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空の旅 終

9月7日 午前8時21分更新

9月7日 午後12時26分更新

9月7日 午後13時22分更新




「ロンズを倒したのはスキル?」


「ええ。わたしの『善悪の種(アダムシード)』は森羅系統に属するスキルですわ」


あの感じだと…わかった!


「植物を操る能力でしょ?」


「半分正解」


「…半分?」


「善悪の種は悪意・敵意・殺意を糧に成長する種を敵対者の内部に萌芽させ成長を操作する特殊な能力…相手の状態に依存するの」


「ふ、複雑な発動条件のスキルだな」


「その通り…負の感情の細かい区別は術者であるわたしの想像も超え発動すると思ってもしない時が多々あります。ロンズ・バーのような男は格好の標的でした」


スキルは千差万別だ。色んな特性がある。


その点、俺の各複合系スキルは単純明快で助かるぜ。


「マスター!クロナガさーん!そろそろ降りて来てくださーーい」


「…食事の準備ができてまーーす!」


メンデンとバーモントが叫んでいた。


「確かに腹が減ったな」


タイミングよく腹が鳴る。


「ふふふ…わたしは悠の手料理が食べたいわ」


「簡単な物でいいなら夜食で作るよ」


マットから飛び降り夕食を食べる。


食事の席でこのまま順調に行けば明日の昼過ぎには予定通りパルテノンへ到着するとベンノは言っていた。


その後、部屋に戻り武器の整備と荷物整理をする。


…遠くに来たんだなぁと窓の外を見て思った。



〜夜21時50分 ???の??〜



かつて人々が祈りを捧げし祭壇は瓦礫で埋もれ見る影もなく年月による風化が著しい。


巨大は偶像は上半身が欠け、半壊している。


「…張らせてる手下から連絡があったがロンズを殺したのは間違いなく『荊の剣聖』とその部隊だ」


「……」


「…どうする?一度戻るか?」


「却下」


寝転んでいた少女が答える。


燻んだ革のコートを羽織り背伸びをした。


「相手の土俵で戦ってどーすんのって話」


黒髪のポニーテール…無駄な贅肉のない肢体…ショートパンツとレザーブーツ…可愛らしい顔立ちだが瞳の奥は不気味に濁っている。


「ここなら闇討ち・奇襲・強襲に最適だって話よ」


「そりゃそうだが…」


見事な口髭を生やした男は腕を組み頷く。


「…っつーか道は見つかったのって話?」


「ああ」


半透明の紙を広げると空中に地図が展開した。


これは貴重な探索魔導具の一種である。


「祭壇に来る途中に墓地があったろ?ここに隠し通路があった」


「グッジョブ」


「発見した連中は罠で即死したがな」


「あらら〜」


軽い態度だった。


「残ってるメンバーは約半分ってとこだ」


「仕方ないって話よ…これはビックな仕事だし」


男は紙を懐に仕舞い問う。


「…本当に宝はあんのか?」


「……」


「そもそも()()()()()()()なんてよぉ〜…眉唾物の伝説だろ」


「さぁ」


「さぁってお前…」


「ユーリニスがあるっつーんだもん」


「あの野朗は信用なんねーぞ」


「あ〜もぉ〜!兄貴は心配しすぎだって話!!」


「怒鳴るなよ…まぁお前の命令に俺達は黙って従うけど…」


「そーゆーこと!()()()『黒髭』…ミーシャ・E・ティーチ様に任せろって話」


「へいへい」


「人造神の遺骸は必ずゲットしなきゃね」


…ガルカタ大聖堂を探索する黒髪の一味は魔窟の深部を目指し躍進していた。



〜百合紅の月20日 シュトフ地方 上空〜



サフラ砂漠を超えると平坦な緑の草原が広がった。


野生動物が野を駆け巡って自由に往来している。


「予定より一時間ほど早く到着できるな」


ベンノが地図を片手に呟く。


「もう少しで巡礼都市ですよ」


「…あれか?」


俺は船から身を乗り出し遠くを見る。


次第に巡礼都市が輪郭を帯び始めた。青い水彩の家々…カラフルなテント…そして崩壊した寺院と建物……連中が暴れた名残か。


「着陸後、市の被害状況を確認します。メンデンは鉄騎隊と冒険者ギルドに行って下さい」


「はっ!」


「わたしとバーモントは騎士団支部へ行きます」


「はっ」


「悠は協力者と一緒に『ガルカタ大聖堂』と『黒髭』の情報収集を」


「協力者?」


「ミッケ・ンドラという司祭です」


「ふむふむ」


「彼女は……いえ、会えば分かるわ」


教会の司祭…どんな人かな。



〜午後14時10分 パルテノン 飛行場〜



飛行船から降りて唖然とする。


「…嵐が直撃したのか?」


ダッチマン船長がそう言うのも無理はない。

船は破壊され倉庫は瓦解し崩壊していた。


大勢の作業員が撤去と修繕作業に奮闘している。


「酷いな…」


「ええ」


作業員が周囲に集まり始めた。


「…あ!おーい」


「やっと助けが来た…」


「物資……頼んだ物資は無事なのか!?」


「市長とガンビーさんを呼べ!」


想像以上の有り様に言葉を失う一同だった。


〜数分後〜


「本当に…皆さんを心待ちにしてました…!」


疲労困憊の初老の男性が目に涙を浮かべた。


「マジで助かったよ」


帽子を被った作業着の男が汚れた顔を拭う。


「私は市長のシーブと申します」


「俺ぁ飛行場の管理者してるガンビーだ」


互いに簡単な自己紹介を済ませる。


「…慣れない空の旅でお疲れでしょう?まず宿屋へご案内を」


「我々に気遣いは無用」


ベアトリクスは即答した。


「冒険者ギルドと騎士団支部へ案内を頼みます。ご厚意には感謝しますが休んでる暇はありません」


「…なんと頼もしい…!」


俺達は遊びに来た訳じゃないし当然だな。


「こっちも注文した輸送物資を確認してぇ…あんたが船長か?」


「うむ!貨物室から降ろそう」


司祭はここに居ない?


「あの…ミッケ・ンドラ司祭は?」


「教会で負傷した市民に治療を施してる最中でして…そちらは秘書に案内させましょう」


俺が聞くと市長が答えた。


「お願いします」


「それでは三時間後にパルテノン広場に集合しましょう」


「えーっと…パルテノン広場は」


「巨大な釣鐘がある広場です…ほら」


「なるほど」


あの大きさと高さの釣鐘は遠目でも分かるし目印には持ってこいだな。


三つに分かれ別行動を開始した。


俺の担当は情報収集…黒髭とガルカタ大聖堂の情報を集めなきゃ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 黒髭... きっと眼帯して、頬に傷があって、空中を足場に銃を乱射する、金眼の黒コートなんだろうなあ。 某シグ◯ールのように
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