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強さの価値 ④

6月15日 午後14時22分更新



〜同時刻 カーネギー草原〜


体中が熱ぃ…心臓の鼓動がはっきり聴こえる……こりゃ金獅子に負けた時と一緒かァ…?


口ん中が血の味で咽せ返るゼ……俺ァ…あの野朗の一撃を喰らって………ああ゛っ!?


…糞、糞糞糞糞糞糞糞糞糞ッ!!


こんな傷で倒れったっつーのか…この俺が!?


畜生…殺す…殺してやる…!


俺は強ェんダ…弱くねェ……臆病じゃねェ!!


「…お前の負けだな」


今……何て言ったコイツ…?


あの時の金獅子とーー!



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『…お前ぇの負けだなぁ』


『ふぅ…ふぅ…まだっ…だっ!』


『んーー…なんつーかまぁ…ヨハネの攻撃は怖くねぇーんだよなぁ』


『ッんだと…!?』


『必死さっつーか…意志がねぇっつーか…いや殺気は漲ってけっどな?』


『…畜生っ…畜生っ…』


『こりゃ助言だが強くなりてぇーなら()()()()()見つけたほーいいぞ』


『背負う…もの…?』


『おう!重たけりゃ重いほどいい』


『……意味がわかんネェ』


『がはははは!分からねーか…そっか』


『……』


『ま、三度目はもっと強くなったら相手してやる』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



……修羅場ぁ何度も潜り抜けてもどんなに鍛えても…結局、答えは見つからねェ…!


相手を叩き伏せ殺す…最後に立ってる奴が強い…不純物は要らねェ……結局はそうだろーがっ!?


…なんでテメェは()()()に認められてんダッ!?


気に食わネェーんだヨ!


ブッ殺してやるゼ…クロナガユー…!!



〜同時刻 カーネギー草原〜



立ち上がったヨハネは正気じゃなかった。


「…殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…」


呪詛のように殺意を口遊み血走った瞳で睨む。


「……」


土が荒波のように畝り靄が噴き出す。



覚醒(バースト)ォォォォ!」



周囲に影響を及ぼす魔力の奔流…これが十三翼の覚醒…桁が違うな。


青い靄をローブのように纏い伸びた角と憤怒に染まる荒々しい顔は筆舌し難い風貌に変わった。


巨大化した体…鎌を携える姿…死神にも見える。


…冥王…正に二つ名通りだ。しかし、何故だろう。


「はっ…負ける気がしないな」


「………」


禍面・蛇憑卸を発動させる必要すら感じない。


「30秒で決着をつけてやるよ」


切っ尖をヨハネに向け笑う。


「クソ契約者がァァァア!!?」


慟哭するヨハネの姿が哀れに見えた。


何もない…空っぽなんだよこいつは。


強さを追い求めても強くなる()()がない怪物、か。


「倶利伽羅剣」


燃ゆる大獄丸を振り翳し走る。


「グランド・デス…!」


靄が虫・小動物のHPとMPを根刮ぎ刈り奪う。


「蛇縄絡」


奪い取られたら奪い返せば良いだけだ。


HPが断続的に回復し続けた。


真神樂蛇も使いたいが四日経ったっけ?…まぁいっか!使っちまおう。


「禁呪・真神樂蛇」


流血し魔法陣が宙に浮かぶ。

浮遊したヨハネが繰り出す怒涛の攻撃を回避した。


「ーー主!」


「やっほ〜〜…ってうわっ」


「…お腹空いた…って言ってる場合じゃない?」


「ハク!シロ!ラン!力は戻ったか!?」


「万全で御座います」


「元気いっぱい!」


「…ご飯を食べればもっと力を出せる…」


ランはどんな時もぶれないなー…。


「彼奴を地面に叩き落としてくれ!」


「御意!」


「いっくよ〜」


「…頑張る」


三人は其々、蛇を象る錫杖を握り攻撃を開始した。


「…ンだッゴラァ!」


「主に歯向かう己が愚かしさを呪え下郎」


錫杖の猛撃を防御しヨハネは反撃に転じる。


「ちっ…エクスキューショ!?」


戦闘技を中断し蹌踉めく。


「ほいっほいっ!」


手痛い連撃だった。素早い連携に隙がない。

真神樂蛇を召喚した時点で一対一の決闘ではなく四対一の戦闘に変わったのだ。


「えい」


空中で一進一退の攻防が繰り広げられる。


「ああああああ゛ーー!?…摩訶鉢特摩ブルータスゥ!」


青い靄は上空を覆い嵐と雷が降り注ぐ。

スキルを最大限に解放したようだ。


怒る冥王の熾烈を極めた攻撃が三人を襲う。


「これは厄介」


「ふんっ」


「…マスターが待ってるし言霊いっちゃう?」


三人は頷き呪言を唱えた。


「「「荼枳尼印法・禁毘羅棒」」」


頭上に数珠を鎖のように巻いた巨大棍棒が出現しヨハネを殴る。


「……ぐうぅぅっ!!?」


ガードするも衝突の勢いは抑え切れず地上に墜落、土煙が爆散する。


「今で御座います」


「決めちゃって!マスタ〜」


「ぶい」


倶利伽羅剣解除まで残り14秒…全身全霊の奥義を叩き込んでやるぜ…。


砂塵が旋風となり一直線に疾走する。


「……俺は強ェんダ…お前なんかに負けねェ……ブッ殺してや゛るっ…殺じでやルァアアア!!」


「忿怒荒神流」


「グリーヴァファング・ザ・ワールドォォ!!」


鈍い金属音が鳴り炎が刀を燃やす。


「奥義」


宙に跳ぶ。一瞬、ヨハネと視線が交錯した。


これで決着だ馬鹿野郎。



「ーー神度剣!」



神速の連続剣…百折剣を超える斬撃の暴風は纏う靄を霧散させ黒い花が乱れ舞った。


大太刀状態は抜刀し斬撃の余波で相手を無惨に切り刻むが二刀の場合は違う。圧倒的な攻撃速度で回避と防御の暇を与えないのだ。


「………」


武器を仕舞う。


覚醒が解け血達磨になったヨハネが吐血する。


血の涙が頰を伝い一言だけ呟いた。


「…俺とテメェの…何がっ…違うンだヨ…?」


そのまま意識を失い、倒れた。


「お見事でした」


「よゆーの勝利だね〜!」


「…お腹ぁ空いた…」


「三人ともありがとな」


「いえ!…して此奴に止めは?」


止め、か。


「瀕死だけどまだ息はあるみたいだよ〜」


「…食っていい?」


ランは涎を垂らしヨハネを凝視していた。


「だ、ダメ!」


慌てて止める。


「…とりあえず一旦、解散だ」


「御意」


「またね〜」


「…ご主人様…次はお肉を準備してね?」


光の粒子を残し三人が消える。


「黒永殿」


カネミツさんだ。


「見事な果し合いで御座った…立会人として其方の勝利を宣言しよう」


足元に倒れたヨハネを一瞥し問う。


「…して『冥王』は如何致す?」


殺すのか?…って意味で聞いてるのだろう。


俺は無言で超特製エックスポーションの小瓶の蓋を開け液体をヨハネにぶち撒けた。


「!」


瞬く間に傷が塞がり呼吸音が聴こえてくる。

その内、意識も覚ます筈だ。


…俺は俺の()()()を通させて貰う。


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[一言] ぐっじょぶです。
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