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宝箱を開けてみよう!

7月10日 午前7時54分更新



〜夜 マイハウス〜


帰宅次第、新たにエンジがギルドメンバーとして加入する旨と経緯を三人に伝える。アルマはエンジにもちゃんと事情を説明しなさいと助言してくれた……密接に関わる以上、当然の配慮だろう。


エンジは良い子だし吹聴する事はしないと俺も信頼できる。


…因みに指導内容を自慢したらアルマに鼻で笑われた。基礎を活かす教唆の工夫が足りないそうだ。


む、むきぃーー!


俺だって新米師匠だけど頑張ってるもん…ちょっと拗ねて反論したが見事に言い負かされる。


…口喧嘩では勝てる気がしないので強制的にシャンプーの刑を実行してやった。


その後、夕飯を食べ工房に籠る。


鍛治・機械発明・服製作に没頭した。



〜夜21時 マイハウス 地下一階 工房〜



「…まだ宝箱を開けてなかったっけ?」


急に思い出し刺繍魔導具を弄る手を止めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

貴重品(分類不明)

・古びた宝箱×10

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「よいしょ…ちょっと期待しちゃうよな」


中身が非常に気になる。


「ユウさーん」


「お?」


「コーヒーをお持ちしましたよ〜」


オルティナがカップを片手に工房に来た。


「わざわざ悪いな」


「いいえ〜」


…オルティナが煎れるコーヒーは美味い。


粗挽きした豆を均等な粒度になるよう丁寧に抽出し焙煎してくれる。


料理も上手で気配り上手な良妻賢母の見本だ。


「…あれ、この箱は〜?」


「ヒャタルシュメクで拾った宝箱なんだ」


「まぁ〜」


「すっかり忘れてたが開けてみようと思ってな」


「ふふふ…冒険者の醍醐味ですね〜」


「鍵がかかってるし空箱じゃないとは思う」


「ミミックじゃないと良いけど〜」


「ミミック?」


「ダンジョンにはよくミミックって宝箱に擬装したモンスターが頻繁にいますから〜」


「…マジか」


「鍵を開けた瞬間、頭からがぶり!…ってのが常套手段なんですよ〜。結構強いし厄介なモンスターです」


この宝箱は貪欲な魔女の腰袋に収納できたし問題ないな。…今度、魔窟を探索する時は気を付けよう。


「私も横で見てますね〜」


「おー…って距離が近くない?」


「気のせいですよぅ」


体温を感じる距離が気のせいなのか……っつーかデジャヴ?


ま、いっか。


「さてさて」


先端が極細の鍛治道具を使って鍵穴を弄ってみる。


映画だとこーやって…簡単に……ほっ!


かちっと鍵が外れる音がした。


「…ユウさんって鍵開けも覚えてたの〜?」


「いや、見様見真似で適当に」


技術と鍛治の数値が高いお陰に違いない。


蓋を開けた中に汚れた土偶が入っていた。


「…なんだこれ?」


「見た感じ土の人形ですが〜」


鑑定、鑑定っと!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

憧れの土偶

・遥か昔、古代人の子供が憧れた人物を模して作った粘土人形。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


子供が作った粘土人形、か。


特に価値がある物じゃないが捨て辛いし工房に飾って置こう。


次々と宝箱を開けた。


〜20分後〜


「石…瓶…ガラス…古びた缶…」


宝箱の中身は大した物は入っていない。…ま、期待外れだがこんな物だろう。


残すはあと一個だ。


「最後ですね〜」


「ああ」


すっかりピッキングに慣れ鍵穴の細工を外す。


「これは…」


「…魔導飛空挺の模型ですかね〜」


精工な飛行機のプラモデル……中々、男心を擽ぐる良いデザインだな。


一応、鑑定をしとくか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

コンパクト型高駆動飛空挺・試作一号機

・質量変換機を搭載し持ち運びを可能にした一人乗りの高駆動飛空挺の試作機。魔導機関銃と小型波動砲を搭載するロストテクノロジーの結晶だが推進力を維持する浮遊石が発見されず飛空機動炉が未完成のため走行不能。


・19m以上の障害物がない場所で音声認識による質量変換が可能だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


……ふぁーー!?び、びっくりとんでもメカじゃねーかこれ…!


最後の最後に凄いのがきたぞ。


なんでこの宝箱に入れて放置したのか謎だがイクロー然りロストテクノロジーってやばい…浮遊石がなくて飛空機動炉が未完成…よく分からんが飛べないみたいだ。


…そーいえばテオムダルでゲンノスケが魔導飛空挺がどうこう言ってっけ。


オルティナも知ってるのかな?


「オルティナ」


「はい〜」


「魔導飛空挺って知ってる?」


「魔導炉で空を飛ぶ船ですね〜…たしか浮遊石の欠片を核に使ってるとか」


「それって珍しいか?」


「レア鉱石でノーザングリッド付近のメランジュ鉱山でしか滅多に採掘されませんし……こーーんな欠片で数百万G以上するんですよ〜?」


…僅か数㎝程度の大きさで……成る程なぁ。この飛空挺を動かすには浮遊石を入手する必要がある。


機会があれば探してみよう!


それまでは工房の装飾品になってくれ。

空いてる棚の列に土偶と飛空挺を並べる。


「うふふふ〜」


「どうした?」


「…こうして考えると鍛治も錬金術もできるユウさんってすごいなぁ〜と思って」


「ミコトのお陰さ」


俺単体では取り柄のない一般人だ。


…最初の絶望的なパラメーターを思い出すと身震いするぜ。


「そーいえばオルティナはマーシナリーハンドって仕掛け武器を装備してたよな?」


「はいな〜」


「…ちょっと見せてくれるか?」


「いいですよぅ」


作業台に機械甲手を置く。


〜15分後〜


「………」


無言で弄り機能を確かめ構造を把握する。


属性変換装置ってこの丸っこいのか?これだと余計な出力経路のせいで伝達が遅れる…俺なら無駄な重量も省ける……よし!


「鍛え直していいか?」


「鍛え直す?」


「フォルムと変換装置と出力経路を修正すればもっと使い勝手が良くなる筈だ」


「もちろん有り難いですが〜…西都一番の鍛治職人が作った特注品を……」


早速、中期型作製ツールと鉱石を準備する。


「ちょっと右手を伸ばしてくれ」


「あ、はい」


メジャーで採寸する。


…今の俺はやる気満々だ。ファーマンさんに触発されまくってる。


超本気でやってみよう。



〜7時間後 地下一階 工房〜



「…ふぅ」


額を伝う汗を拭い、満足気に頷く。


納得いく品に仕上げたぞ!


軽量化し金属コーティングを施した艶やかなフォルム……属性変換装置の導線の耐久性を上げ出力上限を底上げした。


「使い易さと性能の両立…うん…問題ないな」


いやぁ〜頑張った後の一服は旨い……ってもう朝の5時50分かよ!?


時計を見て驚く。


…ついつい熱中し過ぎちゃった。


「すぅ…すぅ…」


おろ?


椅子に座りオルティナが寝ていた。


作業に没頭して気付かなかったが付き合ってくれてたらしい。


可愛い寝顔を見て思わず笑ってしまう。


「…オルティナ」


優しく何度か肩を揺すり起こす。


「あ、れ…わたしってばいつの間に…」


「完成したぞ」


「ふぇ?」



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