武器市場!〜イベントは楽しく賑やかに〜 ④
8月10日 午後19時32分更新
8月11日 午前8時27分更新
〜午後13時45分 中央広場〜
スマートスミスに戻って鉱石を準備し炉を焚き金槌を握った。
「さてと…二人が欲しいのはアックスだったっけ?」
「そーだけど…」
「俺が作ってやるよ」
「…マジ!?」
「欲しい物が手に入れば文句も不満もないだろ?」
「それはそうだが…」
「因みに金は払ってくれよ」
「1000Gでいいの?…さすが第8位!太っ腹じゃん」
「店で売ってたグレートアックスと同じ値段な」
安く買えると思って喜ぶケーシィに釘を刺す。
「……ちぇ」
…二人は立派な大人だ。
ケーシィは『金翼の若獅子』所属でハイランクの冒険者…ヨドンは第弍騎士団の部隊長…午前中に武器を鍛造してあげた五人と違い特別扱いはしない。
あのグレートアックスの値段は12万Gだったかな?
作業に取り掛かるとしよう。
〜18分後〜
仕上げた武器を水で冷やし作業台に載せる。
「よし…完成だ」
「…凄いな…信じられない…」
「表現できる言葉が思い浮かばないんだけど……」
「スキルのお陰さ」
本当にスキルって便利な物だと思う。
「通常のグレートアックスと形状が違うな」
「俺なりに改良してみた」
重厚なグレートアックス+3は三日月状の斧が特徴で一撃の重さに比重を置いているのだ。
「悪くないじゃん!デザインもいいね〜」
ケーシィは外見に似合わず軽々と武器を担ぎヨドンも手に取って満足気に頷く。
「…予想外の展開だったが礼を言うぞ」
「サンキュ〜」
二人から代金を受け取る。
「もう喧嘩はするなよ」
「喧嘩?だって騎士団の高圧的な態度が悪いし」
「…ふん…冒険者の不遜な物言いが気に食わん」
「……」
「……」
無言で睨み合う二人だった。
「俺の話を聞いてた?ねぇ?」
子供より聞き分けが悪いぞ。
「…うー…クロナガさんは十三翼の第8位だし冒険者の味方じゃないの?」
歯を剥き出しにしてケーシィは問う。
「逆に聞くけど騎士団って敵なのか?」
「…え!?敵は…ち、違うと思うかな…」
「ヨドンは冒険者全員が犯罪者だと思うか?」
「それは…」
「…二人とも噂や風潮を鵜呑みにして自分が作った見えない敵に惑わされてるように俺は見えるな」
「「!」」
「物事を正確に判断するには客観的な視点じゃなきゃ……って偉そうに俺も言えた義理じゃないけど」
金槌の汚れをタオルで拭きつつ答える。
「ま…ただの戯言さ」
笑ってタバコに火を点ける。
俺があーだこーだ言っても仕方ない問題だ。
…しかし、だ。両組織の関係が修復すれば皆が笑顔になる筈…昔は仲が良い時期もあったってラウラも言ってたしね。
「クロナガさんって変わってるね…?」
ケーシィは不思議な物を見るような眼差しを向ける。
「普通だよ」
二人が顔を見合わせ怪訝そうにした。
〜10分後〜
一悶着あったが無事解決しケーシィとヨドンは深々と礼を言って去った。
「悠」
「お疲れさまです〜」
「はろー」
現れたのはアイヴィーとオルティナ……それにラウラとエリザベートとルウラの五人だ。
「『豹王』も来るそうですね?」
「はっ」
「黒永殿」
…えーっと…ベアトリクスさんと鉄騎隊…カネミツさんに刀衆まで?
「人混みで探すのだる……お!ユウ見っけ」
「あ、あそこっスね」
「うん!」
リリムキッスの皆とあれは勇猛会…だよな?
「悠さーん」
「まるで同業者のお祭りでありんす」
「兄貴ぃ!」
「…このブースだったのね?探しましたよ」
シーと…第壱竜騎士部隊の面々じゃないか。
驚く事に知り合いが一斉に会した……って人口密度が凄っ!?
「…『地獄太夫』じゃん」
「まぁ……『幽火』のエイルでありんすね」
「カネミツも悠に用事かしら?」
「催しに黒永殿が参加されると聞いてな」
「シーも来たのかい?」
「ええ…騎士団本部でも告知していたので」
意図せず一帯を占領してしまった。
「遊びにきた」
「そっかそっか……ってキューは?」
「部屋で卵を暖めてる」
アイヴィーがジュースを片手に答える。
「…濃い顔触れだわ」
シーは見渡し呟いた。
「二つ名持ちの冒険者ばかりですよ隊長」
「はっ!十三翼は暇なんかね〜」
「暇?…時間を割き来ていると考えが及ばない点で思慮の浅はかさが伺えますね」
「……山積みの問題を解決しねーで遊ぶなっつってる意味が伝わんねーかなぁ?」
「分を弁えろよ…売春婦かも分からぬ冒険者風情が」
「…ひどい侮辱だよ」
「か、勘に触る言い方っスね」
鉄騎隊とリリムキッスのメンバーが対峙する。
「『地獄太夫』と会うのはひさしぶり」
「…実技試験以来でやしか」
「いえす」
「あれは良い経験をさせて貰ったわぁ…今なら負ける気がしないでやし」
「よーよー!ルウラとの力の差は未だ歴然…燦然な強さに目が眩むすぱーく!またぱーふぇくとゔぃくとりー!いえーい」
「…試してみやすか?貧乳さん」
「きるゆー」
「け、喧嘩は駄目だよ?」
ガラシャさんとルウラが揉め始めた。
「騎士団の『霹靂』…竜騎士か…ワイバーン程度に跨り名乗るのは吾からすれば滑稽というか…くっくっく」
「…竜人族は他種族との成長速度の違いで世間から切り離され常識が遅れてるとの噂です」
「……」
「ワイバーンの連携と小回りの優位点を認識してないのは噂通り常識に疎いからかしら?」
「群がる蠅を鷲は気にしないものだが…偶には良かろう……我が竜の力をその身で味わうか?」
…あっちこっちで一触即発の雰囲気が漂ってるぅ?
流石に黙ってられない。
「こらこら!揉め事はなしだぞ」
俺の一言に全員がこっちを見た。
「大事な友達がいがみ合う姿は見たくない」
暫し沈黙が続いたが其々、毒気が抜かれた様子だ。
「…んー…ユウに大事って言われちゃ…なぁ?」
「ふふふ」
「仕方ないでやし」
「…うむ」
「ふっ…我々はもとより黒永殿に武器の手入れを頼む算段よ」
皆が来てくれた理由は千差万別だろうが何にせよ楽しんで貰いたい。
「んじゃ営業再開するから順番に並んでくれ」
「わいふのルウラが一番!」
「…妻?」
「子供の戯言でやし…お嬢は気にせずともよろし」
「戯言じゃなくとぅるー」
「おい…こっちが先だろう」
「…あぁ?俺っちが先だろーが」
「仲良く並べ」
「「……」」
大人しく話を聞いてくれて助かる。
「…悠ってば先生みたい」
「ですね〜」
「あはは!言い得て妙だね…しっくりくるかも」
黙って成り行きを見守っていたラウラが笑った。
…俺が先生って確かに笑えるな。
全く柄じゃない。
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ええ…はい!有名人ばかりでスタッフも他の客も遠巻きに眺めてました。
その中心にいた『辺境の英雄』は全然気に留めず普通でしたけど…なんてゆーか…和気藹々で楽しそうでしたよ。
彼は…うん…中心人物って感じだったかな?
契約者なので怖い噂も聞いてましたが…ふふふ…やっぱり噂は所詮噂でしたね。
宝石箱 ギルド職員 パンデン・ファーマシー
ベルカ新聞の取材にて 百合紅の月16日
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