紅い瞳が涙を流す。終
〜金翼の若獅子 二階 受付カウンター前〜
お!いたいた。
「待たせたな」
「ううん」
「フィオーネは?」
「仕事があっから戻っちまったぜ。…話は聞いたけど一緒に住むって件はどーだったよ?」
期待と不安が入り混じったアイヴィーの瞳。
俺はとびっきりの笑みを浮かべ答える。
「ふっふっふっ!…許可は貰った。アイヴィーは今日から俺の家に一緒に住む」
「おぉー!よかったじゃん!」
「…本当?」
「ああ、本当だ」
「アイヴィーはとっても嬉しいから!」
花が咲くように笑いぴょんぴょん跳ねて喜ぶ。
……喜ぶ姿を見れて俺も嬉しいよ。
「一応、聞いとくけど変な趣味はねーよな?」
「変な趣味?」
「小さい子の下着や裸を見て興奮するとかさ。…言っとくけどそんなんしたら地獄の底まで追い詰めて殺すからな!」
「あるわけねぇだろ」
激しく心外だ。
「…悠はアイヴィーの裸がみたいの?……えっち」
アイヴィーがじーっとこちらを見る。
…ちくしょう!俺は変態じゃねぇっ!!
「ひひ。…けどマジでアイヴィーのこと頼むぜ。ユーなら大丈夫だと思ってからっさ」
「勿論だ。任せろ」
「…それにラウラさんから別件の話もあったと思うけど深くは聞かねー。…けどさ!うちで良ければ愚痴でも相談でも聞いてやっからいつでも頼れ!」
闊達に笑うキャロル。
「…ありがとう」
「悠」
アイヴィーがコートを引っ張る。
「どうした?」
「…はやくお家に行きたいから」
「そうだな。アルマもお腹を空かして待ってるし帰ろう……あ、ちょっと待て。モンスターの死骸と素材はどうする?全部アイヴィーの物だ。売ればお金になると思うぞ」
アルカラグモとブードゥラットは大金になった。
魔窟の支配者と雑魚モンスターを売れば幾らになるのか想像もつかない。
「あげる」
「え、あげるって」
「アイヴィーは悠にお金より大切なものをたくさん貰ったから大丈夫」
「………」
「少しでもお返ししたいから。…全部あげる」
「…………」
…その言葉は反則だろぉ…。涙腺がやばい。
「ひひ!…泣きそうだろユー?」
キャロルが揶揄う。
「べ、別に!…ありがとう。このモンスターの死骸と素材は売らないで別に使わせて貰うよ」
「うん」
「じゃあ帰ろう」
「うん!」
俺とアイヴィーはキャロルと別れ帰路についた。
〜夜19時45分 マイハウス リビング〜
ーーー…ふーん。あの子が笑顔で家に来たのはそーゆ理由だったのね。
「ああ」
自宅に到着した俺達は簡単な食事を摂り風呂に入ってゆっくり過ごした。
アイヴィーは疲れてリビングのソファーで寝ている。
今はアルマに一緒に住む事情と経緯を説明していた。
ーーー賑やかなのは嫌いじゃないわ。昔、ランダが連れてきた子が使ってた部屋もあるしね。
意外と寂しがり屋のアルマ。尻尾が揺れて喜んでるのが分かる。
「致せり尽せりで助かるよ」
ーーーかわいい寝顔じゃない。
「そうだな」
ーーー……あんた変な悪戯とかすんじゃないわよ。
「ちょっと待て。俺ってそんな変態に見えるか?」
キャロルに続きアルマからも言われた。…いい加減、傷付くぞ。30歳独身男性のハートの弱さを舐めんな。
ーーーわたしをあんな風に辱しめるくせに…。
「ネコを撫でるのは普通だっつーの……あ!そういえば……半日で作り置きしてた飯を食ったろ。絶対にダイエットだかんな」
ーーーにゃ、にゃーん?
「都合の悪い時だけネコの振りすんな!」
「…んん…」
寝惚け眼を擦りながらアイヴィーがソファーから起き上がる。
「…っとごめんな。起こしちゃったか」
「…んーん…」
ーーー部屋まで案内するからベッドに寝せたら?
そうだな。
「ベッドで寝よう」
「……だっこ……」
両手を伸ばすアイヴィー。
「よいしょっと」
抱き上げるとアイヴィーの体温を直に感じた。
また寝息が聞こえる。
ーーー…まるで親子みたいねー。あんた30歳だっけ。将来の予行練習にいいんじゃない。
口の減らないネコめ。ダイエット食を覚悟しとけよ。
「…ふふ…」
起こさないように部屋へ運びベッドに寝せた。
「おやすみ」
穏やかな寝顔だ。…疲れたし俺も寝よう。
明日はゆっくり休むとするか。




