休日を満喫しよう!⑦
6月8日 午前8時45分更新
〜同時刻 ファンファン広場〜
俺は首の骨を鳴らす。
並んでる途中に騒ぎを聞いて戻ってみれば糞がアイヴィーに集っていた。
「あっ…」
「へっ!今更謝っても許さねーぞ」
「おい」
「…あぁなんだぁてめぇ!?」
俺に気付いた一人が凄む。
「いっぐぁ…は、離し…が…」
首を掴み片手で持ち上げた。
「……俺の娘に武器を向けやがって」
酸欠で意識を失った男を投げ飛ばす。
「この世に未練はないってことだな?」
額に青筋が浮かび黒い瘴気が漏れ出す。
「…な、なんだよこいつ…」
「私のお義父さん」
「ち、父親ぁ!?」
「…近寄んじゃねぇ!」
刃先をひん曲げ、破壊する。
「お、俺の剣がっ…」
「化け物だ…やべぇよこいつ…」
「…てめぇ俺たちが誰か分かってんのか!泣く子も黙るうぎゃ!?」
顎を掴み間近で睨む。
「ひ、ひぃ…ひひぃっ…!」
小便を漏らし情けなく男は震える。
「…今から死ぬ奴に興味があると思うか?」
耳元で囁き過剰に脅した。
右拳を万力を締めるように握り締め威嚇する。
「…か、か、勘弁し、してくだひゃっ…」
「……アイヴィー」
「うん」
「こいつらは?」
「あそこの男の人を殴って女の人を脅してた悪党」
「…釈明の余地もない屑か」
死んでも泣く奴はいないだろう。
「『ネフ・カンパニー』のギルドメンバーっても言ってたから」
「!」
合縁奇縁とゆーか…まさかここで出会すとはな。
「…一言一句漏らさず聞いて約束しろ」
「ふ、ふぁい…」
「二度と他人に迷惑を掛けるな」
「わ、わふぁりましたっ!」
「四人とも騎士団に出頭しろ」
「…りょうふぁいです…!」
「今日限りでギルドも辞めろ」
「えっ…」
「約束を破れば何処に居ようと探し出し息の音を止めてやる」
「………」
「俺は必ず約束は守るぞ……分かったか?」
「い、い、言うとふぉりにじます…や、約束しま゛すぅ…約束…じますがらぁ…!!」
男は涙を流し何度も何度も言葉を繰り返した。
こーゆー輩は考える力が足りない…自分が横柄に暴力を振るっても許されると勘違いしているのだ。
それ以上の暴力に晒される危険を考慮すべきなのに……因果応報ってやつだな。
「悠」
「おっ」
アイヴィーが上空を指差す。
…ワイバーンに跨った第三騎士団の竜騎士部隊だ。
誰かが通報したのだろう。
「出頭する手間が省けて良かったな」
「「「……」」」
失神した一人を除き三人が項垂れ力なく頷いた。
〜午後18時20分 第6区画〜
ファンファン広場での騒動も解決し帰路につく。
アイヴィーの勇気ある行動に第三騎士団の騎士も感心し褒め称え親としては鼻が高い限りだ。
…しかし、心配でもある。
「あまり無茶しちゃ駄目だぞ」
俺は手を繋ぎ隣を歩くアイヴィーに言った。
「何が?」
「広場でのことだ」
「あんな連中に負けない」
「まぁそれはそうだが……」
「悠もきっと同じことをする」
「う、うーん」
そう言われると何も言い返せないよなぁ。
「…お義父さんの娘だから仕方ない」
「え」
「子供は親の背中を見て育つ……アイヴィーもお義父さんの背中を見てるから」
普段は悠って呼ぶアイヴィーが…お、お義父さん!?
「お、おう」
「ん」
照れ臭いってゆーか嬉しいってゆーか…自然に頰が緩んでしまう。
「…今日は楽しかったか?」
「すごい楽しかった!」
笑顔が眩しい。
「悠は冒険者ギルド以外の仕事も頑張ってる…どんなギルドなのかずっと気になってた」
「そうだったのか」
…だから巌窟亭とオーランド総合商社に行きたいって言ったんだな。
「私は悠みたくなりたい」
「俺?」
「…強くて優しくて…誰かのために一生懸命に頑張れる悠がかっこいいから」
あ、天使だわ。
「アイヴィーに褒められて俺は最高の気分だよ」
「そう?」
「ああ!世界一の幸せ者だ…よっと」
「あっ」
抱き抱え肩車をする。
「…ちょっと恥ずかしいから」
「親子なんだし気にすんな」
「ん…」
「これからもずっと一緒だ」
「うん!」
「そう言えばクレープを食いそびれちゃったな」
「仕方ない…でもアルマ師匠とオルティナとキューに買ったケーキのお土産がある」
「一瞬で食べちゃうなきっと」
「…アイヴィーは悠がアルマ師匠に猫じゃらしを買おうとして吃驚したから」
「喜びそうだと思ったんだけどなぁ」
「……顔を引っ掻かれるよ?」
家に帰り団欒を満喫し休日を締め括った。
次の日は午前中に農作業を行い野菜畑にとうもろこし・胡瓜・枝豆を植えてみた。午後は設計図を参考に伝線を繋ぎ回路の修復は完了……第一関門は突破できたので次は動力部を弄ってみよう。
猛稽古で疲れたアイヴィーとキューは夕飯を食べ早々と寝てしまった。




