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残ってる仕事を片付けよう!②

1月31日 午後20時29分更新




〜午後12時40分 金翼の若獅子 二階 空中庭園〜


陽射しが強いが木の木陰に入ると大分和らぐ。


ちょっとしたピクニック気分で食べる弁当は美味い。


「そふぇひょ〜〜ふぁい」


「おー」


キャロルが弁当箱から玉子焼きを摘む。


「その調子だと悠さんのお菜がなくなっちゃいますよ?」


「ごくん…えへへ!つい美味しくってさ」


「ははは」


久々に自分で用意した弁当だけど、ちょっと作り過ぎてしまったし全然オッケー!


キャロルは惣菜パンと菓子パンでフィオーネは自作のサンドイッチとサラダか。


暫く談笑しつつ食事を続ける。


そして話題が今回、達成した共同依頼に移った。


「ユーとベアトリクスは『黒髭』を撃退してあの未踏破のダンジョンも攻略したんだろ?」


「皆のお陰だよ」


「まーた謙遜してぇ……メンデンとサイトが言ってたぜ?『辺境の英雄』はマスターと並ぶ最高の冒険者だって」


「ふふふ」


「…べつに大袈裟だな」


「ギルドマスターの活躍を誇らしく思います」


「そっか?」


「いししし」


照れ臭くなり、素っ気なく返事をする。二人はそんな心中を見透かすように笑っていた。


〜10分後〜


食べ終わると、キャロルから百合紅の月22日に起きた一連の顛末を聞かされた。


「……俺を庇って?」


「うん」


「まぁ嫌われても仕方ないと思ってたが…」


無所属で十三翼に抜擢……どんなに言葉を取り繕っても特別扱いに変わりはない。


その点を非難されるのは仕方ないだろう。


「二人がクエストを受けてくんなきゃマジ困ったし」


「受注頻度の低下は困りますから」


「そーそー!……あーゆーのがギルドの評判を下げてんだよなぁ〜」


「そもそもハイランクの冒険者がローランクの冒険者より優遇されるのは、危険度の高い凶悪なモンスター・賞金首を退治するゆえ……見合う対価を獲るのは当然の権利ですが、あのようなスカウトで依頼業務に支障が出るのは頂けません」


フィオーネも困り顔で喋る。


「エリザベートが喝を入れてくれてかなりマシになったけどね〜」


「ふむ…」


「ユーもGMになるし覚えておいたほーがいいぜ?無償の人助けって時に()()()に変わっから」


中々、深い言葉だ。


金を貰う以上、義務と成果を求められる。

それが曖昧になると杜撰な仕事になるとキャロルは言いたいのだろう。


「金に無頓着なのは知ってっけど、今後は養うギルドメンバーとギルドガールがいるわけだし」


「その通りだな」


「ふふふ……ベアトリクス様の報酬金をパルテノンに全額寄付しましたけどね?」


「おーーい!」


「こ、今回は特別さ」


キャロルが芝生に寝っ転がりる。


「……本当はうちもユーのギルドに行きてーけど契約が一年残ってからなぁ…一年後の楽しみにしとくわ」


「それまで潰さないよーに頑張るよ」


「いししし!」


嬉しい申し出だが、金翼の若獅子にとって耳が痛い話に違いない。


「私も『反逆の黒』の制服に袖を通す日が待ち遠しいです」


「……実はまだデザインを全然、考えてない」


「ユーが作るん?」


「なるべく自分で用意したくてな」


「うへぇ〜……手先が器用なのは知ってけど仕事を兼業し過ぎじゃん」


「そっかな」


色んなジャンルの仕事に挑戦できる能力を、腐らせるのが勿体ないってだけなんだけどね。


「素人考えですがエンブレムとギルド名の刺繍があれば、問題ないと思いますよ」


「よっと……いやいや!かわいいのが一番だって」


起き上がりキャロルがくるり、とその場で回る。


こーして見るとスカートが短いな……そんな勢い良く動いてると……!


「どう?うちってば制服が似合ってるっしょ〜」


「あ、ああ」


「ユーってばどーして目を背けてんの?」


「いや……ほら、丈が短いから…その、な」


「!」


そう言うと両手でスカートを押さえ、頬を赤らめる。


「……ユーのえっち」


普段と違った恥じらいの仕草と表情が可愛く魅力的だ。


「ふ、不可抗力だろ!それにはっきりは見てないぞ」


「へぇー」


フィオーネが冷ややかな眼差しを向けていた。


「因みにどんな色でした?」


「そりゃライトブルーでストライプのパンツ……はっ!?」


「……悠さん?」


「ばっちり見てんじゃんかー!…どーせ見られるなら…ぶつぶつ……もっと可愛いの穿いてきたのに……」


し、仕方ないじゃん!男だもん!そりゃ見るよ!?


こんな感じで和気藹々と過ごす内に、二人の休憩時間が終わった。


…巌窟亭に行く前にモンスターハウスに寄って行くか。


アジ・ダハーカ達に貰った鱗を渡してこよう。



〜同時刻 空中庭園〜



物陰に隠れ、三人の様子を観察する男女の二人組が居た。


「……あれが()()のフィオーネ・アルタランとキャロル・エッジコムだ」


「情報通りの非戦闘従事者で大した脅威じゃないわね」


「『金翼の若獅子』の職員である以上、奇襲に失敗すれば厄介だがな」


「噂の『阿修羅』もなぁーんか想像より弱そうだけど?」


「バカが……『瑠璃孔雀』の話を忘れたか?そもそも『金獅子』と対決し五体満足で生きてる時点で化け物だ。親衛隊の二人も敗れてるのだぞ」


「…ふん」


「姫の御命令通り、任務を遂行するだけだ」


「はいはい」


「他の隊員にも時期を見て決行と伝える」


「わかったわよ」


「一度、戻るぞ」


赤い狼を模した半面の兜を被り、戦闘服に身を包む男女はその場から音もなく瞬時に消えた。


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