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強さの価値 ②

6月11日 午後16時37分更新



〜同時刻 金翼の若獅子 GM執務室〜


「ふふふ」


ラウラはご機嫌な表情で仕事に精を出していた。


「二人で遊びに行く……これってデートだよね?どんな服を……って駄目だ!女だって真実を伝えてない……」


机を叩き書類の束が崩れ顔が曇る。


「スカートなんて何年も履いてないな…」


髪を解き鏡の前に立つ。


「…お洒落な服を着て…悠と腕を組み一緒に買い物に行って…美味しい物を食べたり……嗚呼、楽しいに決まってるよ!」


性別を偽ってきた弊害が生じていた。


「ちゃんと言うべき…?」


自問自答するも鏡の中の自分は答えない。


頭では理解しても心が臆病になってしまう。

今の距離が心地良く甘んじている。


結果、後手に回ってしまう事も多いのが事実だ。


「……いや!先ず()()()()を実行すべきだ」


…作戦実行の前に性別を偽ってることを正さなくてはいけない現実と向き合うべきだ。恋愛になるとラウラは冷静と言い難い思考回路に陥る。


「練習しておかないと」


鏡の前でラウラはポーズの練習をする。


「こ、こうかな…?僕はーー…じゃなかった。あ、あー…こほん!私は…」


「失礼します」


執務室にギルド職員が入ってきた。


「!?…あっあぁ…ゔん…何かな?」


髪を結び取り繕うような低い声で返事をする。


「クロナガユーのソロオーダーの件でご確認したいことが…」


「悠の?」


「ヨハネ様の依頼は受注拒否扱いになりましたよね?」


「当然だ…公共の場での侮辱・挑発行為にあんな喧嘩の依頼を許可できるわけがない。ヨハネにも散々、注意勧告をしたよ」


「……それがその…」


職員が言い辛そうに口籠もる。


「?」


「…二人が決闘されてると騒ぎになってます」


「なんだって!?」


「ヨハネ様の部下が吹聴し…それにクロナガユーを擁護する冒険者が加わって乱闘が起きそうな雰囲気でして…」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『べ、別に何も』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


怪しかった悠の挙動と言動をラウラは思い出す。


「…騒ぎは何処で?」


「二階です」


「直ぐに向かう」


ラウラは上着を羽織り執務室を出て行った。



〜同時刻 カーネギー草原〜



「ハッ…ハッハッ!フィジカルじゃ勝てねェナ…この化け物め……ぺっ!」


血が混じった唾をヨハネが吐き捨てる。

額が割れ流血し右脇腹には青黒い痣ができていた。


「降参か?」


流石に強い。

大抵は一撃か二撃で決着がつくが…動きも速いし鎌を使った不規則な攻撃が厄介だった。


太腿と左肩から血が流れている。しかし、俺の方が優勢だろう。


…気掛かりは一つある。


戦闘技も魔法もスキルを使わず単純な肉弾戦に興じる理由が不明だ。


美学ってやつか?


…ま、俺には関係ない話だ。これ以上、付き合う義理はないしこっちは遠慮なく使わせて貰うぜ。


「お前は強ェ」


「…あ?」


「だが…『金獅子』と競りあった実力はこんなもんじゃねぇ筈ダ…」


「……」


「…こっからは…ハハァ!カードを曝け出すゼ?」


場の空気が変わった。


臛臛婆プルート


…プルート?


青白い靄が周囲を漂い不思議な悪寒が走る。


「!?」


みるみるヨハネの傷が治癒し全快していく。


徐々に変な気怠さを感じ始めた。


頭痛?状態異常の攻撃…いや俺には効かない。


「ファントムサイス」


「…!」


靄を纏った鎌を避けるが体が思うように動かない。


「(…お、重い!)」


明らかに変だ…なんだこれ?


「…動きが鈍いんじゃねーかァ!?」


一旦、大幅に離れると頭痛と怠さが消えていく。


「どうしタ?降参か?」


ヨハネを中心に青い靄は動いてる。


ペナルティの引き金を引き遠距離から攻撃するも器用に鎌で銃弾を弾かれた。


……チッ…6発撃ち切ったか!


次の銃弾が精製されるまで時間が掛かる。


「デッドサークル」


大鎌を振り回し靄を撒き散らした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

HP300000/410000 MP14000/21000

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


HPとMPを確認して異変に気付いた。


10万近いダメージを受けたと思えないしMPもそこまで消費してない筈だ。


あの靄はまさか…!


「…HPとMPを吸収してるのか?」


ヨハネは嬉々とした笑みを浮かべた。


「僅かな攻防で臛臛婆の効果に気付くか……さすが『阿修羅』だナ」


「……」


「この靄は精気を奪う地獄の煙…奪った精気は還元され俺のHPとMPを癒してくれル……ってなんだァその貌はよぉ…?」


俺は笑った。


「次はこっちの番だ」


淵嚼蛇が燼鎚・鎌鼬鼠を強化する。更に剣者の理を重ね攻撃力を増幅させた。


…へっ…自分がダメージを被るのも慣れたもんだ。


「極光斬・断崖…!」


俺とヨハネを巻き込み大爆発が起きた。


臛臛婆の靄を爆風で吹き飛ばす。


得意の自爆戦法だ。


火傷で皮膚が痛むが俺とヨハネはその場で堪え睨み合う。


「て、めぇ…」


難しくあれこれ考えても仕方ない。


単純明快にシンプルに勝つ。


…ヨハネは家族を侮辱した…全身全霊を持って捻じ伏せる…それだけなのだ。


脳筋原始人の力を見せてやるよ!


「プルー…ッぐがっ!」


燼鎚が腹筋を貫き動きが止まる。そのまま三連打を浴びせた。


血反吐を吐くヨハネの瞳が燃えている。


虎虎婆(エピータフ)ゥ!」


蔓延する靄に構わず銃弾で左膝を撃ち抜いた。


「ッ〜〜!?」


そして炸裂し肉片が弾け膝から崩れ落ちる。


回復してるな…更に畳みかけるぞ!


「ふんっ!」


「ごばぁ…ぐあああッーー!」


撃鉄を起こし燼鎚を爆発させた。


衝撃で吹き飛ばしたヨハネを大獄丸に持ち替え追撃に向かう。


「……調子に乗ってんじゃネェェェ!!」


鎌を握り構え直し迎撃体勢を取った。


…感覚が昂ってるせいか動作がスローモーションに見えた。爆発で焼けた草木灰が…飛び散る汗と血が…鮮明に瞳に映る。


二刀状態で両手に大獄丸を携え伸びた鎖鎌をいなし火花が散る。


「ーーふっ!」


袈裟掛けに払い退けた。



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