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武器市場!〜イベントは楽しく賑やかに〜 ①

7月30日 午前8時40分更新

7月31日 午前8時23分更新



次の日、俺はオーランド総合商社へ行きレイミーさんにリストを渡し卸売の件を相談する。


そこからレイミーさんの行動は早かった。


販売部門に連絡し在庫を確認…注文品を揃え配送…契約を結ぶべくリリムキッスに自ら出向いたのだ。


俺も関係者として一緒に同行する。


…道中にレイミーさんが説明してくれたが歓楽街の流通はメーラン商会が長年仕切っていて参入が難しかったらしい。


リリムキッスへの卸売を機に他店舗へ進出の足掛かりにするそうで商売魂が逞しい限りだ。


特に問題もなく両ギルドの契約は無事締結した。


…急な案件にも応じられる柔軟な対応力と品揃えや身軽なGMのフットワークが決め手だったとソーフィさんは語りレイミーさんの方も商品宣伝のモデルをリリムキッスのメンバー達に頼む予定だ。


やっぱ互いにWin-Winな関係って大切だね。


二人はこの件で紹介手数料を支払おうとしたが丁重にお断りした。


…俺はエイルとネムのレイミーさんに対し棘がある態度と逆に二人を警戒してる様子が個人的に不思議だったけど。



〜百合紅の月15日〜



今日は武器市場のイベントがある。


俺も参加者なので身支度を済ませ家を出て第三区画の中央広場へ向かった。



〜午前8時15分 第3区画 中央広場〜



予定よりも早いがちらほら運営側のスタッフが揃っている。


「おぉ〜」


陳列棚に並ぶ武器・防具・装飾品…大々的に掲げられた各ギルドの旗…規模は小さいが無数に設置された鍛治設備…天候が悪くても開催できるよう全部屋根付きだ。


最後に見た時はまだ建設途中だったがこれはいい!


…イベントが終わった後に片付けるのが勿体ない位だな。


「ユウ」


「おはよう御座います」


モミジとレイミーさんだ。


開催者の二人は更に早く到着してたみたい。


「おはよう」


「先日はソーフィさんに紹介して頂きありがとうございました」


門口一番に礼を言われる。


「もういいですって」


「オレもレイミーにさっき聞いたけどよぉ〜…ほんっと気付けば女の知り合いが増えてんよなぁ…?」


不満気に睨むモミジだった。


「あそこは女の子しかいないギルドだからな」


「そーゆー意味じゃ…あー…もーいいや」


「?」


「……GMとしては歓楽街に当社が進出できたのは大変喜ばしいですがあの雰囲気を見て私個人としては複雑でしたね」


「はぁ…」


どう返答すればいいの?


「…ユウの鈍感」


頭に疑問符しか浮かばなかった。


「と、とにかくだ!素晴らしい設備じゃないか」


話題を変えよう。


「まあな」


「モミジ考案の簡易式鍛冶場スマート・スミスです」


「必要最低限の物だけだし炉の出力に限界があっけど整備とある程度の鍛造は問題なくできる」


「ほほう」


「武器市場は戦闘従事者向けのイベント…他にも各種携帯品の販売も別ブースで行うわ」


「それに『灰獅子』も来るぜ」


「ラウラも?」


「冒険者は職人を…職人は冒険者を…互いに知り合う機会の場を提供したつもりですので」


「たまには歩み寄るっつーのも悪くねぇかなって思ってよ…」


モミジはそっぽを向き答えたが俺は嬉しくなる。


参加意欲とやる気がどんどん湧いてくるぜ。


「俺は何をしたらいい?」


コートの袖口を捲り勇む。


「悠さんにはあちらのスマート・スミスで鍛治と…会場の揉め事処理をして貰います」


「騎士団と冒険者ギルドは仲がわりぃだろ?…ケンカになんねーよう睨みを利かせてくれっと助かる」


「任せろ」


折角のイベントを台無しにしたくない。


今日は張り切っちゃうよ俺!


「…お前さんが噂の契約者か?」


少し近寄り難い雰囲気を纏うリザードマンのご老人が登場した。


「グス爺」


「えっと」


「……儂は『炎の金槌』でギルドマスターしとるグスタフ・ノートンじゃ」


「初めまして。俺の名前は」


「知っとる」


グスタフさんはぶっきら棒に答える。


「…想像してたより面構えは悪くねぇな」


それだけ言うと反対のブースに歩き去ってしまった。


…どうやら彼方のスマート・スミスは炎の金槌の職人が使うみたいだ。ギルドの紀章が描かれた旗が立っている。


「グス爺も有名な鍛治職人で特に防具鍛錬の技術がやべぇぜ?」


「へぇ…」


「ユウを一目、品定めに来たっつー感じだな」


品定め…お眼鏡に叶ったかな?


「どうもどうも〜」


今度はバードマンの男性が現れた。七三分けの髪と笑顔が如何にも商売人って感じがする。


「ほっほっほっー…初めましてですなぁ?私は商人ギルド『宝石箱』のGMでウッドウィック・ヘイローと申します」


「黒永悠です」


「彼とグスタフさんはイベントの共同開催者よ」


「ふーん」


「いやぁ〜…お噂は予々、聴いてましたが噂に違わぬ凛々しく男前な方ですな!『辺境の英雄』は今や知らぬ者はいない超有名人……これを機に我がギルドも贔屓にしてくれると嬉しい」


距離が近いって!


「どうですかな?今度、食事でも一緒に」


「…ウッドウィック」


レイミーさんが会話に割って入った。


「私の前で勧誘とは良い度胸ですね」


「…おおっと!うちの商品が到着したようで……また後ほど〜」


彼は飄々とその場を立ち去った。


「油断も隙もないわ」


「?」


「ユウは十三翼の第8位だもんな…名声や人脈を狙う商人も当然いるわな」


「私が許しませんけどね」


「…あの人って仲間だよな?」


「利害が一致してる同業者で仲間ではないわ」


「共同開催者なのになぁ」


「善悪ではなく儲かるか否の判断で行動するのが商人なので注意して下さい」


「……了解です」


「悠さんが信頼していい商人は()()()です」


腕を組みレイミーさんは答えた。


…やべぇ…イケメンな台詞だ!


俺が女の子だったら胸がときめいてたぜ。


「ま、一番の理解者は()()だけどな」


「…は?」


「あ…?」


互いの言葉に反応し合う二人。


やめて!私のために争わないで!?


…恋愛漫画のヒロインみたいな心境で板挟みになっていた。


とても頼りになるこの二人に優劣はないが…う〜ん…他の皆にもよく心配されるよなぁ?


その後、自分に割り振られたスマート・スミスで待機した。


呼び声の指輪でモミジに連絡を貰い、準備した鍛治道具を作業台に載せ鉱石を幾つか取り出す。


…イベント開催までもう少し、か。


張り切ってがんばるぞい!


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