龍神の水郷、再び!③
11月20日 午前8時30分更新
「ふぅ…最初は慣れなかったが人の身も悪くないものだ」
ブラウンカラーでショートヘアの褐色美女に変身したフカナヅチが喋る。
アジ・ダハーカと同じく恥部や胸は鱗で覆われてるが決定的な違いがあった。
…それは、おっぱいとお尻の大きさ!オルティナ級の爆乳じゃん。
「…私はあまり好かないがな」
ウェールズは反対に色白美人だ。腰まで届く炎のように赤いロングヘアでスレンダーな体付きである。
「なんじゃ?」
結界の外にいるアジ・ダハーカと二人を何度も見比べる。
「…女の子…いや雌だったのか?それにアジ・ダハーカみたく子供じゃないぞ」
「ほほーう…この愛くるしい容姿に何ぞ不満があるか?」
「不満ってより不思議なんだよ」
「アジ・ダハーカ様と我らでは器が違う」
器?
「飛龍の寿命は精々、数百年程度だが煌星龍である主は千年を超え生きる」
「せ、千年!?」
「まだ成長途中というわけじゃ!いずれ妾の胸と尻もあのよーに膨れよう」
途方もない話で笑えてくる。
「…よもやお主、正妻を前にフカナヅチとウェールズに目を奪われた訳じゃなかろうな?」
「いやだってなぁ…」
半裸の美女を見て嬉しくない男がいるか?
答えは否、だ!
「古来より浮気は大罪じゃ。だらしなく鼻の下を伸ばしとると目玉を抉りとる」
「お、お前は鬼か?」
ジト目で物騒なことを言い出しやがった。
「クックック…さて厳風・雨晒し」
「ソーリス・ルクス」
フカナヅチは風を纏う双剣を…ウェールズは炎を宿す大剣を構えた。
「!」
二人が放つ龍の魔圧は猛々しく脅威的である。
「言うておくが龍人変異は飛龍の奥義の一つじゃ」
「奥義?」
「うむ…格を高めた飛龍は強い」
「……」
「かかかっ!前と同じと思うてると痛い目に遭うぞ?」
「俺だって前とは違うさ」
「…むっ」
魔圧には魔圧で対抗ってな。
「…漆黒に塗り潰す強者の圧…体が震えるなウェールズよ」
「私は経験済みだ…」
二人の頰に冷や汗が伝った。
「いくぜ」
手合わせ開始っと!
〜10分後〜
肩で息をしつつ額の汗を拭う。
「ぜぇ…ぜぇ…な、何とか面目は保ったってとこか」
片膝を突くフカナヅチとウェールズを横目に呟く。
「…流石…だな」
「桁外れの速度に…何より一撃一撃が重過ぎる…こうまで差があるとは」
「差?俺もいっぱいいっぱいだっつーの」
吹き荒れる暴風と焦がす灼熱の炎の攻撃を回避するのに必死だった。
「精進が足りぬこそ湧き水が如く意欲も充ちる」
「…次は勝つ」
意気揚々とウェールズは立ち上がった。
「もう勘弁してくれ…ほい」
フカナヅチに手を差し伸ばす。
「うむ」
目の前で上下に揺れるおっぱいに頰が弛む。
「どうかしたか?」
「うへへへ……はっ!?い、いや別に」
「ふむ……我の龍人の姿はどうだ?」
「…うーん…目のやり場に困るかな」
「目のやり場?どういう意味か分からぬ」
半裸でエロいっては言えないし褒めておこう。
「えーっと綺麗だってことさ」
「!…クックック…そうかそうか」
ご機嫌な様子で尻尾を振るフカナヅチだった。
…ってゆーかスタミナ回復が早いな。龍の特性だろうか?
「……成る程のぉ〜」
アジ・ダハーカが結界を解除し近付いて来た。
「強敵との戦闘を経験しLvも上がり洗練されとる…水郷を発つ時と比較にならんのぅ」
閉心は解除してないのに見ただけで察する辺りが凄い。
「まあな」
「どれも勝つに容易い相手ではなかったろう?」
「一度、叩きのめされて負けてるしな」
「悠がか?」
フカナヅチが顔を顰め問う。
「その人にはかなり手加減されたけど敵わなかった」
「ほほぅ」
アジ・ダハーカの双眸が細まる。
「龍を凌ぐ才ある者か…あの船で見た女もそうだったが油断ならぬな」
「…ふん」
ウェールズは面白くなさそうに鼻を鳴らす。
「強くなれば強くなるほど頂は遠去かるものじゃ」
俺より強いアジ・ダハーカが言うと説得力がある。
「だな……ん?」
陽の光を背に空を優雅に飛ぶ四匹の飛竜は…おぉ!
「おーい!おーーい!!オルド〜!オルガ〜!」
俺は笑顔で目一杯、手を振った。
「うぉ!?」
どさ、どさ、っと大量の獲物が空から地面へ落ちる。
あ、危ねぇ!
慌てて肉塊となったモンスターの死骸の雨を避けた。
…これ全部、狩ってきたのか?
見たことない種類のモンスターだな……トロールとか二足歩行系のモンスターも混じってるし。
翼を畳み急降下して来たオルドとオルガと対面する。
ーー悠!
ーー…久しぶりだな我が友よ。
「二人とも元気そうだな」
ーーふふふ…貴方もね。
オルガが顔を擦り寄せ顔を舌で舐める。
わっぷ!飛竜の挨拶かな?
ーーまた見違えるように立派になって……もうあの頃とは大違いだわ。
「そんなに褒められると照れるぜ」
ーー…謙遜するな。充実した気力と魔力は嘘を吐かん。
「色々とあってな」
ーー…とにかくおかえりなさい。
ーーお前の帰郷を心から嬉しく思うぞ。
おかえり、か。…俺にとっちゃ此処は第二の故郷だ。
再出発のスタート地点でもあるしな。
「獲物の調達、ご苦労じゃった。妾も礼を言うぞ」
ーーいえ…娘と息子に狩りを学ばせるいい機会でした。
「うむ」
「オルカとオルタは大きくなったのか?」
ーーええ!やんちゃで悪戯好きで手を焼いてるわ。
ーー…オルタ!オルカ!
オルドが叫ぶと二匹の子竜が仲良く空から降りて来た。
ーーお母さ〜ん…ぼくお腹空いた〜…ご飯食べたい。
父親に似たオルタはワイバーンより大きくなっていた。
ーー…お父さん!オルタってばわたしの尻尾をまた噛んだのよ!?
反対にオルカは母親にそっくりだ。
ともに金と銀に輝く美しい飛竜に成長しているがまだ雛だった頃の面影が残ってるな……懐っこく可愛かった記憶が鮮明に蘇る。逆誄歌で寿命を犠牲に、助けたオルタの元気な姿を見て涙が溢れそうになった。
あの選択は絶対に間違ってないと再び確信する。
ーー喧嘩しないでちゃんと挨拶なさい。
オルガに促され二匹が俺に気付き驚く。
ーー…うひゃ!?つ、翼も尻尾も生えてない変な生き物がいる…あれが人?
ーー……ぐるるるるぅ!
オルタは怯え母親の背に隠れオルカは警戒し鱗を逆立て唸る。
…俺を覚えてなくて当然、か。
ーーこら!悠はオルタの命の恩人よ?失礼でしょ。
ーー………。
ーー…彼は種を超えし同胞で人の家族…オルカもオルタも匂いを嗅げばきっと思い出すだろう。
ーーお父さん…?
「いや、気にしなくていいぞ」
内心はちょっとショックだけど致し方ない。
「心配せずとも大丈夫じゃ。ほれ、右手を差し出してみよ」
「…右手を?」
アジ・ダハーカに従い、右手を前に出す。
二匹が恐る恐る近付き掌の匂いを嗅いだ。
ーーあっ!
ーー…この匂い覚えてる…?
オルタとオルカは鼻を鳴らし俺の体を弄り始めた。
あ、ははははは!く、擽ったいぞ。




