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依頼と約束!〜ビガルダの毒沼〜①

5月1日 午後12時17分更新




〜向日葵の月14日〜


あれから二日後、俺はビガルダの毒沼へ向かう。言わずもがな残った依頼と約束を達成するためだ。


ちなみに巨獣骨の塩湖の方にエンジを連れてく予定!耐性を習得してない彼……じゃなく彼女にビガルダの毒沼は無謀だろう。


さて、モンスターハウス(マリーさん)の依頼はエキドナの生きた素材サンプルの入手でナターシャさんは沈檎の蕾って植物の採取だったな?


沈檎の蕾は鋼鉄の探究心と深淵の刻印があるし大丈夫だろう。


……問題はエキドナか。


書斎のモンスター関連の本を読み調べてみたけど、相当強いモンスターのようだ。


『荒地の魔女』、『毒の女王(カクテル・クイーン)』、『死酒』等々の異名で載っていたが挿絵はなし。長寿且つ特殊な環境下を縄張りとするので、目撃例も極僅か……そして、過去挑んだ冒険者・勇者・狩人の殆どが死んでるそうだ。


二百年前の数少ない生還者の証言では『…美しい半人半獣の魔人…猛毒の美酒に酔い、仲間は恍惚を浮かべ次々と死んだ。半端な耐性では対峙もままならない。私が生き残ったのは、運が良かったのとスキルのお陰だ』と言っていたらしい。


……初代金獅子が残した回顧録もラウラに頼み見せて貰ったが描写も乏しく、参考になる情報はなかった。結局、分かったのは指定危殆種も凌駕する伝説級のモンスターって事だけ。


あのアルマでさえ……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『知らないってマジ?』


『うにゃん!だって自分の領域に許可なく侵入する外敵を排除するだけのモンスターでしょ?無害で可愛いじゃない』


『ふーむ……無害なのか?』


『ま、無闇に敵を作らないってのも強さの一つだからね』


『その理論でいくとアルマはどうなんだ?』


『わたしは来る者拒まず、()()()()()()()の精神だから』


『えぇ』


『お陰でランダと出会った頃は敵がいなくなっちゃって毎日、暇してたわ』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


……こんな感じだったもんなぁ。


正直、戦闘は避けたい。目的は討伐じゃないのだ。


万が一、アジ・ダハーカ級のモンスターだったら勝算は零に等しい。話が通じない時は……いや、マイナス思考を捨て根気強く対話を試みようじゃないか!


異種間コミュニケーションは俺の得意分野だしね。



〜午前9時30分 二級危険区域 ビガルダの毒沼 転移石碑前〜



第6区画の転移石碑から移動完了っと!


「おろ?」


予想を裏切り、大勢の人で付近は賑わっていた。


仄かに生臭い薄霧が陽を遮る崖の麓のあっちこっちに、野営されたテントが張ってある。管理棟っぽい丸太小屋まで……まるでキャンプ場みたいじゃん。


「イメージと違うな」


毒が蔓延する危険区域には見えず首を傾げる。


「……もしかしてクロナガさん?」


「サイトじゃないか!奇遇だな」


偶然にも顔見知りである鉄騎隊の隊員と鉢合わせた。


「やっぱりクロナガさんだ」


会釈するも彼の顔は青褪め、具合が悪そうだ。


「まさか此処で会うなんて……ゴホッゴホ」


「大丈夫か?」


「あはは、大丈夫です!実は状態異常の耐性Lvを上げるため特訓中でして……メンデンとセバスチャンもいますよ」


「ほほう」


「ビガルダの毒沼は耐性取得とLv向上の修練に打ってつけなんで……オェ!まだ腹痛が治らないや」


ここで会ったのも何かの縁だし毒沼について教えて貰うとしよう。


「実は依頼で初めて来たんだが、この辺について話を聞かせてくれないか?」


「もちろん!立ち話もアレですし俺達が野営してるテントへ行きましょう」


サイトに案内されテントに移動した。


〜20分後 鉄騎隊のテント〜


薔薇と兜の絵が刺繍された特製の大型テントの中は、状態異常を鎮静化させるリフレッシュミントのお香が焚かれ充満している。


「成る程なぁ」


サイトの説明を聞き終えた俺は呟く。


……ビガルダの毒沼は二等危険区域に指定されてるが、毒沼の入り口付近はモンスターも出現せず、様々な状態異常を発症させる有毒ガスが濃霧のように沼から噴出してるらしい。ここで野営する殆どはそこに陣取り、わざと状態異常を羅患し各種耐性等の習得とLv向上を図ってるそうだ。


戦闘職を生業にする者の修行場ってか?


「AAA級の冒険者は転移石碑からテレポートできますが、大抵の連中はここまで自力で来るしかなく道中もモンスターが徘徊し危険なのでB(ランク)程度の実力が必須です」


「危険区域だもんな」


「ガルカタ大聖堂攻略で耐性の有無は、生存率に雲泥の差が生じると痛感しましてね……俺とメンデンとセバスチャンはモンスターと戦闘しつつ修行に励んでます」


耐性とは簡単に言えば免疫の強化verなのだろう。


三人は危険を承知の上で病原菌を体内に侵入させ、それに抵抗し打ちかつ能力を鍛えているのだ。そこに魔素が作用……って小難しい理屈は分からないが多分、そんな感じ?


「かなりキツイですけど、限界がきたらキャンプに戻り状態異常を和らげる香を焚き鎮静化させ回復後、また出発……その繰り返しです」


「修行ってのは辛いもんさ」


「ちなみに緊急時の救助隊も編成され丸太小屋に常駐してますが、救出範囲は沼地の浅いエリアのみ。毒沼の先、『糞泥の塔林』へ行く奴は滅多にいない……ざっとした説明ですけど」


「勉強になったよ。教えてくれてサンキューな」


「いえいえ!お役に立てて光栄です」


天幕が上がり、メンデンとセバスチャンも帰ってきた。


「…ウェ〜……二日酔いみたいで気持ち悪い……ってクロナガさん!?」


「お邪魔してるぜ」


軽く挨拶し三人のテントで暫く過ごしたのだった。


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[一言] アルマの挑む者を皆殺しにしてたら、そりゃ誰も来なくなるわ・・・暇になって当然!
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