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マイホームは今日も賑やか ③

1月8日 午後12時55分更新




〜数十分後〜


漸く誤解が解けて不穏な雰囲気が解消された。


「油断も隙もなっしんぐ…これだから年増は困る」


「お子様が何か言ってますが聴こえません」


ベアトリクスは不機嫌そうにグラスを傾け、酒を煽る。


あれぇ解消されてない…?


「次は吾が依頼に同行する」


「いや僕だよ」


「そこはギルドメンバーの私かと〜」


「最近、一緒に依頼してないアイヴィーだから」


こうまで言ってくれて光栄だが当分、一人で行動したくなった。


「…あんたって本当に男なのか疑問だわ」


俺の膝の上に乗ったアルマが喋る。


「この体格と顔で女に見えるか?」


「そーゆー意味じゃなくて金玉ついてるのかって言ってんのよ」


「立派なのがついてるわい」


「だって普通、一緒に寝て何もしないとかありえる?モンスターでもありえないわ」


「いや常識的に考えれば寝込みを襲うとか屑だろ」


「だから……あー…もういいわ」


「…なんだよ。気になるじゃん」


「石や木に物事を説明しても無駄でしょ?それと一緒」


「ひでぇ…」


遂に原始人から無機物にまで降格させられたぞ。


「あ!そーいやルウラを弟子にしたってマジか?」


「ええ」


「さっき聞いて驚いたが何かあったのか?」


「べっつに〜…ただの気まぐれかしら」


「……」


「…あによ」


「本当は二人の将来を考えてだろ?」


アルマのヒゲが動いた。


「ライバルがいた方が互いに切磋琢磨し成長するもんな」


無関心や適当を装っても本当は優しいって知ってる。

俺を世話焼きって言うがアルマだってそうだ。


「ったく…変なとこで察しが良くて始末に負えないわ」


「図星だろ?うりうり」


「にゃにゃ…にゃふぅ……はっ!?耳のつ、付け根を撫でるのはやめなさい!セクハラで訴えるわよ!?」


おぉ!久々の台詞じゃん。


「そういえば悠」


「ん?」


「今回も大活躍だったらしいね。ベアトリクスに聞いたよ」


ラウラが微笑む。


「大活躍、か…どうだろうな…俺は失敗してるし」


「…『黒髭』を逃したことか?」


「ああ」


「デッドランクの賞金首を撃退し未踏のダンジョンを制覇したのだぞ。これ以上ない成果ではないか」


「いえす」


「……」


「?」


目を細めアイヴィーを見詰める。容姿は似ても似つかないが……同じ子供だ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『ーー愛を知らず憎悪を糧に成長し冷酷非道な吸血鬼…夜を歩む者…影の躡王として君臨し千年続く暗黒時代の礎を築きます』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


……アザーはこう言っていた。


俺との出会いがアイヴィーの運命を変えたならミーシャの()()も変えられるのではないか?一縷の望みに賭ける価値はあるはず…それでも駄目ならその時は……。


「……」


「どうかしたの?」


「……いーや!何でもない」


「あうあう」


悟られないよう笑い誤魔化し頭を撫でる。


「髪がぐちゃぐちゃだから」


そうは言いつつも嬉しそうなアイヴィーだった。


「ルウラもルウラも!!」


「うぐ…」


アイヴィーの背中から覆い被さり、主張してきた。


「ふふ…はいはい」


全く可愛いもんだ。左手で同じように撫でてやる。


「優しくやらしいゆーの手つきに絶頂!絶好調!」


「やらしいは余計だ!女の子が絶頂とか言うなっちゅーに」


「わふ〜〜…あがっ!?」


アイヴィーがルウラのおさげを下から引っ張った。


「…さっきの仕返し」


舌を出し挑発するようにほくそ笑む。


「鉄拳をぷれぜんと…もれなく怒りもらっぴんぐ」


「こらこら」


喧嘩を始めそうだったので間に入り、仲裁した。


「だってルウラが悪い」


「がーるがばっど!」


お互いを指差し、同時に叫ぶ。息ぴったりだな……アイヴィーとルウラの仲の良さには舌を巻くぜ。


「……まーたみっちり叱られたいのかしら」


アルマが瞳孔を細め睨むと二人は途端に大人しくなった。


「ル、ルウラと私は仲良しだから」


「が、がーるはまいべすとふれんど…」


アイヴィーはまだしもルウラも素直になるとは…!アルマに怒られるのが、よっぽど怖いみたいだ。


「さて…俺は煙草でも吸ってくるか」


夕飯の準備で疲れたし片付け前に一息つこう。


「ついてく」


「ルウラも」


アルマの一喝と睨みが堪えたのかシャツの裾を摘み、ついてくる。


「ははは」


…平和で平穏なこの感じ…やっぱり我が家は一番だ。



〜同時刻 マイハウス リビング〜



エリザベートは玄関のドアが閉まると険しい表情で呟いた。


「…犯罪者とはいえ子供が相手では修羅になれぬか」


「それでも後半は『黒髭』を圧倒してましたが」


ベアトリクスは一戦を思い出し喋る。


「『金獅子』の後釜……次のミトゥルー連邦のアルティメット・ワンの座に就くのはきっと悠でしょう」


「うん…口には出さないが父もそう考えてると思う」


ラウラは最近のゴウラらしからぬ行動を思い出し顎に手を当て、答えた。


「くくく!きっと嫌がるであろうな」


「そーゆー肩書きは要らないって即答する姿が目に浮かぶもの〜」


「…いつも自分を控え目に謙遜してるのは従魔だけの力で強くなっていると思っているからかしら?」


「理想のバランスなのよ」


ベアトリクスの疑問にアルマが答えた。


「バランス?」


「従魔と契約者は一心同体……互いの絆と疏通が重要になるわ。繋がりが強まるほど力の同化は強まり、逆に従魔の意に逆らえば弱まるし従魔の意に従い過ぎれば支配される…いわば綱引きみたいな感じね」


「成る程…」


「悠は祟り神…いえミコトに信頼されてるわ。神と契約して自我を保ち、心身が崩壊しないなんてあり得ない話だもの」


四人は黙ってアルマの見解を静聴する。


「それはアイツだからこそなんだけど……自分ではちっとも分かってないでしょーね」


「…悠らしいかな」


「だから周りが支えたくなる…でしょ〜?」


手を合わせオルティナが微笑む。


「その通りだオルティナ」


「ええ」


「自分が理不尽に傷つき辛い目に合っても言い訳せず、他人のために必死になる……ミコトが力を貸すのもそんな悠が好きだからだと思う…僕も同じだもん」


ベアトリクスは目を細め、ラウラを凝視した。


「薄々勘付いていましたがラウラは…」


「うん…女だよ」


彼女に隠し切れないと判断しすんなり暴露する。


「そうでしたか」


驚愕はなくあっさりした反応だった。


「他言無用でお願いできるかな?」


「言い触らす卑怯な真似はしません」


以前では考えれなかったが十三翼(ラウラとベアトリクス)の関係にも良い方向に変化が表れている。


それは悠の存在があるからこそだろう。


「どんどんライバルが増えすぎて困っちゃいますね〜」


「ふん…射止めるのは吾だがな」


「わたしです」


「僕だよ?」


「私〜」


互いの視線が交錯し無言で火花を散らした。


「「「「……」」」」


「にゃひひひ!ほんっと見てて飽きないわ…あっ…一つ良い情報があるわよ」


「え、情報?」


「悠の寝室にはねーーーー」


アルマは嬉々として家主の隠したい秘密を洗いざらい、彼女達に話すのだった。


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