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自分の常識は他人の非常識! ⑤

7月28日 午後16時21分更新

7月29日 午前9時20分更新





〜数分後〜



過剰なスキンシップから解放され先程の一件の経緯を説明された。


グラスに注がれた血のように赤い酒は複雑な芳香を放ち鼻腔を擽る。


…おぉ…滑らかな舌触りで体の芯が温まるな。きっと酔わないのが残念に思うくらい美味い酒だろうに。


「最近ねぇ〜…客とキャストから酒の味が酷いって苦情が後を絶たなかったの」


「ふむふむ」


「高級酒は私が仕入れてるしぃ…心配なかったけどぉー…安価なお酒はまとめ買いしてたからぁ〜…気付くのが遅れちゃったわぁ…」


グラスに浮かぶ氷を弄り苦笑いする。


「…何かの手違いだって信じたかったしぃ…穏便に済ませたかったけどぉー…こーなるとダメねぇ?『メーラン商会』も落ちぶれちゃってまぁ…」


少し寂しそうな横顔だった。


「長い付き合いなんですか?」


「先代GMにすっごくお世話になったのよん!…二年前に病気で急死しちゃってぇ…今は四代目の息子がGMだけどぉ〜…最近は金儲けに走り過ぎて評判が悪かったの」


やり切れない話だ。


「…でも今回の件で踏ん切りが着いたわぁ…『メーラン商会』との契約を破棄しなきゃね〜」


客商売をやってる以上、先ず信頼第一だ。こんな品を卸されたとあっちゃ営業に関わる死活問題だろう。


ソーフィさんの決断は英断と言えるに違いない。


「でも悠ちゃんはすごいわねぇ」


「ん?」


「私も鑑定のスキルは持ってるけどぉ…ああまで見抜けなかったわよ?」


「あー…」


スキル効果の差異、か。


鋼の探究心は森羅系よりレアだってラウラも言ってたし通常のスキルより多分、効果が高いのだろう。


「さすが第8位は違うわぁ」


「あ、はは…実はその件で挨拶に来た次第でした」


「ふふふ…連絡を貰った時は本当に…本当に…嬉しかったわぁ…リョウマさんの雪辱を悠ちゃんが晴らしてくれたみたいで……お姉さんは涙が出そうだったもの」


…こんなに喜んでくれるとは予想以上だ。


「暫定なので近い内に退きますけどね」


「そーかしらぁ〜?私は悠ちゃんがこのままずーーっと第8位のままだと思うけどぉ」


優しく俺に微笑みかける。


「…意地でも代わりを見つけます」


「あらあらあらぁ〜」


一気に呷りグラスを空にした。


…さてと…用事は済んだし帰るか!


「じゃ俺はこれで」


「えぇ〜〜!うそぉ…もう帰るつもりぃ?」


「挨拶に来ただけですし」


「今日のお礼にぃ〜私が奢るし遊んでって頂戴な?皆も喜ぶわぁ」


「仕事の邪魔をしたくないのでまたの機会に」


「悠ちゃん」


「…はい?」


「お姉さんの言うことは聞かなきゃめっ!…よ?」


まるで聞き分けのない弟を嗜める姉のようだ。


「…うーん…ならお言葉に甘えてもう少しだけ」


「うふふ!いい子ねぇ〜」


…ソーフィさんには色んな意味で敵う気がしない。


「ママ〜…『メーラン商会』の件はどーなっ…お」


「ど、どうもっス」


「ユウ!遊びに来てくれたの?」


「やっほーー…ってキューちゃんはいないの?」


麗しく美しい制服を着たキャストの登場だ。


店内が一気に色めき賑やかになる。



〜午後18時40分 フェアリー・キッス〜



ソーフィさんが一件を皆に説明した。


「お手柄じゃんよ」


「ク、クレームで困ってたし助かったっス」


「えへへ!やっぱりユウは頼りになるね」


「これでキューちゃんも一緒だったら完璧だったわ〜…」


スウェーはキューがよっぽど気に入ってるみたいだ。


…今度、連れて来てあげようかな?


「ママが奢るって言ってんだし遊んでけよ…お礼にわたしがサービスすっから!な?」


「お、おー…」


俺の背中を豪快に叩き笑うエイルの表情は営業時の猫被りと違う素の彼女だった。


「エイルよりもわたしの方がいいよね?」


対抗するようにネムが腕を絡ませ上目遣いで見つめる。


いやぁ……両手に花で困っちまうね!


「エイル()()()ってどーゆー意味かなぁ?…ネムちゃんよぉ〜」


「そのままの意味だけど?」


「「……」」


俺を挟んで火花を散らすのはやめて!


「あ、あー…ママ…『メーラン商会』と契約を切るとお酒はどーするっス?」


シャーリィが空気を変えようと質問した。


「そーねぇ…他にも卸売をしてくれるギルドの伝手はあるけどぉ…」


エイルはタバコを吸い、煙を吐き出し答えた。


「ぷはぁ〜…ま、安いっつっても世間一般じゃ結構な値段がする銘柄ばっかだしな」


「『メーラン商会』は西の流通路を仕切ってるんだよね?」


ネムも会話に混ざる。


「うひ〜…腐っても規模がおっきいって厄介だわ」


困ってるのがひしひしと伝わってくる。


商人ギルド…お酒の卸売…ふむ。


「…『オーランド総合商社』に俺が頼んでみるか?」


頼れるGM(レイミーさん)に相談してみよう。


ソーフィさんは目を輝かせ手を叩く。


「なるほどぉ!悠ちゃんはギルドメンバーだしぃ〜…『オーランド総合商社』は『メーラン商会』に並ぶ()()よぅ」


「大手?」


「…所属してんのに知らねーの?」


「うん」


エイルは少し呆れ顔だった。


「『メーラン商会』は昔からの古参…『オーランド総合商社』は比較的、歴史は浅いけどぉ業界じゃ破竹の勢いで急成長した商人ギルドよん」


「へぇ」


「ベルカじゃこの二つが一、二を争う商人ギルドねぇ」


「なるほど」


確かにオーランド総合商社は近代的で素晴らしい。


「…んじゃ早速で悪ぃけど売って貰いたい酒のリストを渡すから納品できっか確認してくんね?」


「任せろ」


エイルがギルド職員に指示を出し発注書のリストを渡された。


ふっふっふっ…役立てそうで嬉しいな!


「世話になりっぱなしだわぁ〜」


「お互い様ですよ」


緊急査問会で力になってくれた恩は忘れない。


「…っつーかユウも手伝って欲しいことがあったら遠慮しねーで言えよな?」


「う、うん」


「そーだよ?」


「マジで!」


皆の優しさに有難くて涙が出そう。


「悠ちゃんは一人で抱え込んじゃうタイプだしぃ…心配なの」


「…そーかな?」


前よりは相談するように心掛けてるんだけどなぁ。


「そーゆー無自覚な一面が母性本能を擽っちゃうんだけどねぇ」


「「……」」


エイルとネムは神妙な顔で頷いていた。


…そんなガキっぽいのかな俺って?


「あたいヒャタルシュメクの攻略と『冥王』と決闘した話が聞きたーい」


唐突にスウェーが喋った。


「え?」


「それな」


「ぼ、冒険者として参考にしたいっス」


「ふふ!わたしたちの本業だもんね?」


多分、俺は一番参考にならない冒険者だと思う。


「…そろそろ営業時間だろ?また今度な」


フェアリー・キッスの開店時刻まであと数分だ。


「ふふふ…デリバリーの件も話したいしぃ…次はゆっくり話しましょうねぇ」


あれって本気だったの!?


渋る四人を嗜めつつ話の流れで今度、一緒に依頼に行く約束をした。


エントランスホールに出ると客の行列を見て驚く。


……大盛況で凄い!



作者のキキです(。・w・。)


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― 新着の感想 ―
[一言] 誰か最近ご無沙汰みたいな
[良い点] やっぱ日常回はほのぼのして良いですね〜(๑•̀ㅂ•́)و✧ 戦闘シーンとかも躍動感があって好きです! 裏で蠢いてるのを見るとハラハラしてて心落ち着かなくなります!w そういう所にすっ…
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