追撃の蛇と薔薇 〜不朽の地下墓地〜 ③
9月30日 午前7時45分更新
〜百合紅の月22日 不朽の地下墓地〜
予定時刻通りを次のダンジョンを目指し出発する。
朝の時間帯は夜とは逆に幽魔種・不死種のモンスターの活動が衰退し別のモンスターが襲ってきた。
道中も火矢の罠…落とし穴…転がる岩石…酸が噴き出す壺…呪いを放つ石像…様々なトラップに見舞われるも無事に突破しモンスターの死骸と素材アイテムを回収しつつ進む。
…経験を積んで鋼の探究心の使い方が以前より上手くなった気がするぜ!
時間の感覚を忘れるほど歩き目的地付近まで到着した。
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・モンスター
クイーン・ハーピーの死骸と素材×1
ポイズンスライムの死骸と素材×2
オーガ・変異種の死骸と素材×2
不朽のゴブリンの死骸と素材×15
不朽の人食いトカゲの死骸と素材×2
墓地に巣食う蜘蛛の死骸と素材×10
墓地に巣食う大蜘蛛の死骸と素材×1
キメラの死骸と素材×1
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・採取アイテム
墓地キノコ×1
セメタリーフラワー×1
麻痺草×1
混乱草×1
ブラッドベリー×1
・採掘アイテム(鉱石)
髑髏石×1
闇鉱石×1
純黄鉱石×1
剛鉄鉱石×1
・採掘アイテム(結晶石)
不朽の結晶石×1
シャザム大結晶石×1
・採掘アイテム(宝石)
ボーンサファイアの原石×1
ボーンサンドの原石×1
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・貴重品(装備類)
セクトの杖
アイリスの腕輪
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〜午後17時 不朽の地下墓地 大刃回廊〜
「もう少しだ!頑張ろう」
俺は後続の三人を励ます。
「了、解です…!」
「ふぅ…ふぅ…」
「…まだまだ行ける」
度重なる戦闘と罠でかなり消耗してる様子だ。HPもMPも俺のポーションで回復できるが失った体力は戻らない。
「苦労は成長の糧となる。諦めず一歩踏み出すのです」
「「「はっ…!」」」
ベアトリクスの叱咤激励に気合いを入れ直し返答する。
「返事はしたもののマスターとクロナガさんのスタミナが半端ないわ…」
「…しかもクロナガさんは寝てないしな」
メンデンとサイトの会話を聞いて苦笑した。探索を指揮する責任感が神経を昂らせてるだけで疲労は募ってるし眠い。
「ここを抜ければ次のダンジョンへ続く場所に……マジ?」
「素直に通らせてくれないですわね」
「「「……」」」
風切り音を轟かせ左右に高速で振り子運動を繰り返すギロチンを前に三人は絶句した。
「ク、クロナガさん」
「おう」
「…迂回して別の道に行きませんか?」
確かにもう一つ道はあるが恐らく黒髭が通ったであろう地下牢のルートだ。
ここで戻り時間をロスするのは手痛い。
「悔しいですが万全の体調でも私とサイトとセバスチャンの敏捷の数値では突破するのが難しい罠です…」
「…俺がなんとかしよう」
「なんとかってどうやって…?」
「心配するな」
かなりの力業になるが……この際、仕方ない。
「皆は離れて待っててくれ」
眼前で動くギロチンは速くとも規則的に動いてるし十二分に見切れる。
「どうするつもりなんだ?」
「…分からん」
よし……やるぞ!大獄丸を握り締めた。
「しっ!」
大剣状態で振るう一撃がギロチンを砕く。
天井からぶら下がる鎖は淵噛蛇で引き千切った。
「「「!!?」」」
「…わたしにも真似できない物凄い荒技ね」
まず二つ…あと六つだな?
「骨は折れるがこれなら大丈夫。ゆっくりついて来い」
物理的に罠を破壊し突破する…レッツ脳筋スタイル!
やっぱ筋肉って大事だわ。
〜15分後〜
最後のギロチンを壊し残骸が地面に積み上がる。
「ーーふぃ〜!疲れたぜ」
楽な手段ではなかった。
「お陰で全員無事に進めましたわ」
「………」
「…クロナガさんと戦ったジムさんを尊敬するよ。俺は幾ら金を積まれても無理だ」
「右に同じく」
額に伝う汗を拭い答える。
「はは!アジ・ダハーカの稽古に比べれば楽なもんさ」
「アジ…?」
まぁ勝てないに決まってるが前より通用する気が……やっぱ無理!地獄の特訓の日々が蘇り思い直す。
「………」
「どうかしたか?」
頬を朱色に染めたメンデンに問う。
「その……かっこ良かったなぁって」
小声で呟く彼女が可愛く見えた。
…ふぅ〜!若い娘に褒められると照れちゃうぜ。
「では行きましょう」
「おー」
「「「はっ!」」」
石の階段を下り地下墓地の深部へ向かう。
〜午後18時 不朽の地下墓地 天秤の祭壇〜
墓地から薄暗い地下遺跡へ……そんな印象の場所だ。
石柱が並び青い松明が灯る。
「…あれを見て下さい」
仁王立ちする騎士…巨大な天秤…二つの石碑…尋常ならざる雰囲気と異臭が漂う。
十中八九、不朽の地下墓地の門番だろう。
赤黝い甲冑の騎士はゆっくりと刃毀れが酷い剣を此方に向けた。…凄まじい風貌だな。
歪んだ兜の隙間に見える灰色の肌に生気は感じない。
ーー…選べ…己の価値か…それとも…同胞の価値か…?
「し、喋った…」
ーー………己の価値を示すならば我と闘え…同胞の価値を差し出すならば…同胞を秤へ…。
「秤?あの天秤か?」
アイリスの腕輪を鑑定した内容を思い出し質問する。
「…もしや守護者に敗れ門番となった戦士か?」
ーー!
腕輪を取り出そうとするも激痛でまともに触れん…。
「ベアトリクス…ちょっとアイテムパックから腕輪を取ってくんない?」
「わかりましたわ」
白く輝く腕輪を見て騎士は驚く。
ーー…それはアイリスの!?
「来る途中で見つけてな……俺達は犯罪者の一味を追ってここまで来た」
ーー………。
「説明は省くが大人しく通してくれないか?…代わりに守護者は俺が倒すって約束するよ」
ーー守護者を倒す…だと…?
「ああ」
ーー…そうか…もう一つの魂…貴様は契約者か…強大で途方もない力を感じる。
ミコトの存在を見抜き騎士は俯く。
ーー神が眠る地を探す使命の旅……ただ我は…奴隷と蔑まれた身分を…残酷な世界を変えたいアイリスの望みを…叶えたかっただけだ…貴様の名は?
「黒永悠」
ーー…意気や良し…だが門番の我に敵わぬば守護者の足元にも及ばぬぞ…希望の託宣者か…失望の虚言者か…我に己が価値を示せ。
「……なんてプレッシャーなの」
「これは…ヤバい相手だぞ」
魔力の奔流が大気を震えさせ石畳に亀裂が走った。
ーー我が名は奴隷騎士ゲイル…かつては陽の巫女の剣…今は……魔窟に囚われし残滓なりっ!!
「…下がってろ」
大獄丸を肩に担ぎ前に出る。
「一人で戦うつもりですか!?」
「俺をご所望だ」
セバスチャンに答える。
「…任せていいのですね?」
「ああ」
同時に駆け出し互いの剣が衝突した。




