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貞操を守り抜け!終

12月8日 午前7時35分更新

12月8日 午後12時28分更新




〜数分後 破壊された名もなき浮島〜


「ごくっ!ごくっ!」


ポーションを飲み火傷・裂傷・痣がたちまち癒えた。


「ぷはぁ〜…オルドもほら」


小瓶を差し出すと舌で器用に受け取り、噛み砕いた。


ワ、ワイルドだな。


ーーおぉ…!


瞬時に傷が塞がっていく。


ーーこうも回復が早いとは…ポーションとは凄いな。


「ふっふっふ!俺が作った特別なポーションなんだぜ?」


ーーほぉ…実に興味深い。


「よっと…これはまた随分と派手に暴れたのう」


アジ・ダハーカが岩を飛び乗り移動してきた。

フカナヅチとウェールズも続く。


「おー」


浮島の半分が水に埋もれ沈んでしまった。


「主の結界を瓦解させる奥義の衝突ですからね…正直、戦慄しました」


「ウェールズの言う通りかと」


散々たる光景を眺め二度とオルドとは戦いたくないってのが率直な感想だ。


……ガルカタより遥かに強かったぞ。


「して…悠は何故、あの術を使わんかったのじゃ?」


「あの術?」


「蛇憑卸じゃ」


「あれは無闇に使わないって決めてるから」


「ふむ」


禍面・蛇憑卸は反動とリスクが大き過ぎる。…使う度に心身を削る諸刃の剣なのだ。


敵わない相手や敵に発動すべきだろう。


「大切な友達に向けるべき力の矛先じゃない」


ーー…悠。


「かっかっかっ!父を想う子の声を無碍に出来ぬか…其方は本当に馬鹿みたく優しいのう」


アジ・ダハーカが微笑む。全部お見通しってか?


「…何のことかさっぱり」


「あんな下手くそな演技をしといてまだ惚けるか?この照れ屋さんめ」


下手くそ?アカデミー賞もんの名演技だろ。


「そ・れ・に〜……約束は覚えとるな?」


「あ」


や、やばい!すっかり忘れてた。


「如何な理由があろうと負けは負け…ぐへへ…今宵が楽しみじゃのぉ〜」


「クックック…左様かと」


極悪な笑みを浮かべる二人の眼差しは鋭い。


お、俺の貞操が大ピンチィ!


ーーアジ・ダハーカ様。


「ま、まぁ妾も初めてじゃし優しくせんと怒るぞ……ってどうしたのじゃオルドよ?」


ーー…勝負は私の負けです。


「「!?」」


厳かな態度と静かな口調でオルドは喋る。


ーー悠が最初から倒すつもりなれば、惜しまずアビリティを使い我を圧倒する事もできたでしょう。…それに、決着寸前で見せた敗北を厭わぬ義心…真に強き友の器の大きさに感服しました。


「じゃ、じゃが勝負の世界は結果が全てじゃし…」


アジ・ダハーカはしどろもどろに指を突き合わせる。


ーー()()()()()敗北を認めるのが友への礼儀かと。


「む、むぐぐ」


そんな歯軋りせんでもええやん!


…龍峰の長として従者の潔い敗北宣言を認めたい気持ちと自身の欲求が鬩ぎ合ってるのが伝わってくる。


ーーこの際、引き分けで宜しいのでは?


見兼ねたオルガがにこやかに会話に混ざる。


ーー引き分けも何も私の敗北だと言っているのだ。


ーー少し黙ってて下さる?


ーー……だが。


ーーあなた?


ーー………。


り、竜の世界でも妻は強し!


「引き分けでは意味が…ぶつぶつ…」


煮え切らず口を濁すアジ・ダハーカにオルガはそっと耳打ちする。


「!…ま、誠か?」


ーーええ…是非、試して下さい。


何を喋ったんだろう。


「こほん!うむ…此度の勝負は引き分けにしとこうかの」


「…アジ・ダハーカ様?」


「妾とフカナヅチも強引過ぎたし折角、帰郷した悠が嫌な思いをするのはお主も嫌じゃろ?」


「それはまぁ…はい」


…急にめっちゃ素直になったな。


「でも離れておるのは寂しく温もりが欲しくなるがの…」


「……」


「片想いとは切ないものじゃ」


そんな哀しい顔すんなよ……あーもーー!


「…一緒に寝るだけだぞ」


「!」


「え…」


「変なことをしたら速攻、帰るからな?」


「も、もちろんじゃ!ふみゅーーい!!」


両手を挙げ喜ぶアジ・ダハーカを横目に溜め息を吐く。


つくづく俺も甘いっつーか…あんな表情されたらなぁ?


「どんな心境の変化か知らんが我も良いのだな?」


「ああ……でも条件がある!」


「条件?」


「フカナヅチは龍人変異を解いてくれ」


怪訝そうに眉を顰め首を傾げる。


「お前は龍の姿の方が好みなのか?」


「フカナヅチは見た目が完璧、大人だし理性が保たん」


「ふむ…つまり我の変異した姿の方が主より興奮すると?」


冷静に分析して質問するのは止めて欲しい。


「まぁ…アジ・ダハーカは子供体型だから」


小声で肯定すると目を細め笑う。


「クックックッ…そうかそうか…主より興奮するか!それは仕方ないな?」


「かかかか!気分が良いのう〜」


「……」


ご機嫌な二人をウェールズは無言で眺めていた。


ーー……アジ・ダハーカ様に何を言ったのだ?


ーーあら…特別な助言はしてないわ。只、殿方は強引に押すより一歩、引いた方が()()()()と囁いただけよ。


なんやかんやあったが貞操は守り抜い……のたかな?


さてと一段落したし、ゆっくり羽を伸ばすか!前回は行かなかった場所も見て回りた……およ?


「オルドの体から鱗が剥がれ落ちたぞ」


銀に輝く綺麗な鱗を拾う。


ーーこれは竜王降誕を発動し魔力の循環が良くなったせいだ。


「ほうほう」


ーーより頑丈な鱗へと生え変わり、堅固となる。…これを貫いた悠の剣と腕力は相当なものだぞ。


サメの歯みたい……あ!マリーさんへ良い手土産になるかも?


「この鱗を貰ってもいいかな?」


ーーお前が欲しいなら幾らでもやろう。


ラッキー!


周辺に落ちてるオルドの鱗を拾い集める。


ーーまぁ…悠は鱗が欲しいの?


「ああ」


オルガが前脚の鱗をニ、三枚剥がし口に咥える。


ーーはい。私のもあげるわ。


「え!?何も無理に剥がさなくても…痛くないか?」


ーーうふふ…大丈夫よ。


ーー…宝は要らないのに鱗を欲しがるとは面白い。


「変な奴じゃのう」


「…人は龍や飛竜の牙や爪を武具へ変えるが目的はそれか?」


ウェールズの双眸がきつく細まる。


「いや違うよ」


「では何故だ?」


「それはーーーー」


俺はマリーさんのことを皆に説明した。



〜数分後〜



「酔狂な人の子もいるもんじゃなぁ」


ーー…中々、面白い奴だな。


「彼女はその方法を毎日、模索中で俺も手助けがしたいと思ってる」


「……」


「モンスターを知ることが共生への第一歩ってことだ」


理解して貰いたいなら相手に理解を示す…それがコミュニーケーションの基本!


ウェールズは眉間に皺を寄せた。


…彼女は複雑な心境に違いない。


「淡い夢物語だがな」


フカナヅチはシビアな口調で喋る。


「…叶わないかどうかは分からないだろ」


「言葉の壁と価値観の違いをどう超える?」


「……」


「竜人族のように太古より魔物と言葉を交わせる種族は極僅か…問題を挙げれば山より高く積み上がるぞ」


間違ったことは言ってない。至極、正論である。


「それでも俺は応援するよ」


「やれやれ…頑固者め」


可能性は限りなく零に近くても素敵な夢だと思う。


アザーの加護がなければ俺と皆との出会いも違った未来を迎えただろう。


奇跡ってのは小さな努力の積み重ねなんだ。


諦めるのはいつだってできるさ。


「かっかっかっ!まぁ論ずるより大事なのは行動…無謀な夢こそ挑み甲斐もあるじゃろう」


アジ・ダハーカが腕の鱗を一枚、剥がした。


「どれ、特別に妾の鱗も其奴に恵んでやろうかの」


「主がそう仰るならば……否定はしたが数々の難題に応えたお前が語ると信じたくなる」


二人からも鱗を受け取った。


「…ふん」


ウェールズもぶっきら棒な態度で赤い鱗を手渡す。


「ありがとう!きっと喜ぶと思う」


生きた飛竜と飛龍の鱗……貴重な素材だし彼女の研究に役立つと嬉しいなぁ。


陽に翳すと鱗に光が反射し綺麗に輝くのだった。


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銀星竜の竜鱗×1

・竜脈が充ちた竜鱗。

金星竜の竜鱗×1

・竜脈が充ちた竜鱗。

嵐飛龍の龍鱗×1

・龍脈が充ちた龍鱗。

炎陽龍の龍鱗×1

・龍脈が充ちた龍鱗。

煌星龍の龍鱗×1

・龍脈が充ちた龍鱗。

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