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追撃の蛇と薔薇 〜苦痛の山〜 ①

10月3日 午後20時20分更新

10月5日 午前6時21分更新





〜百合紅の月23日 不朽の地下墓地 天秤の祭壇〜


体調は万全!…とは言い難いが回復した。寝不足気味だがダンジョンのキャンプで贅沢は言ってられん。


いよいよ最後の魔窟……黒髭との決戦も近い。


支度を整え水色の転移石碑から苦痛の山へ移動した。



〜午前4時10分 苦痛の山 パッションロード〜



肌を刺す冷たい突風…雲の隙間から見える小さなリグレッド城…これはアジ・ダハーカの龍峰以上の標高だ。


高所恐怖症ならば卒倒する絶景が広がる。


「…変だな…妙に息苦しくて頭が痛い」


「酸素が薄いせいじゃないか?」


「いや…HPとMPが徐々に減ってるわ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

HP410000 /410000 MP21000/21000

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステータス画面を確認したが俺は問題ない。


「これは枯渇と『奪力』の状態異常だ…!」


「マジ!?」


「文字通り苦痛を伴うダンジョンね」


冷静にベアトリクスは喋る。


「スリップダメージでこのままじゃ倒れちゃう…」


「…ただでさえ足場が脆い道を歩くのに…」


前方には歩幅がない山道が続いてる。踏み外せば間違いなく落下死だ。


「ポーションを飲め!」


急いで超特製エックスポーションを四人に渡す。


「慌てないで」


「だ、だって」


「我々に清純なる癒しを与えよ…リカルネーション…そしてマギネーション」


ベアトリクスが魔法を発動させた。


緑色の霧雨が四人を濡らす。


「継続回復の魔法よ。スリップダメージに対抗できるわ」


「おぉ」


なんて頼りになるんだ!


「助かった…」


「マスターのお陰で落ち着きましたよ…」


「わたし程度の回復魔法では数分しか持たないわ。都度詠唱が必要になるでしょう」


程度って…十分じゃね?


「さっさっと抜けて安全な場所に移動しようぜ」


マップを開くとメッセージウィンドウが表示された。


ーースキル『鋼の探究心→鋼鉄の探究心』に変わりましたーー


「!?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

固有スキル

『鋼鉄の探究心』

① 鋼の探究心に複合されたスキルが網羅され最大限の効果を発揮できる探究者の超希少スキル。

②各種効果が向上し罠と隠し通路の表示機能が追加されマップの開拓範囲が大幅に増加。

③採取・採掘ポイントで獲得可能な希少アイテムを必ず発見し最大限入手する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


鋼の探究心より鮮明で立体的なマップだ。


ばつ印の罠マークが表示され隠し通路は紫の囲いに覆われ点滅する。経験を積み重ね最高のタイミングで新たなスキルへ変貌してくれた。


……やっふーーーー!!


スキップして喜びを全身で表現したいが今は我慢だ。


しかし…モンスターは少ないが罠の数が尋常じゃない。


よもや苦痛の山が罠そのものなのか?


山道を進むと安全地帯へ繋がる隠し通路があるな……一先ず此処を目指そう。


急ぐ必要があるしここは頑張るぞい!


淵噛蛇を発動させた。


「狭い道を一列に並んで歩くのもきついし四人を抱えて一気に突っ走る」


「飛ぶつもりじゃ…?」


リグレッド城の一件で警戒してるのかサイトの顔が引き攣っていた。


「大丈夫!目を瞑って身を任せてくれ」


両脇は崖だしぶつかる心配もない。


「ええ」


「…わかりました!クロナガさんを信じるわ」


「……開けろって言うまで綴じてます」


「俺も…」


右腕を上げ黒蛇をしっかり巻き付かせた。左右で持ち上げ浮く四人に向け頷き前に出る。


…横風も強いし躊躇して止まったら駄目だ。


右足を引き力を蓄える。


「ーー行くぞ」


短くそう告げると一気に駆け出す。土は抉れ岩を砕き風に攫われ次々落下していく。


「うわぁぶっあ!」


「……きゃーー!!」


「お、お母さーーーーん!!?」


三人の悲鳴が聴こえた。


猛スピードで疾走しても周囲を観察する余裕はある。


…新幹線の中と外じゃ味わう体感速度が違うのと同じ感覚かな?


しかし誤算があった。


俺の脚力にか細い道が耐え切れず崩壊し始めたのだ。


「クロナガさん!?…み、み、道がぁ…く、崩れてます!!」


「ああ!もう戻れないな」


メンデンの叫び声に答える。


「悠」


「…なんだ!?」


黒蛇に掴まれ宙に浮き超高速で移動しててもベアトリクスは三人と違い平然としていた。


「あの壁…この先は行き止まりなのでは?」


「だな!」


「だな!?い、行き止まりに向かってるの?」


別れ道はとうに過ぎ来た道は瓦解した。戻る事は叶わない。


目の前の聳え立つ山壁が隠し通路の入り口だ。


このままじゃ激突は免れないな。


「ベアトリクス!あの壁を壊せるか?」


「任せなさい」


ローズオブメイを振り被り上半身を捻る。


「ふぅ……棘剣ローゼン・デストラクシオン!」


真横一直線に強烈無比な斬撃が放たれ障害物を破壊する。


「おっと!」


轟音と共に頭上に降り注ぐ土砂物の雨を潜り抜けジャンプして暗闇の中へ飛び込んだ。


〜午前4時14分 苦痛の山 秘密の抜け穴〜


飛び込んだのは良いが真っ暗闇で何も見えん…。


「…全員無事かぁ!?」


「は、はい」


「…生きてる…あ、あれ?目を開けたのに真っ暗だ!」


「……また漏らしそうになったぜ」


メンデンとサイトとセバスチャンの声だ。


「ベアトリクス!ベアトリクスは!?」


「大丈夫よ。直ぐ傍にいますわ」


「…ほっ…良かった」


気配を頼りに手探りで左手が壁に触れる。


ん?右手には硬い何かが……なんだこれ?


撫で回すと少し丸みを帯びた金属プレートっぽい。


「…ゆ、悠…あの」


「どうかしたか?」


「ちょっと待って下さいね」


セバスチャンのランプの魔法で周囲が照らし出された。


「……」


「……」


冷や汗が背中をだらだら流れる。壁ドンの体勢でベアトリクスの胸部プレートを弄っていたのだ。


道理で硬いわけだよ…傍目には急に発情した変態野朗に見えるだろう。


「…クロナガさん?」


「その…この切迫した状況でマスターに興奮して迫るのは…我々の立場としては非常に複雑で……」


「俺は何も見てないぞ…」


「ご、誤解だ!?わざとじゃない!」


慌てて手を離した。


「…仕方ありませんわ」


ベアトリクスが咳払いしマントを払う。


さぁフォロープリーズ!


「強い雄は生存が危ぶまれる事態に陥ると自らの種を残そうと性的欲求が昂まる……()()()()と交配するチャンスと本能のまま行動してしまったのでしょう」


「こ、この極限化で発情?…凄い」


「男として尊敬するな…」


これフォローちゃう!!止めを刺しにきとるやん!


「誤解だっちゅーにぃ!?」


「……」


メンデンの軽蔑するような眼差しが痛かった。


〜数分後〜


弁明も徒労に終わり山頂を目指して再び歩き出す。


「それにしても…よく秘密の抜け穴が分かりましたね?」


「スキルのお陰だ」


「蟻の探検家もクロナガさんには敵わないだろうな」


「悠が今回の依頼に同行しなければ悲惨でした」


「…考えただけでゾッとします」


「鉄騎隊も更に能力を磨き成長する必要があるわ」


「いざって時に何が役に立つか分からないからな」


この抜け穴は山頂手前に繋がってる。

大幅な近道で奪力と枯渇の状態異常に悩まされる心配もなく採取ポイントが豊富だ。


ボーナスルートってか?…逆にあのまま登ってれば相当な苦労だったに違いない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・採取アイテム

秘峰キノコ×5

秘峰苔×5

秘峰蘭×4

百年無花果×3


・採掘アイテム(鉱石)

秘峰石×10

剛銅鉱石×5

聖鉱石×3


・採掘アイテム(宝石)

ペインモンドの原石(大)×2

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