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マイホームは今日も賑やか ①

1月4日 午後18時35分更新

1月5日 午前7時30分更新




〜18日目 朝7時30分 龍神の水郷 ドラグマの神樹〜


翌日、準備を整え神樹の所に行くと既に皆が集まっていた。


「はっ…はっ…はくしゅっん!」


思いっ切りくしゃみをする。


「どうしたのじゃ?」


アジ・ダハーカが怪訝そうな顔で問う。


「いや別に…」


鼻がムズムズする……きっと昨夜、水に浸かって腰を冷やしたせいに違いない。


「この間も言ったがお前は意外と軟弱だな」


「…………」


原因の()()()は全く悪びれる様子なく言い放った。


「…我は正直、もっと居て欲しかったが仕方あるまい」


「うむ」


「また来るって約束したろ?」


「それもそうじゃな……かっかっか!その時は妾が悠の妻となり、夫婦の記念日になるじゃろうて」


アジ・ダハーカが声高らかに笑う。


「クックックッ…それは我かと」


「…あぁん?」


二人の間で激しい火花が散ってるような錯覚に陥る。


「私です」


「…ウェールズ?」


唐突な宣言にフカナヅチが戸惑った表情を浮かべた。

静かにはっきりと意思表明しウェールズは参戦したのだ。


「な、な、なっ…お、お主もか?」


アジ・ダハーカは驚いた顔で体を震わせる。


「アジ・ダハーカ様とフカナヅチを謀ってた訳では御座いません……仰ってた愛の意味…私はこいつが好きだと理解しました」


冷静に説明されて逆に俺が照れ臭くなった。


ーーまぁ…!


ーー愛ってなぁに?美味しいの〜?


ーーどーゆーこと?


ーー……お前達にはまだ早い話だ。


「まさかウェールズが……いや()()()()()か?」


フカナヅチが言う妥当の意味が分からない。


「己より他を尊重する想い…友情とは違う相手と寄り添いたいという感情……生涯を懸け(強さ)の真髄を学び得たいと思います」


愛は偉大とよく言うが大層な決意表明である。…果たして俺にそんな見合う価値があるか甚だ疑問だけど。


「……ここまでくると驚きもせんわ」


「だろ?俺も自分のモテ期にびっくりしてる」


場を和ませようと冗談めかし笑った。


「しゃーしゃーと暢気に言いおって……横っ面を引っ叩いてやりたいわ」


「左様……我も今の発言には苛々が募りました」


「…お前は空気が読めないのか」


あ、あれぇ!?余計に殺伐としちゃった…?


「は、ははは……今回は時間がなかったが水没した遺跡の調査が楽しみだなぁ」


話題と雰囲気を変えたくて喋る。


「それよりも告白の返事を忘れるでないぞ」


逃れ切れずUターンして戻ってきた。


「……はい」


「一つ忠告しとくが妾を選ばんと暴れるからな?」


「え、えぇ…!」


「我もだ」


「は?」


「……私も」


「ちょ!?」


せ、選択肢がねぇ!完全に脅迫だろ!!


「よぉーく考えて相手を選ばんと一生、後悔する羽目になるからのぉ…ふっふっふっ…」


アジ・ダハーカの不穏な笑顔がすっげぇ怖い。


「クハハハ」


「ふん」


怪獣大戦争を回避する方法はないだろうか…言い寄られる贅沢な悩みってゆーのも困ったもんだ。


……誰が乗せてくかで口論になりそうだったし、帰りはオルドに頼み竜の巣の転移石碑まで送って貰った。


道中、互いの身の上話で盛り上がったのは言うまでもない。



〜数十分後 龍神の水郷 ドラグマの神樹〜



悠がベルカへ帰った後、ウェールズとフカナヅチは稽古を再開した。アジ・ダハーカは戯れるオルタとオルカをあやす。


「悠と甘い蜜月を過ごす予定がご破産じゃったなぁ」


ーーふふふ…それは残念でしたわね。


「彼奴らも妾にああも向かってくるとは生意気……頼もしいと言っておこうかの」


汗を流し、鍛錬に励む二人を眺め苦笑する。


ーー私は嬉しいですわ。


「嬉しい?」


ーー情熱を滾らせ邁進するあの子達は頼もしい限りです。


「かっかっかっ!恋敵がいてこそ愛も燃え上がる、か……フカナヅチとウェールズは可哀想じゃが立役者じゃ」


ーーふふふ。


自分が選ばれないと微塵も考えていないのか自信満々である。


ーーアジ・ダハーカさまはおじさんが好きなの〜?


オルカが問う。オルタは髪で遊ぶのに夢中だ。


「お主がもっと大きくなったら語ってやろう」


ーーえ〜!


「かかかっ……む」


笑っていたアジ・ダハーカが怪訝な顔をする。


ーーどうかされましたか?


突如、目の前に紫色の水塊が出現した。


ーーこれは…。


「うむ…彼奴の幻影じゃ」


徐々に造形を変え、リヴァイアサンの顔が浮かぶ。


『やっほ〜!アッちゃ〜〜ん』


陽気で朗らかな大声が辺りに響き渡った。


「…何事ですか?」


「主?」


稽古を中断し二人も駆け寄る。


ーーす、すごーい!


ーーえ…み、水が浮かんで喋ってる…。


「幻影を寄越すとは何かあったみたいじゃな…一方的に伝えるだけで会話は成り立たんし静粛にの」


リヴァイアサンの幻影はそれから暫く一方的に喋り続けた。



〜数分後〜


『ーーんじゃ!ばいば〜〜い』


役目を果たし霧となって幻影は消えた。


ーー…あらあら…予想外だわ。


滅多に焦らないオルガも困った様子で呟く。


「……主」


「龍峰の同胞達に伝えなければ…」


フカナヅチとウェールズは緊張した面持ちだった。


「やれやれ…まーた面倒なことを言いおってからに」


アジ・ダハーカは溜め息を吐き、唇を尖らせた。


「他にも色々と話す良い機会ではあるか…オルガよ」


ーーはい。


「妾はちと九尾の所へ行ってくる」


ーーお気を付けて。


「フカナヅチとウェールズも留守を頼むぞ」


「御任せを」


「…一切承知」


「あ!他の者にはまだ言うでないぞ。余計な混乱は御免じゃ」


傅いたまま、二人は頷く。


「詳細を詰め、次の龍召の際に妾が皆に説明する」


アジ・ダハーカは空を見上げ苦笑し呟く。


「……魔王は姿なき今も健在じゃな」


後々、これが大騒動を招くとは誰も知る由はなかった。


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