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追撃の蛇と薔薇 〜リグレッド城〜 ②

9月17日 午前8時更新

9月17日 午前8時53分更新

9月17日 午前9時40分更新

9月17日 午後14時15分更新





ーー生前は『暗黒神』を信奉するバアフ教の教祖…黒魔法を操り『金冠』と恐れらし最強の魔法使いよ!


バアフ教…リグレッド城…邪教の噂は真実だったんだ。


「最強の魔法使いの死因は?」


そう聞くと歯切れが悪くなった。


ーー…それはその…迫害された子供を…あ、いや!信者…じゃない…い、生贄を庇ってじゃな…ごにょごにょ…。


「え」


ーーな、何でもないわい!


…こいつは悪いモンスターじゃない気がする。


「実を言うと俺達は犯罪者とその一味を追って来た」


ーー…む?


「先ず話を聞いてくれ」


事情を簡単に説明した。


〜数分後〜


「ーーーって訳だ」


傾聴していたセクトは頭蓋骨を掻く。髪の毛がないので骨が軋む音がした。


「黙って先に通してくれないか?」


セクトが笑う。


ーー…御主は契約者じゃろ?


「まあな」


ーーカッカッカッカ…面白い…()()()()()…!!


「!」


雰囲気が一変し凄まじい魔圧が襲う。


ーー何年…何十年…何百年と続く呪縛の日々…御主は我々が待ち望む()()()か…はたまた他の者と同じ()()と成り下がるか。


「……」


ーー手を抜かず本気で試させて貰おう。御主が勝てば答えを示す…返答は如何に?


やれやれ……この流れだと戦闘は避けられないな。


「ベアトリクス」


「ええ」


「こいつは俺に任せてくれ」


「分かりました」


間髪入れず頷く。


「マスター!?」


「探索指揮は悠に一任すると言ったでしょう」


「ですが…」


「『辺境の英雄』の実力を黙って刮目しなさい」


ベアトリクスの了承は貰ったし…さーてと!


「言っておく」


ーーなんじゃ?


「俺は強いぞ」


燼鎚・鎌鼬鼠を肩に担ぎペナルティの銃口を向ける。


ーーその意気や良し…力を見せてみぃ小童が!


セクトから闇が溢れ出す。



〜8分後 守護者の間〜



「…信じられない…」


メンデンは心情を吐露する。


目の前で繰り広げられる悠とセクトの戦闘は想像を凌駕していた。攻撃の衝撃波で大気が震えセクトが使役する死霊が次々と爆炎に飲まれ消える。


「リッチに物理攻撃が当たってるぞ…」


「…炎は魔法なのか?詠唱せずノーモーションで…あれじゃ竜のブレスだ」


淵嚼蛇の黒蛇が炎と闇の中で暴れた。


…三人は互角の攻防と認識したがベアトリクスは悠が全力で戦っていない事を見抜いている。


「悠の強さは圧倒的よ」


「…マスター?」


「一定距離を維持し攻撃を防いでる…空間と相手を支配する超高度な戦闘技術です」


「「「!?」」」


そう…悠は一歩も後退してない。限られた空間で魔法攻撃を回避し死霊を倒し防いでいた。


「あの強敵相手に成し遂げるのは容易じゃない」


リッチは危険なモンスターだがセクトは中でも更に強い。指定危殆種に指定されるレベルだが軽々と上をいく。


「……」


「…怪物だ…」


「怪物を殺せるのは同じ怪物だけですわ」


戦闘はより激しさを増していく。


「努力では辿り着けない境地を目の当たりにして諦めるのか…それとも努力し近付こうと進むのか…前者と後者には雲泥の差がある…全ては自分次第よ」


ベアトリクスが示したのは絶望的な強さの指標…気骨がなければ強くなれない…と伝えたのである。


部下を導くのも境地に立つ統率者としての責務なのだ。



〜同時刻 守護者の間〜



互いにここまでダメージはない。


セクトの攻撃は闇属性の魔法攻撃と呪術が主体だ。相性が良いのか相殺は容易である。


ーー素晴らしいのぉ…惜しむらくは全盛期の…生きとる間に御主と会いたかったわい。


「俺もだよ」


爆炎を突っ走りトリガーを引く。


ーー…は、速い!


淵嚼蛇で強化した爆破と殴打の得意攻撃だ。


「ふんっ」


右斜めに振り上げる一撃は爆発を伴いセクトの右半身を吹き飛ばした。


ーーぐっ!?…幽体に物理攻撃を喰らわすとは……恐ろしい奴じゃ…あーもー…止めじゃ止めっ…儂の負けじゃ!


距離を取ったセクトが叫ぶ。


「悪いな」


ーー敬老精神の欠片もないの…最近の若者は困ったもんじゃ。


ふざけんな!そもそも死んでるだろがい!


「約束だし色々と答えて貰うぜ」


武器を仕舞いそう言うとセクトは意を決した様子で喋り始めた。


ーー……リッチとなったのは守護者のせいじゃ。


「…ん?」


ーーそもそもガルカタ大聖堂の宝も…秘密も…儂は興味がなかった…この城が魔窟と知りつつ可愛い子供たちを思えばこそ住んだが……その判断は間違いじゃった。


「急に語りだしてボケたのか?おじいちゃん」


ーーだ、黙って話を最後まで聞けぃ!


「えー」


ーーこいつぅ…まぁええわい…簡単に言うとこの魔窟で死んだ者は永遠に魔窟に魂を囚われる。


「…なんだって?」


ーー全ては資格者を探し試す試練なのじゃ…言うならば作られた魔窟ってとこじゃな。


むむむ…!話が複雑になってきたぞ。


ーー…御主達が追っておる連中は犠牲を捧げ進んどる。


「犠牲?」


ーー守護者が喜ぶやり方じゃからな…門番はあくまで門番…裁定する権利はないからのぉ〜。


「頼むからもう少し噛み砕いて説明してくれ」


ーーカッカッカッ!分からずとも良い…とにかく御主には守護者を倒して欲しいのじゃ…哀れな魂を呪縛から解放してくれぃ。


ふぁ!?セクトの体が消えかかってるぞ!


ーーよいせっと…久々に全力で動いて疲れたわい…少し休もうかのぉ…。


「ちょっ…せめて上と下のどっちに進むべきか答えてから休んで!」


ーーむ?あぁ…目に見えぬ道…身を捧げし者に光あれ…この言葉を覚えとくがいい……()()宿()()契約者よ。


「……」


喋るだけ喋って消えちゃった…あっ!神を宿す者ってミコトのことだよな?


…不思議と憎めないモンスターだったな。


「素晴らしい戦い振りでしたわ」


「おー」


片手を挙げ応える。


「……想像してた何倍も凄かったです」


「あぁ…クロナガさんは本物だ」


そんな尊敬の熱い眼差しを向けられると照れちゃうぜ!


「リッチと対話してましたが何か有益な情報は?」


「んーっとだなーー」


〜数分後〜


「謎が深まるばかりね」


ベアトリクスが腕を組み呟く。


「死んだ者の魂が囚われるダンジョンなんて…」


「…常識を無視してる…めちゃくちゃだ」


不安がるセバスチャンの肩を叩く。


「心配すんな」


「ですが…」


「俺とベアトリクスがいるし誰一人死なせない」


「無論です」


ベアトリクスは力強く断言した。


「…はい!」


不安を消すのに十分効果があったみたいだ。


「では追跡再開ね」


「二つのルートを確認してから進む先を選ぼう」


「別れますか?」


「いや…まとまって行動しようぜ」


ホラー映画の常套句じゃないが全員一緒の方が良い気がする。


「魔窟で効率を優先するのは悪手…急がば回れ…ですね」


広間から近い地下ルートの確認へ向かった。


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