー見た目が竜の赤ちゃんだしアイヴィーが手懐けて召獣にしたモンスターって事にしときなさい。モンスターを『調教』する『調教師』は昔から居るわよ。
……なら大丈夫かな。
「アイヴィー。キューなんだけど…アイヴィーがテイムした竜の赤ちゃんってことにしてくれないか?…俺が魔導具で錬成したって知られたくないんだ」
「ていむ…?悠はみんなに知られたら困るの?」
「…うん。困っちゃうんだ」
「わかった。ならアイヴィーはぜったい内緒にするから。約束だもん」
物分かりが良い子だ。
「ありがとな」
ーーきゅきゅ。
「わっ。くすぐったいから」
「アイヴィーをお母さんって思ってるのかもな」
「…アイヴィーがお母さん。悠は……お父さん……んー…おじいちゃん」
「お、お爺ちゃん!?」
ーーーあーはっははっは!!ひー…ひーひひひ!…お、おじいちゃん…あんたおじいちゃんだって!よ、良かったじゃない。お父さんからおじいちゃんにグレードアップしたわよ…ひーひひひ!
ーーきゅー。
…最後の部分は非常に不本意だったがキューが家族の一員となった。
〜 夜21時 マイハウス 庭先〜
キューの一件から時間が過ぎすっかり夜が更けた。
「ふぅー」
紫煙を吐き出す。
アイヴィーとキューは一緒にお風呂に入っている。
キューもアルマに負けず食欲旺盛で大量の夕飯を平らげた。…食材も大量に仕入れなきゃなぁ。モンスターも食うみたいだし今度、死骸も与えてみよう。
ーーー賑やかな夕食だったわね。おじいちゃん。
アルマが足元に座る。
「ああ。…それとアルマ。明日からお前のご飯は煮干し三つな」
ーーーふざけんじゃないわよ!虐待よ!訴えてやる!
どこに訴えるつもりだよ。
「だったらおじいちゃんって呼ぶな。…それと相談があるんだが」
ーーー相談?
〜数分後〜
アルマに祟り神に契名や限定的に対話をする事が可能になった事を相談した。
ーーー……契名を与えられるけど自分からの対話は不可って…随分とまぁ…歪ってゆーか。
「あちら側からの対話を待つしかないみたいだ」
ーーースキルの効果で強制的な契約だしね。相手は神だから気長に待つしかないわよ。…これ以上、詳しいことは残念だけどわたしにも分からないわ。
「そっか」
ーーーま、家族も増えたし明日から頑張りなさい。
「おう」
こうして休日が終わった。




