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空の旅 ④

8月31日 午前8時7分更新




しかし、既にロックオン済みだ。


魔法を唱えさせる猶予をむざむざ与えない。左手の裂傷で滴り落ちる血の滴……痛みの代償を払って貰うぞ。


ーールッ!?…ギャア〜!ギャァ…?


ーーアウ〜ア〜?


突然の金縛りにハーピーは必死に抗っていた。



「禁法・縛烬葬」



猩猩緋色の炎が破裂する。


連鎖するように爆発は次第に大きくなり爆炎が空を包んだ。


血と肉片のシャワーが降り注ぎマップに点滅する赤いマークは瞬時に消えた。


狂気のパラメーターが威力に反映される禁法・縛烬葬……圧倒的な火力だ。魔法が使えない俺には有効な範囲攻撃手段が限られてる。


しかし、この呪術があれば補って余りあるな。


自分でも身震いする威力だよ…いやマジで!


「一瞬で片付い…」


新たに赤いマークが点滅する。


「…なるほど」


突風に船が軋む。


「お前が親玉なんだな?」


他のハーピーより成長した大きな体躯…一際美しい体毛…太陽の光に反射する髪…研ぎ澄まされた鍵爪…この惨状にも怯まず威嚇し魔圧を放つ度胸……群れの長の風格を漂わせる。



ーーアァァァァアァァァァ゛!!



外敵を排除しようと孤闘に臨む決意の雄叫びが耳を劈く。



ーー対象を確認。ステータスを表示ーー

名前:クイーン・ハーピー

種族:人魔種Lv97

称号:トントタッタの悪夢

戦闘パラメーター

HP340000 MP50000

筋力2000 魔力6500 狂気4000

体力2000 敏捷6500

技術2000 精神11000


・耐性

睡眠耐性(Lv Max)

混乱耐性(Lv Max)

魅惑耐性(Lv Max)

異常耐性(Lv3)


・戦闘技

破滅の歌

鼓舞の歌

スカイラッシュ


・魔法

風魔法(Lv Max)


・固有スキル

統率者

美声

狂撃

強制受精

空の女王

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

トントタッタ森林を縄張りにするモンスター。女王の如く君臨し巨大なハーピーの巣を作り上げた。


ハーピーは雑食で特に肉を好み貪る。

また発情期になると他生物の雄を襲い、強制的に交尾を行い卵を産む。強力な子孫を残そうとその美貌と美声で惑わし巣へ拐うのだ。クイーン・ハーピーは状態異常攻撃を得意とし耐性も兼ね備えている。空中での戦闘は危険極まりない。


強く勇ましい冒険者がいた。

各地を転々としモンスターを倒す彼の姿を見た人々は勇者と評しその偉業を褒め称えたが……実際は違う。モンスターに性的興奮を覚える性癖ゆえ流浪する他なかったのだ。


そんな男はある森で一匹のハーピーと出会う。男は身も心も捧げ献身的にハーピーに尽くした。


やがてハーピーは卵を産む。


卵が孵り雛が自分を食うその瞬間まで男は幸福の絶頂を味わった。…月日が経ちその雛は女王と呼ばれるまで成長する。


男の愛は恐るべき怪物を誕生させてしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…さてと」


首の骨を鳴らす。


船を魔法で攻撃されたら一溜りもない。…手段を選ぶ余裕はないな。


「淵噛蛇」


瘴気を放つ黒蛇を伸ばした。


ーーアァ!?


船の上空に逃げたクイーン・ハーピーを追う。


一匹が羽を噛み二匹目が体に巻き付いた。


ーー…ギッ…ア…アァ…!


こうなればもう逃れられない。


次々と黒蛇はクイーン・ハーピーを襲う。


「…ふんっ!」


骨が折れる感触が淵噛蛇を通じて伝わってきた。


必死に抵抗してるが筋力の数値が2000程度では抜け出せない。


口から血の泡が溢れ力が抜けていくのが分かる。


……人に似てるからかな?


ーー…アッ…ガ…アァァァァ…。


涙を流し喘ぐ姿に心を痛ませる。…これ以上、苦しませるのは可哀想だな。


「悪い」


一言謝り渾身の力で握り締める。


ーー………。


ぐったりと頭を項垂れ悲鳴も挙げずクイーン・ハーピーは絶命した。


甲板に死骸を下ろし瞼を左手で閉じる。


これで飛行船の進行を妨害する脅威は消え去った。



〜午後14時20分 フライングメアリー号 甲板〜



終わってみれば短い戦闘時間だったな。


戻って来た全員が爆発で飛散した肉片と臓腑塗れの甲板とクイーン・ハーピーの死骸を見て驚き喚く。


「…うっ、うわぁ…!」


「俺っち気持ち悪くなってきた…」


「通常のハーピーではない?」


「体格が違いますね…」


「一見、無傷に見えるが間違いなく死んでる。クロナガさんはどんな攻撃を?」


「呪術を使った」


「有名な黒蛇を操る呪術ですか?」


「有名かどうか知らないがそうだよ」


「…突如、船を襲った揺れと爆発音は?」


「あれも呪術」


バーモントの質問に淡々と答える。


「…想像できない威力のアビリティだ…」


「大活躍でしたわ」


ベアトリクスさんだった。


操舵室に続く階段を降りて来る。


「百匹を超えるハーピーを無傷で全滅させるとは圧巻の一言に尽きます……流石、悠ですね」


「ひ、百匹のハーピー!?」


「…通常の巣と違うのですか?」


ベンノはまじまじと死骸を横目に質問した。


「特殊なモンスターは他の同種へ高い影響を及ぼす実例があるわ……このハーピーは恐らく希少種ね」


サーチした内容を察するにクイーン・ハーピーは人とモンスターの混成児(ハーフ)だ。


「……」


…わざわざ皆に説明し動揺させる必要はないか。


この真実は胸の中に閉まっておこう。


「…しかし勿体ないですな」


船長が呟く。


「勿体ない?」


「ええ…ハーピーの羽毛や体毛は貴重な素材なので適切に解体すれば非常に高値で売れるがフライングメアリー号は輸送船で解体道具は積んでないし貨物室に保管しても腐るだけ…捨てるしかない」


そーゆー理由か。


「捨てるなら俺が貰いますよ」


「…貰うって言ってもこの大きさじゃ」


「大丈夫」


貪欲な魔女の腰袋〜!


留め金を指で開き死骸と素材を吸い込んだ。


「うえぇえぇ!?」


「馬鹿な…モ、モンスターを回収できるアイテムパックだと?」


「…あり得ない…」


「冒険者なら喉から手が出るほど欲しい代物だ…」


驚く面々だった。


「兎も角、脅威は去りましたわ」


ベアトリクスさんが手を叩く。


「ああっと…ゆっくりしてる場合じゃねぇ。船員は甲板の掃除と損害箇所がねーかチェックだ!ベンノは操舵室で進路調整な」


『おーー!』


「警護を再開し手が空いてる者は甲板の掃除を手伝いなさい」


『はっ』


「腐臭を漂わせたまま飛行すれば格好の標的です」


船長とベアトリクスさんの指示に皆が動き出す。


…俺も掃除を手伝うとすっか。


フライングメアリー号は巡礼都市を目指し順調に運航を続けた。


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