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追撃の蛇と薔薇 〜リグレッド城〜 ①

9月16日 午前10時35分更新





〜午前5時10分 シュトフ地方 森〜


森の転移石碑から城を目指し出発する。


マップを確認するともう直ぐだ。


…朝とはいえ薄暗い森はちょっと不気味だ。不思議なことにモンスターのマークはなく気配も感じない。


「そーいえば乙級の許可証があるしベルカの転移石碑から此処の転移先は選べるのかな?」


ちょっと疑問が湧いた。


「無理ですわ」


「マジか」


「転移石碑にも種類があり同色の石碑間でしか許可証の転移先候補の記憶に残らない」


隣を歩くベアトリクスが答える。


「寺院の転移石碑は黄色だったでしょう?」


「うんうん」


「しかもムファサの転移石碑のような特別な石碑は一つの石碑からしか移動できません」


どうにも色が重要らしい。


「一つ勉強になったよ…お?そろそろ森を抜けるな」


緑の矢印がマップで点滅していた。



〜リグレッド城 近辺〜



舗装された道の先に城が聳え立ち破壊された転移石碑を見つける。


…観光名所か…確かにぴったりだ。

堂々たる城壁に守られたリグレッド城を見上げ唸る。


不思議なことに城の上空を曇り空が覆っていた。


周囲は水堀?緑の水が濁って変な臭いがするな。


侵入禁止の看板には…これより先、自己責任…と書いてある。俺達は勿論、躊躇せず跳ね橋を渡った。



〜リグレッド城 城門〜



城門に到着した。


「門の向こうで敵が待ち構えてるな」


マップの赤いマークが一斉に点滅する。


「戦闘用意」


ベアトリクスの指示に三人が武器を構えた。


恐らくモンスターだ。人にしては動き方が不規則すぎる。


「!」


「マスター」


「手間が省けました」


「…どうも歓迎してくれてるみたいですね」


城門が勝手に開閉した。


「俺が先に行く」


ペナルティを握り城の中へ進む。



〜リグレッド城 幽霊の中庭〜



枯れた木と半壊した石像…濁った水が湧き出す噴水…外観と違い荒れた中庭を半透明の塊が浮遊する。


「チッ…ゴーストだ」


「魔法で迎撃します」


少し焦った表情でメンデンが魔法を放つ。


「…刺され火の槍よ!ファイアスピア」


火の槍が塊に突き刺さり煙となって消えた。


「あれは幽霊?」


「正式には幽魔種に属するモンスターです。攻撃力は皆無ですが物理攻撃を無効化するので魔法で対処する必要があり……一番厄介なのが憑依」


「取り憑くの?」


「ええ…ダンジョンでゴーストに憑依され同士討ちでPTが全滅…よくある話ですよ」


よくあってたまるかーい!


「吹き荒れる疾風の刃…トルメンタ・ゾーン」


メンデンの風魔法が刃となり敵を切り裂く。


…ぼ、暴風注意報発令!?


あれだけ浮遊していたゴーストを瞬く間に倒す。


「ふぅ…これで大丈夫ですね」


マップに点滅する赤いマークが消えた。


「上出来ですわ」


おぉ…俺の出る幕がないじゃん。


「ゴーストは時間が勝てば再び復活する。先に進みましょう」


「復活すんの?」


「完全消滅させるには聖魔法か聖属性の攻撃が必要なの」


ほへー…面倒なモンスターだ。


「…クロナガさんは知らないのですか?」


「うん」


スキルで関係なく倒せちゃうし気にした試しがない。


行き当たりばったりとも言えるけど。


「……」


メンデンは訝しげな表情で俺を見ていた。



〜リグレッド城 さまよう騎士の道〜



中庭を抜け城の内部へ続く階段を登る。


「…止まれ」


先を歩く俺はマップで敵を確認し後続へ警戒を促す。


大剣を握る騎士と修道服を着たミイラが階段の向こうから降りてくる。


「俺とサイトが行きます」


鉄騎隊の隊員セバスチャンとサイトが剣を構えた。


ーー……。


ーー…うがっ…ぐごあ…!


ミイラが杖を掲げ魔法を唱える。

近距離と遠距離の連係…この狭い階段で戦い辛いな。


「「ルーメン・エンチャント」」


二人の剣が光り輝いた。


…うっ…この嫌な感じは聖属性の魔法だ。


臆することなく階段を駆け上がり突進する。


「「エックスブレード!」」


左右の袈裟斬りがミイラを斬り伏せた。そのまま騎士と打ち合い競り勝つ。


がらん、がらんと音を立て騎士は崩れ落ちた。


中身がない…どーゆー原理で動いてたんだろ?


「騎士を操る術者がいますね」


「ええ…恐らく死霊使い(ネクロマンサー)のリッチでしょう」


「終わりました」


「この程度ならば相手になりませんな」


三人とも頼もしいじゃないか。


「よくやりましたわ」


うーむ…俺の出番がない。流石は猛者揃いの鉄騎隊と称えるべきだろう。


そのまま階段を登り内部へ到達した。



〜午前6時15分 リグレッド城 守護者の間〜



蜘蛛の巣が蔓延り埃が舞う大広間…引き裂かれた絵画…足元を走る鼠……喩えるとホラーハウス?


吊り下がった巨大なシャンデリアが揺れていた。


「…連中が通った痕跡があるわ」


メンデンは呟く。


「どうやって移動したんだ?」


「城の外は堀で続く道は見当たらない」


「考えられるのは隠し通路ね」


マップに点滅する緑の矢印は二つだ。


一つは地下…もう一つは上……上?


次のダンジョンは腐朽の地下墓地って言うくらいだし地下のルートが正解だと思うけど…これは困った。


「ベアトリクス」


「はい」


「次へ進むルートは二つある」


「二つですか?」


「一つは地下でもう一つは上みたいだ」


「普通に考えれば次の魔窟が地下墓地と名称されるので地下が正規ルートと思いますが…追手を警戒し待ち伏せしてる可能性もある」


「なるほど」


「城を探索し手掛かりを集めるべきかも知れませんわ」


突如、異変が起きる。


「…マスター!」


「燭台に火が灯った?」


冷風が吹き蝋燭が燃えシャンデリアに火が灯る。


「この悪寒…やはりリッチね…」


「くっ!」


「…前に戦ったリッチより遥かに強そうだぞ」


苦しそうに三人が顔を歪める。


俺が平気なのは狂気の数値が高いからだろう。


「熱烈な歓迎に頭が下がるわ」


ベアトリクスも平気そうだ。


「…こいつがリッチ」


擦り切れたローブを纏う骸骨の怪物が顕る。


ーー礼儀を知らん客がまたぞろぞろと…辟易するのぅ。


頭蓋骨の金冠だけやけに立派だ。


…待てよ?話せるってことは戦闘を回避できるかも!


「おーい」


手を振って骸骨を呼んでみる。


「ク、クロナガさん…?」


「…リッチに話しかけた!?」


「し、正気ですか」


「静かに…悠に任せましょう」


ベアトリクスが三人を制止し一歩下がる。


ナイスフォロー!


ーーなんじゃ此奴…まさか話しかけておるのか?


「そうだ。俺の名前は黒永悠…お前の名前は?」


ーー…お、驚いたわい…モンスターとなった儂の言葉を理解しとる!


骸骨のくせに感情表現が豊かだ。


「だから名前は?」


ーーこほん…儂はガルカタ大聖堂を守護する第一の門番リッチのセクト・リグレッドじゃ。


「リッチって骸骨なんだな」


ーーそうじゃ。現世に未練を残す魔法使いが死ぬと死霊使い…アンデットのモンスターに変わるからの。


「うっわ…迷惑だしさっさっと成仏すればいいのに」


ついつい本音が漏れた。


ーーじ、人生の大先輩に失礼な奴じゃのぅ!…儂をそんじょそこらのリッチと一緒にするなよ?


セクトは大袈裟な身振りで叫ぶ。


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