強さの価値 終
〜15分後〜
「ーーーー事の一部始終をカネミツに問い詰めたら…『素晴らしき仕合であった…きっとお主には理解し難い故、語る言葉はない』…って言ったんだ……いや、理解できないよ!?大人が揃いもそろって自分達の立場も考えず決闘してるんだもん!どう理解しろって言うのかな!?」
「すみません…」
俺は私闘の件でラウラに説教を受けていた。
正直に話せば大反対されると思って内緒にしてたのが仇になっちまったなぁ……冒険者の間でトラブルが勃発したのが暴露た原因らしい。
「ヨハネも『どんな処分も受けル。迷惑かけて悪ィ』…とか従順で…もうっ…脳味噌がひっくり返ったんじゃないかって鳥肌が立ったよ」
「…え?あいつが…そうか…ふふふ」
「〜〜っ!なんで笑ってるのかな!?」
「す、すみません」
ラウラが怖いよぅ…ご立腹だよぅ…。
「僕が受注拒否の連絡を悠にちゃんとしてれば……もうっ!」
「ま、まぁ終わったことだし…無事に帰って」
「………」
「とっても反省しています」
…綺麗な顔だから怒ってると迫力が半端ないぜ!
「……悠が戦った原因は分かってるよ」
恐る恐る様子を窺っているアイヴィーとオルティナを一瞥しラウラは呟く。
「あー…」
「それに彼を御し切れず暴走を許したギルド側の体制に一番問題がある……でも、僕には正直に話して欲しかった」
「……」
「…親友でしょ?」
そんな悲しい顔をされると辛い。
闘技場の医務室でラウラが泣いた時を思い出した。
「その、なんだ…悪かった」
頭を掻きつつ素直に謝る。
「…悠は自分が想像してる以上に影響力がある。君を慕い憧れる冒険者も大勢、増えた」
そうなのか?全然、そんな風に感じないけど。
「意図せず注目を集め騒ぎになってしまう事もある…だ・か・ら…何かあれば僕を頼って逐一、相談しろってこと!分かった?」
俺の頰を抓り聞き分けのない子供を叱る母親のように告げた。
「そ、そうさふぇていふぁふぁきまふ」
「まったく…」
漸くラウラの顔に笑顔が戻った。
「……もう怒ってない?」
アイヴィーがラウラに尋ねる。
「あ、ごめんね…急に来て吃驚させちゃったね」
「…何かあったのですか〜?」
「なんの騒ぎだっつーの」
ラウラはアルマを見て驚く。
「本当に喋った…半信半疑だったけどアルマが緋の英雄譚の『曠野の魔王』なのかい?」
…俺がヒャタルシュメクに行ってた間に教えたってアイヴィーが言ってたっけ。
「まあね。前に来た時はネコを被ってたのよ〜」
「…猫だけにな!」
冷たい視線が四人から飛んできた。
あれ…面白いよなこれ?
「あのバカは放って置いて何があったの?」
ひどい。
「それはーー」
ラウラが顛末を語り始めた。
〜数分後〜
「め、『冥王』と喧嘩…」
「ふぅ〜〜ん」
「…また隠れてそーゆーことをしてた」
話を聞いた反応は三者三様だった。
「『金翼の若獅子』としては大問題ですよね〜…」
「…噂が広まる前に情報規制したけど定例会議で間違いなく議題に挙がるね…絶対にユーリニスは嗅ぎつけると思う」
「大問題って?」
「十三翼が決闘で負ければ地位を失墜するんだ」
「…所属登録者が前任者に挑んだ場合だろ?」
「それは入れ替え制の話で今回は違う。十三翼の特権適用は実力に起因している…その強さが脅威で抑止力でなくてはならない。一度でも敗北すれば資格は剥奪され他の十三翼候補者に座を明け渡すんだ」
俺は候補者じゃないぞ。
「この場合はどうなる?」
「難しいな…過去、初めてのケースだし」
「おうふ」
「定例会でヨハネがどう申開きするか…次第だね」
「…こんな問題になるなら軽々しく挑発しないで欲しかった」
「ふふふ……いい勉強になったかな」
「うっ…」
ぐさり、と皮肉が突き刺さる。
「でも、悠は悪くない。…ヨハネの喧嘩っ早い性格と言動は有名だし発端の挑発行為を見ていた証言者が大勢いる。……僕の注意勧告を無視し自分の地位と立場を理解しなかった思慮の浅さが原因だろう」
辛辣なラウラの感想だった。
「タイミングが良いのか…悪いのか…明日は定例会で父もさっき帰って来た」
「ゴウラさんが?」
「ファーマン親方の捜索も成功したみたいだよ。一緒には来なかったけど明後日には帰って来るってさ」
明後日、か。
まだ一度も会ってないし巌窟亭に挨拶に行こう。
「勝った負けたで大袈裟ね〜…弱っちいのに身の程を弁えないのが悪いのよ」
アルマが呆れ口調で喋る。
「『冥王』の強さは有名なんですけどね〜…ユウさんが規格外に強いだけで」
「…アイヴィーは悠を監視する必要性を本気で考えてるから」
「奇遇だね。僕もだ」
二人が睨む。
あっれぇ〜?どんどん俺の人権が消えてくぞ〜。
「…っと話が逸れたね。…遅くに家に訪ねた本題は明日の定例会議に参考人として悠に参加をお願いするためなんだ」
「俺?」
「ヨハネに勝った当人だし」
当事者で拒否権は…当然、ないよな。
「あー…了解だ」
「アイヴィーも行く」
「心配なので私も〜」
「…俺は子供じゃないぞ?」
「副GMとして当然の義務」
「うふふ〜」
断固として同行するつもりらしい。
「仕方にゃいわね〜…明日の稽古は中止にしましょっか」
「まぁいいけどさ…ラウラはこのまま家に泊まってくか?」
「え」
「!」
「夜も遅いし」
「い、いいの…?」
「別に問題ないだろ」
「そ、そうだね!男同士だし!」
「……」
にこにこ嬉しそうなラウラとは対象的にオルティナが口を尖らせていた。
「寝巻きはちょっと大きいが俺のでいいか?」
「…寝巻きを…ぼ、僕に…あう…」
…何故、ラウラは頰を赤らめ乙女っぽい仕草をするのだろう。
「せっかくだし一緒に…ね、寝よ」
「ラウちゃ〜〜ん!私がお部屋に案内するね〜!」
オルティナが腕を強く引っ張る。
「…僕は別に悠の部屋でも問題ないけど」
「うふふ〜…それを黙って見過ごせと〜?」
「?」
二人のやり取りを見て訝しがる俺にアルマは呆れていた。
賑やかな夜が更けていく。
ヨハネに勝利した事実を少し甘く考えていたな。定例会議かぁ…これ以上、面倒なく終わって欲しいぜ。




