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龍神の水郷、再び!①

11月17日 午前8時15分更新



〜三日後〜


帰りはスムーズで快適な船旅となった。


モンスターや空賊に襲われることなく、ザイガナハルで物資を補給しボーガン町の飛行場を目指す。


〜百合紅の月28日 午前9時40分 東モルト山脈 上空〜


「…フィンが俺を失脚させたい?」


「ええ」


甲板でベアトリクスの説明を聞いた俺は間を置き返事をする。


「そっか…」


「無垢なる罪人と鷹の目が結託し『金翼の若獅子』で最大規模の派閥となった」


「……」


「『瑠璃孔雀』は明確に貴方を敵視しているわ」


「それでラウラとエリザベートが…」


「その通りです」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『留守の間は僕が責任を持って家を守るからね』


『くっくっく…右に同じく』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


色々と合点がいった。


「…今日まで黙ってたのは」


「分かってるさ」


出発前に聞かされたら平常心を保つのは難しかった。

皆の気遣いや配慮に怒るってより寧ろ感謝してる。


アルマという最強のセ○ムが完備された我が家にラウラとエリザベートが加われば鬼に金棒だ。


「うーん……フィンは俺が嫌いなのかな」


「嫌いというより嫉妬でしょう」


「嫉妬?」


「男の嫉妬は厄介ですから」


どこに嫉妬する要素がある?


「まぁ…俺の家族と友達に手を出せば許さない」


柵に肘を突き呟く。


「最大規模の派閥だろうがぶっ潰す」


「案じずとも膨れた風船は破裂するだけですわ」


隣にいるベアトリクスは遠くの景色を眺め答えた。


「『瑠璃孔雀』は十三翼の大半を敵に回し『貪慾王』も留守で援護が望めない厳しい状況だもの」


「ユーリニスが留守?」


「ええ…ベルカを離れ諸外国を巡ってるそうよ」


「…ふーん」


「彼が無垢なる罪人をどんな魂胆で預けたか知りませんが次の運営会議でフィン・マクールは間違いなく糾弾されるでしょう」


「その運営会議っていつだ?」


「四日後ですわ」


四日後…向日葵の月の1日か。


ユーリニスは諸外国に何の用事があるのだろう。


…悪巧みしてなきゃいいけどな。


「悠のSSランク昇格も会議で『灰獅子』が発表するでしょう」


「……SSランクかぁ」


「嬉しくないの?」


「あんまり」


なんかこう…駆け足過ぎて実感がいまいち湧かない。


「くすっ…難度が極めて高いSランク依頼を複数達成した者が厳しい審査を経てやっと辿り着くGRなのに」


「俺はまだまだ未熟者だ」


「謙遜が過ぎるのが悠の悪い癖ですわ」


「むぅ」


「他者の評価は素直に受け止めなきゃ駄目よ?」


膨らませた頰を人差し指で突っつかれた。


「ふぁい…」


「うふふ」


「…とりあえず今は帰ってゆっくりしたいな」


「そうですわね」


「ラウラとエリザベートも家に居るならベアトリクスも寄って夕飯でも食ってかないか?」


「最初からそのつもりですわ」


最初から……え、そうなの?


「アイヴィーに大事な用がありますの」


「大事な用?」


「全くの私事ですので気になさらず結構」


…プライベートでベアトリクスがアイヴィーに?


「それにライバルにアドバンテージを……む」


「どうした?」


「…あの一帯だけ異様な雲行きです」


「本当だ」


船の進路方向に暗雲が広がっていた。…異常気象だろうか?


「徐々に此方へ向かって来るわ」


船員達が船上を慌ただしく動き始めた。



〜数分後〜



「最悪だ」


唐突な暴風に襲われフライングメアリー号の航空士ベンノは青褪めた顔で一言呟く。


「総員戦闘準備……かなりの強敵よ」


ベアトリクスが隊員に命令を下す。


「ありゃ飛龍(ドラグーン)じゃねーか…?」


「最後の最後にあんなモンスターが待ってるなんて…もう終わりだぁ…殺される…!」


「龍峰から外れたルートなのになぜ…」


ダッチマン船長と船員達が項垂れ絶望を口にした。


「悠も戦闘準備を……悠?」


皆が緊張し空気がひりつく中、俺は()()()()()()


「大丈夫!武器を下ろしてくれ。あの飛龍は俺の友達だ」


「と、もだち…?」


「…クロナガさん?」


船首に立ち大きく手を振る。



「おーーーい!!フカナヅチ〜〜」


ーー…クハハハ!久しぶりだな悠よ。



陽の光を反射し鋼色に輝く鱗…三本の立派な角…翼をはためかせ行手に現れたのは嵐飛龍フカナヅチだった。


「元気にしてたか?っつーか何でここに?」


ーー小童(グラン・ヒューリィ)に我の龍玉を持つ不思議な人間と出会ったと聞いてな。そんな人間はお前しかいない。


ご機嫌な口調でフカナヅチは喋る。


「なるほど」


ーー暫くこの地を飛び回り捜していたのだ。


「俺を?」


ーーうむ。龍神の水郷へ行くぞ。


「…またえらく急なお誘いだな」


ーーアジ・ダハーカ様にも既に報告済みでお前を待ち侘びてる……そんな小蝿の船に乗らずさっさっと我の背に乗れ。


「うーん…家に帰る途中なんだがなぁ」


ーー…引き摺ってでも連れて来いと命を受けている…逆らえば龍の大群を率いて人の里も滅ばさん勢いぞ?


「拒否権がねぇ!?」


そんなん辺り一面が焼け野原じゃんか!


ーー我もお前に会えて嬉しいのだ…さぁ背に乗れ。


…まぁ龍神の水郷は時間の経過が緩やかだし一日でも…えーっと滞在期間は約18日か?


俺も久しぶりに皆に会いたいし寄り道して帰るか!


「ベアトリクス」


ーー…む?


「悪いが一日だけ帰るのが遅くなるって家の皆に言っててくれ」


「…何処へ行くつもりですか?」


「少し龍峰へ寄り道してから帰る」


「龍峰へ寄り道とは?…それにその飛龍は私を睨んでるように見えます」


ーーこの者は強いな…して何故か()()()気に食わん。


互いに睨み合うベアトリクスとフカナヅチだった。


「あーもー!ほら…これでいいだろ」


フカナヅチの背に飛び乗る。


「よっと…アルマにそう言えば伝わるからさ」


「…あとで詳しい詳細を聞かせて貰いますよ?一日過ぎて戻らなければ討伐隊を編成し龍峰へ救出に向かいます」


ーー討伐隊だと?矮小なる無礼者め…口の利き方に気を付けろ。我が力の片鱗を見せてやろうか?


「喧嘩すんなっちゅーに」


ぺしぺし、と背中を叩きフカナヅチを諌める。


ーーふん…。


「……」


「じゃまた明後日なーーーー……ってわぶぅ!!」


物凄い速度で上空を旋回し飛ぶフカナヅチの背に必死に掴まった。


…空中ジェットコースターはやめてくれぇぇ!


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