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休日を満喫しよう!⑥

6月5日 午前8時28分更新



「ドレスを見てくるから」


「ごゆっくりぃ〜」


待って!俺を一人にしないでぇーー!


アイヴィーとジャージィは店の奥へ消えていく。


「…悠ちゃんってばいい筋肉してるわぁ」


「い、いや…ジョーさんには負けますよ…?」


「遠慮しないでジョーちゃんって呼んでぇ」


「は、はは…あはは…」


躙り寄るジョーさんから距離を取る。


「ちょ〜っと鈍くて…庇護欲が注がれる私好みのタイプだわぁ」


お願いします!土下座するんで勘弁して下せぇ!?


「エリちゃんが自慢したくなる気持ちがわかるぅ〜」


「…エリちゃんってエリザベート?」


「そうよぉ!うちの超お得意様だからねぇ〜」


「へぇ」


「エリちゃんが着てる服は龍革を鞣しマンティスコアの紡糸で編んだ鎧より強固で動き易い最高のオーダー品だもの〜」


「鎧より強固?」


「まぁ一流鍛治師が鍛えた武具には劣るけどねぇ〜…でも破れたり貫通してもある程度は()()()()()しちゃう『混在刺繍法』で縫ってるのが……つ・よ・み」


非常に興味が惹かれる内容だ。


「初対面で不躾ですが…服職人の技術について話を聴かせて貰っても良いですか?」


「普段なら断っちゃうけどぉ悠ちゃんはタイプだしぃ特別よぉ〜……うふ!」


……違う意味で破壊力抜群のウィンクにノックアウト寸前だぜ。


〜10分後〜


「ーー…ってな感じかしらぁん」


めちゃくちゃ勉強になったし疑問も解決した。


一流の服職人がモンスターの革と糸や血管を加工し製作する服は鎧にも負けない強度・耐久力・防御力を誇るらしく革と素材が癒着し限度はあるが破れても元通りになる。


これは混在刺繍法って特殊な技術で素材の良し悪しを見極める能力と高い技術・生産のパラメーターが要求されるそうだ。


…俺に打ってつけの技術やんけ!


普段、愛着してるヘクサの衣装がルウラの刀氣剣影で貫通しても()()()になった理由が判明した。


やっぱりミドさんは凄い服職人だったんだなぁ。


「教えてくれてありがとうございます」


「悠ちゃんの噂は色々と知ってるけどぉ服職人にも興味があるのかしらぁ?」


「ええ」


「ならぁ〜…手取り足取り舐めまくりで私が指導してあげてもいいわよ〜ん」


な、舐めまくり!?


「…お、お気持ちだけで十分です」


「ふぅ〜謙虚〜〜!」


ジョーさんって新宿ニ丁目がきっと似合いそう。


「…でもアイちゃんが明るくなって私も嬉しいわ」


「え?」


「辛いことばっかだったでしょうけどぉ……優しいお義父さんができて今は凄く幸せそうじゃないの」


「……」


「私も元冒険者だからねぇん〜……『金翼の若獅子』に所属もしてたのよ」


「元冒険者だったんだ」


「この店を出すための資金稼ぎでちょっとね」


ジョーさんの鍛えられた肉体や風貌を考えると強い印象を受けるな。


「お待たせ」


戻ってきたアイヴィーは蝶をイメージした刺繍が可愛い薄いピンクのドレスを着ていた。


「似合ってるぞ」


「かわいい?」


「かわいい」


「お姫さまみたい?」


「よっと……世界で一番かわいい俺のお姫さまだ」


「えへへ!」


抱っこして笑う。


その様子を見てジョーさんは嬉しそうだった。



〜10分後〜


「………」


会計を済ませようとしたが値段を見て一瞬思考がフリーズする。


よ、49万Gぃ…?


なにこの値段!?綺麗なドレスだけど高過ぎだろ。


「レアな素材を使ってるって言ったじゃん」


ジャージィは俺の心を見透かすように喋る。


「は、払えない訳じゃないぞ」


金額にびっくりしただけだもん!札を数えて渡す。


「まいど〜」


因みに俺が着てる服は上下合わせて1万Gしない。


専用の袋に買ったドレスを畳み手渡される。


「ほら」


「ありがとう」


…この笑顔の価値は何物にも勝るけどね!


ーーーーーーーーーー

所持金:1億4600万G

ーーーーーーーーーー


「また遊びに来てねぇん」


「うん!」


ジョーさんに見送られプリンセスドールを出た。


〜第11区画 ファンシーストリート〜


夕飯前だが腹が空いた。

甘い焼き菓子の匂いが漂ってるので余計に食欲が刺激される。


「小腹が空いたし甘い物でも食べようか?」


「食べたい」


すっかりご機嫌なアイヴィーが頷く。


「この先に人気のクレープ屋さんがあるよ」


「行こうか」



〜午後17時20分 第11区画 ファンファン広場〜



ベンチに座りクレープを買いに行った悠を待つ。


ファンファンと呼ばれる妖精の彫像が目印の広場には露店が並び大勢の人で賑わっている。


「ーーきゃっ!」


突如、女性の短い悲鳴が聴こえた。

一気に場が緊張に包まれる。


「?」


四人組の粗暴な傭兵が男性を殴り飛ばしたのだ。


「…ぐっ…痛ぇ…」


「き、急に何をするんですか…!?」


「兄ちゃんの肩がアニキにぶつかったんだよ」


「謝るならまだしも無視して行っちゃおうってのはダメでしょ〜」


妙な因縁で詰め寄る男を女性は睨む。


「…まぁまぁお前ら落ち着けよ」


兄貴分の男が下卑た笑みを浮かべ二人に詰め寄る。


「慰謝料を払ってくれりゃそれでいーじゃねぇか…なぁ?」


「ふ、ふざけないで!騎士団を呼びますよ!?」


「俺たちは『ネフ・カンパニー』のギルドメンバーだぞ」


「!」


女性の顔が青褪めた。


「捕まっても保釈金を払えば痛くも痒くもねぇ」


「その後が怖くねーならどうぞ騎士団を呼んでくれや」


「…あなた達みたいな屑に払う金なんてないわ!」


「威勢のいい姉ちゃんだ…気に入ったぜ…金は要らねーからちっと付き合えよ」


「は、離して!」


「か、金を払うから…彼女の手を離して下さい…」


「じゃあ100万Gな」


「…は、はぁ!?」


殴り飛ばされた男性は愕然とする。


「慰謝料に詫び料込みで安いもんだろ?…払えねーならこの姉ちゃんの体で払って貰うだけだしよ」


他の通行人は怯え遠巻きに見守るしかない。


嫌悪感が募る光景にアイヴィーの眉が吊り上がる。



「やめて」



毅然とした立ち振る舞いで渦中に飛び込んだ。


「……あぁ?」


「なんだこのガキ…」


「その女の人の手を離して消えて」


見知らぬ少女に諌められ四人の輩は顔を見合わせ笑う。


「ははははは!随分と勇気がある嬢ちゃんだな」


「俺たちゃ子供にも容赦しねぇぞ?」


「いや…待てよ…紅い瞳に銀髪…こいつ冒険者ギルドで有名なヴァンパイアのガキじゃねーか?」


「まさか嫌われ者の吸血鬼に注意されっとはよぉ」


「………」


吸血鬼と聴いて周囲が騒つき奇異の視線を一身に浴びるも堂々とした正義感に溢れる姿は変わらない。


「冒険者なんて強いのは()()()()だけだろ?」


「…ヴァンパイアのガキは珍しいし攫って変態の金持ちに玩具で売りゃあいい金になるぜ」


標的を変え市街に関わらず四人は武器を抜いた。


「……」


比較にならぬほど実力で勝るアイヴィーは微動だにしない。


「あっ…」


「へっ!今更謝っても許さねーぞ」


謝るつもりは一切ない。


…アイヴィーは知らぬ間に四人の()()()()()()()に気付いただけだった。


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