アルマから学ぶ契約者〜契名〜
〜夜20時 マイハウス 庭〜
食に目覚めたアルマは今日も大量の料理を平らげた。本人曰く腹八分目だそうだ……恐ろしい。
我が家の食費は大変なことになりそう。
食器を洗い終え庭先で一服する。
空を見上げると星がよく見えた。
「ふぅ…」
ーーーなに黄昏てんのよ。
「ただタバコ吸ってるだけだよ。ほら」
アルマにタバコの煙を吐き出す。
ーーーにゃ゛!?……しゃああああぁッ!!!
「ご、ごめん」
尻尾を膨らませ唸るアルマ。
…そ、そこまで怒るとは思わなかった。
ーーー……次したら一生消えない引っ掻き傷を顔にプレゼントしてやるから。
「二度としません」
ーーーふん。……でも何百年も一人だったのに…こんな生活がまたできるなんて想像してなかったわ。しかも祟り神の契約者と一緒に……ランダにも見せてやりたいわねー。あいつの驚いた顔……くふふ!
「祟り神、ねぇ。…こいつに殺されかけたけど…契約したお陰で強くなれた。戦えて仕事もできる。…俺にとっちゃ幸運の女神だよ」
俺自身の素の力なんて糞みたいなもんだ。
初期戦闘数値でモンスターと戦ってたら成す術もなく殺されている。
ーーー色々と思うことはあるでしょーけど感謝してるなら『契名』をつけてあげたら?
「契名…?」
ーーーそっか。あんたは知らないもんね。……ふふーん…知りたい?知りたいでしょ。
意地悪く笑う。
ーーーなら今度からはわたしを呼ぶときは麗しのアルマ様と尊敬と畏怖の念を込めて…………にゃ!!?
「………」
ーーーにゃにゃにゃ゛…にゃにゃーーん!!首掴んで…ふにゃ…!?腹を撫で…る…にゃふぅ!!
〜数分後〜
ーーーわ、わかったわよ…!こ、こ、今回は特別に教えてあげるわ…。
「もう撫でなくていいのか?なんなら次は」
ーーー猫権侵害よ!いつかあんたを訴えてやるから覚えてなさい!!
猫権……遂に自分をネコって認めたぞ。
ーーー……こほん。説明するわよ。そもそも契約者ってのは魔物や精霊と互いの命を契約で共有する契りを交わし力を得た人を指す呼称よ。勿論、簡単じゃないわ。知性が高い魔物や精霊は人を見下してるし…力で屈服させたり自身の存在を認めさせなきゃ無理ね。
「魔物や精霊には得がないし最悪だな」
ーーーそう思うでしょ?でも契約者が偶発的に死ぬと契約から解かれた従魔は契約者の力を全て引き継ぐの。そうなった従魔は『神獣』もしくは『神霊』と呼ばれ……神に近い絶大な力を手に入れる。わたしが知ってる限りじゃ契約者が怪我で死んじゃって北の大陸を滅ぼしかけた神獣が居たわね。
「やばいじゃんそれ…」
ーーーそうよ。悠も死なないよーに頑張りなさい。あんたが死ねばそのレベルじゃ済まないわよ。
パルキゲニアの命運を握る30歳……笑える。
「全力で頑張るよ」
ーーー…で本題よ。契名は契約者が従魔に授ける名前で……簡単に言うと契名は真名の代わりになるわ。契名は従魔がその名を気に入れば付けれるけど……祟り神と対話できるんだっけ?
「…できません」
ーーー…親密度は?
「…19%」
ーーー……Lvは?
「………Lv4」
ーーー………話にならないわね。
呆れ顔のアルマ。仕方ねぇだろ!夜刀神の加護でレベルが上がり辛いんだから!!
ーーー先ずLvを上げて対話できるよーにならなくちゃね。頑張って戦いなさいな。
「精進します」
ーーー良い心掛けね。ふぁ〜…寒いし先に中に戻るわ。
……色々、詳しいしアルマは本当に魔王だったのかもしれないな。今は只の可愛いネコにしか見えないが。
「…名前、か」
右手を見る。
「なんて名前がいいのか教えてくれるか?」
勿論、返事は返ってこない。
「蛇……蛇……で女神………ヘビ美とか?」
一瞬、右手が震えた気がしたが気のせいだろう。
「……俺も風呂入って寝よう」
その夜は黒い大蛇に追いかけ回される悪夢を見た。




