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追撃の蛇と薔薇 〜苦痛の山〜 終

10月15日 午前8時25分更新

10月15日 午後12時50分更新



ーー朝は四本足…昼は二本足…夜は三本足…神がこの生き物に与えた名を答えよ…。


「!」


これってなぞなぞだよな?

しかも地球でも超有名なやつじゃん!


ーー…第三の試練に血生臭い闘争は不要……質問の正解を答えれば大聖堂へ進む道を授けます…。


メンデンは焦り悩んでいた。


「朝は四本足で昼は二本足って…変態する生物?可能性があるとすれば……」


「メンデン!答えは…あれ…おーい!」


様子が変だ。俺の声が聴こえてないのか?


ーー無駄です…一つの問いに回答者は一人…彼女に皆さんの声は届かず動きも見えません。


「ま、マジ!?」


「…非常に強制力の高い妨害効果を発揮してる。質疑応答が発動条件を複雑にしたアビリティかスキルのキーポイントでしょう」


ベアトリクスは冷静に解説した。


ーー…さぁ答えを。


「わかった!答えは軟体種のモンスターだわ」


あぁ…そーゆ発想になっちゃったか。


ーー…不正解…沈黙せよ。


「これは…!」


光が反射する透明で丸い膜がメンデンを覆う。


ーー間違えれば聖堂へ歩む資格は剥奪…何人の仲間と一緒に進めるか…それはあなた方次第です。


や、やばい…安直に考えてたが戦闘より厄介だ。


ーー…若き騎士の男よ…朝は四本足…昼は二本足…夜は三本足…神がこの生き物に与えた名を答えよ…。


「次は俺!?」


答えを教える前にサイトとセバスチャンが連続不正解。


虚しくも閉じ込められた。


ーー…気高く強き薔薇の騎士よ汝に問う。


四人目はベアトリクスだ。


ーー朝は四本足…昼は二本足…夜は三本足…神がこの生き物に与えた名は?


「人ですわ。一日を一生になぞってるのでしょう?」


おぉ即答だ。


ーー…正解…。


「ナイス!」


冷静沈着な彼女は見てて安心できる。…そもそも俺より頭の回転が早い。


ーー百万人を殺しても許される…しかし一人を殺せば罪に問われる……それは何故?


「答えは戦争よ。敵国民を殺せば英雄と称えられ自国民を一人殺せば殺人罪に問われるわ」


ーー…正解…。


ーー……心を無くすと変わるもの…心を足せば変わるもの…それは何か?


「心を無くせば受…心を足せば愛…違いますか?」


ーー…正解…次が最後の問い…この質問だけ()()()()()を認めます…。


「分かりました」


次々と解答していくベアトリクスなら大丈夫。


きっと俺に順番は回ってこないだろう。



ーーこの世の遍く命…善人も悪人も神が定めし命の価値は平等か…それとも否か?



アイリスの最後の質問が俺の苦悩を再び掘り起こす。


…すっごいピンポイントでキャッチーだな。


「否ですわ」


ーー………。


「堕落し他人を貶め暴力で傷付ける卑劣な悪人と心優しき善良な者の価値が平等?…愚問よ」


毅然とした態度と口調で言い放つ。


「命の価値は公平ではない。悪党は鼠の吐瀉物にも劣る下劣な存在です」


暫し間を置きアイリスは答える。


ーー…不正解…あと一回…。


「!?」


そうなると平等が答えだよな?


ーー…この世の遍く命…善人も悪人も神が定めし命の価値は平等か…それとも否か?…さぁ答えを…。


ベアトリクスは腕を組み悩む。


「…ならば消去法で平等を選びます」


ーー………残念です。


再び訪れた静寂は否定の言葉で破られた。


ーー…不正解…沈黙せよ。


嘘ぉ!?どっちも違うのかよ!


「…くっ!不覚ですわ」


透明な膜でベアトリクスは包まれてしまった。


資格を失った四人…残るは俺一人か…。


ーー…貴方は契約者ですね…人の領域を超越せし存在…!…いえ…まさかそんな…もしや神と…?


「……」


ーー…沈黙もまた答え……理外の契約者よ汝に問う…この世の遍く命…善人も悪人も神が定めし命の価値は平等か…それとも否か?


平等じゃないが平等でもない、か。


哲学的な問題で頭が痛いよぅ…まぁ…当たってるかどうか微妙だが俺にはこう言う他ない。


「正解はない」


「「「「!?」」」」


ーー…正解はない?


「命は誰にも価値が決めれない唯一のものだから」


ーー………。


「善悪はコインの裏と表で見方を変えればどちらか一方には正義が悪で悪が正義だ」


四人が複雑な表情で俺を見ていた。


「どちらも俺は選ばない…間違ってても自分が信じる価値観を信じたい。迷い悩み苦しんで……責任を背負って生きていくのが人生だから」


ーー…それが答えですか。


「うん」


アイリスは目を綴じ呟く。


ーー貴方の答えは正しくもあり……()()()でもある。


「……」


ーー…しかし私は漸く…()()()()()を…長い年月を経て見つけてしまった…この直感を信じましょう。


「!」


ーー……名前を教えて頂けますか?


「黒永悠だ」


ーー…黒永悠…第三の門番アイリス・ソラールが認めます……()()の資格者として…大聖堂へ行きなさい。


「ああ!」


何もない空間に白い扉が出現した。


彼女は元の姿に戻り四人を閉じ込めた膜が割れる。



〜数分後〜



「行ってくるぜ」


白い扉の前に立つ。


「気を付けて…此処で帰りを待ってます」


「おー!守護者を倒して秘宝もゲットしてくるよ」


「ええ」


「俺たちも信じてますから」


「だな」


「無事を祈ってますね…」


皆の信頼と期待に必ず応えてみせる。一度、失敗しミーシャを相手に失態を晒したが同じ轍は踏めない。


ん〜…手加減も同情も必要ない敵ってのは気分が楽!


ドアノブを回し開くと暗闇の中へ吸い込まれた。



〜同時刻〜



扉が閉じて悠が消える。


ーー彼が心配ですか?


「……」


ーー…私とゲイルは守護者に敗れました…あれは強さを超越してます…どんな魔法も技も太陽神に授かった奇跡でさえ通じない…理から外れた存在なのです。


「…今、分かったわ」


彼女の言葉を傾聴しベアトリクスは悟る。


「最初から悠以外を行かせるつもりはなかったのね?」


「え…」


「そうなのか!?」


ーー……やはり聡い…素晴らしい観察眼です。


アイリスは静かに語った。


ーー()()()()()()()に守護者は倒せません……彼の中に守護者を凌駕する存在…神との強い絆を感じました。勝利する可能性があるのは黒永悠だけでしょう。


「神との絆?」


「クロナガさんは契約者だけど…?」


「……」


ベアトリクスだけは真実を知っている。


ゆえに沈黙を貫いた。


ーー…それにしても彼は不思議な人ですね……初対面なのに期待しあの背中に希望を託したくなる…きっとゲイルも同じ気持ちだったと思います。


「ええ…悠は必ず約束を守ると断言するわ」


アイリスへの気休めではなく彼女の本心がそう答えさせた。


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