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曠野の魔王 ①

1月19日 午後16時20分更新

1月20日 午前10時50分更新

1月20日 午後16時35分更新



〜百合紅の月31日 午前9時 マイハウス 地下二階 稽古場〜


翌日、頼まれてた戦闘訓練に参加した。稽古場にラウラを除いた全員が集まる。


「ーーーーあっぶね!?」


鼻先を魔法が掠めた。


「!…今のは惜しかったから」


遅れを取るつもりはなかったが動きに違和感がある。

兎に角、非常にやり辛い。

アイヴィーとオルティナのコンビはフカナヅチとウェールズと違った厄介さだ。


「クラックシャワ〜」


オルティナの水魔法の粒が頭上から降り注いだ。

後方に回避し直撃を防ぐ。


「おまけでアクアランス〜」


左手に翳す水の槍を投擲する。


またこれだ!急に動きが速くなって気付けば、距離を詰められちまう。


淵嚼蛇を纏った右腕で払い防御した。


「ウィケッドストーカー」


今度はアイヴィーの追尾式の魔法弾?でもスピードは遅っ…!


「ぶ、分裂だと?」


突如、三方向に別れ迫る闇魔法を無理な体勢で躱す。こ、こ、腰がぁ……後で誰かに湿布貼って貰おう。


「いい感じですね〜!」


「勝てそう」


「……」


もう余裕をかましてる場合じゃないし全速で決めるぞ。


「「!」」


かく乱するように周囲を駆け回る。


「は、速すぎて…」


「……追えないから」


二人が中央で佇む。


「…アイちゃん!背中を私にあわせーー」


ペナルティの銃口と燼鎚の刃を二人の頭と喉元に突き付ける。


オルティナの指示は間に合わなかった。


「ふぅ……俺の勝ちだ」


「あう〜降参ですぅ……」


「むぅ」


両手を挙げるオルティナと膨れっ面のアイヴィーだった。


「…正直、びびったぞ」


武器を仕舞い、素直な感想を口にした。


「なんっつーか…こう…めっちゃ戦い辛かったぜ?パワーとスピードが通じ難いって感じ」


「予想以上に上手くやれてたじゃない」


アルマが結界を解除し観戦してた三人も近寄る。


「あれなら合格よ」


「やったーー!」


「ぶい!」


アルマの一言に二人はハイタッチを交わし喜んだ。


「それじゃ約束通り師匠の魔法回避訓練はなし?」


「残念だけどそうなるわね」


「……」


アイヴィーがアルマに見えないよーに小さくガッツポーズしてるぞ。


「魔法回避訓練って?」


「アルマ師匠が放つ魔法を回避する訓練ですよぉ」


「別に普通の訓練っぽいが」


「……縦横斜めにだんだんと死角を潰してく致死級の連続魔法を延々と避け続けるお仕置きメニューの一つですから〜…」


「…経験しないと分からない辛さ」


「そ、そっか」


遠い目で語る二人の顔は哀愁を漂わせていた。


「素晴らしい技巧でした」


「見事な()()()()()()であったぞ」


「ギアチェンジ?」


車のシフトチェンジのこと……じゃないよなぁ。


「アビリティの動作や攻撃速度を意図的に緩めたり上げて、タイミングをずらし相手の距離や目測を錯覚させる……自分より素早い相手に有効な技術ですわ」


「スピードで凌駕するあんたは攻撃の隙を狙って反撃の機会を探ってたでしょ?でも、アイヴィーとオルティナは一定の速度で動いてないから認識を見誤る」


「なるほど…」


やり辛さの正体はそれか!


「戦闘数値が一定値に達してないと実現は難しいがな」


「近接戦に長けたタイプはこーゆー戦法に弱いのよ」


「むむむ」


「それでも最後は押し切られちゃいましたけど〜」


「次は勝つから」


…着実に二人は強くなってるし頼もしい限りだぜ!


「是非、鉄騎隊に勧誘したいくらいよ」


「くっくっく!気持ちは分かるぞ?」


「才能溢れる人材はギルドの宝ですからね」


エリザベートとベアトリクスのお墨付きとは…うち(反逆の黒)の未来は明るそうだ。


〜数分後〜


「よーよー…前座は終わり?即座にめいん!ばとるすたーのとーじょー!魅せるぜ舞獅子の本気」


準備を済ませ、不敵に韻を踏みラップ調でルウラはポーズを決める。


「ルウラのボロ負けに3000G賭けるから」


「ふっふっふ……がーるとルウラの歴然たる実力差をるっくさせてあげよう」


「おっぱいの大きさなら既に差が生まれてるけど?」


「ぶっ飛ばす」


「ケンカはめっ!ですよ〜?」


「「……」」


やれやれ…ん?


「『曠野の魔王』と『舞獅子』の闘い……訓練とはいえビックカードね」


「緋の英雄譚の伝承が真実か否か判明する訳だ」


「弱体化した状態で彼女をどう相手するか楽しみです」


「うむ…ルウラは強い。精神的に甘くスロースターターだが強者と見定めれば本来の実力を発揮する」


一度、その強さを肌身に染みてる俺としてはエリザベートの言ってる意味が分かる。


「…()()()、ねぇ」


アルマはそう呟くと魔人変異する。二人を中心に結界が稽古場を覆った。


「さーて…先手は譲ったげるから好きに攻撃なさい」


「……」


ぴくっとルウラの眉が動く。


随分と余裕をかましてるが大丈夫か…?


「死なない程度に揉んであげるから」


「おっけー……じゃ遠慮なく甘える」


眠たそうな瞳の奥で闘志が爛々と燃えている。ルウラの鋭い魔圧が結界越しにも伝わってきた。


次の瞬間、ルウラがアルマの背後を取った。


「ほわぁ〜」


「…悔しいけど速い」


「悠が贈ったヘルメスで更にスピードが強化されてる」


「ああ」


一瞬であの距離を潰すとは凄い。


矢継ぎ早に瞬速の蹴撃がアルマを襲う。

なんて手数なんだ。代理決闘の時と訳が違うぞ。


「私の時は手を抜いてた……動きがちがう」


悔しそうな表情でアイヴィーは呟く。


「…しかし、()()()()()アルマです」


「…だな」


ベアトリクスの言葉に同意する。


「全部、見切ってるぞ」


最小限の体捌きで打撃をいなしていた。堪らずルウラはその場を離れる。


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