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休日を満喫しよう!②

5月27日 午後12時35分更新



〜2時間30分後 地下一階 工房〜


「…難しい」


はんだごてに似た修理道具で壊れた機械を弄る。


「あちちっ!」


配線を繋ぐもショートした。


専門家じゃないしネットで微妙に覚えていた知識を思い出し試行錯誤を繰り返す。鍛治と技術の数値が高いお陰で細かい作業が苦にならないのは幸いだ。


「簡単に直せたらミコーさんも苦労してないか」


こーゆー難題は寧ろ燃える。


絶対に成功させてやるぜ!


「…っと…そろそろ昼か」


汚れた手をタオルで拭く。稽古で皆も疲れてるだろうし昼飯は俺が支度しよう。


…午後はアイヴィーと遊びに行こうかな?


「たまには家族サービスもしないとな」


階段を登りながらそんな事を考えた。



〜午後12時20分 マイハウス リビング〜



「おいふぃれふ〜〜!」


「肉が…がつがつがつ!ごくっ…足りにゃいけどね」


昼飯に作った塩焼きそばはオルティナに大好評!


「塩漬けのレモンと魚介類の出汁で味付けしてるんだ」


「さっぱりしてますが塩と磯の風味が効いてて私好みです〜」


「アイヴィーは茶色の麺の方が好き」


茶色の麺とは自家製のウスターソースで作るソース焼きそばの事だろう。


甘熟ツリーで収穫した数十種の果実を漬け込みトマトや塩に砂糖に酢……他にも各種香味料に酒を混ぜた自信作である。仲良くしてる店のおばさんに教えて貰った基本レシピを改良したのだ。


「アイヴィー」


「ん」


「午後は俺と出かけよう」


「『金翼の若獅子』に?」


「遊びにだ」


「……遊び?」


「ほら、なんだ…その……普段は俺も依頼ばっかであまり一緒に遊ぶってなかっただろ?」


照れ臭くなり鼻の頭を掻いて誤魔化す。


「…いく!!」


顔を輝かせアイヴィーが立ち上がる。


「よかった」


「着替えて準備してくるから!」


「お、おう」


勢いよくリビングから飛び出す。


…あんなに喜んでくれるとは驚いた。


「冷静で強いし偶に忘れちゃいそうになりますがアイちゃんはまだ10歳の子供だものね〜」


「……」


「…ま、特別にアイヴィーの午後の稽古は休みにしてあげるわ」


「親子水入らずで楽しんできてください〜」


「お土産買ってきなさいよ」


二人の配慮が滲み入るなぁ。


「…悪いな」


ーーきゅ、きゅー!きゅきゅう!?


一緒に連れてけと言わんばかりにキューが鳴く。


「キューとオルティナは午後も稽古よ」


「あう〜…」


ーーぎゅあぁぁぁぁっ…!


項垂れて嘆くオルティナとキューを見ると予想以上に厳しい内容みたいだ。


「そんなにキツいのか?」


「マギ・ドールの猛攻に容赦なく飛んでくるアルマ師匠の致命傷級の魔法…瀕死寸前まで追い込まれ回復したら延々と同じ訓練を繰り返し最後は精神が擦り減るレベルの駄目出し……きっと悪魔でも泣いて逃げ出しますね〜」


遠い目でオルティナは呟く。


「うわぁ」


デビルメイクライ…ってか?


「腹ごしらえもすんだし午後も頑張るわよ〜!」


オルティナやキューとは対照的にやる気満々のアルマは意気揚々と稽古場へ向かった。


「お〜…」


ーーきゅ〜…。


二人の後ろ姿が悲しい。


「…待ってる間に食器を片付けるか」


キッチンで食器を洗いつつアイヴィーを待った。



〜10分後〜



「お待たせ……可愛い?」


丈の短いゴシックドレスを翻しニーソックスとの境目で綺麗な太ももの素肌が見えた。


「文句なしで可愛いぞ」


「ふふふ」


本当に天使のように愛らしいぜ!


…ただ父親としてスカートが短いのは非常に不満だ。


もしアイヴィーをやらしい目で見る変態野朗がいたら両眼をくり抜いてやる。


「最初はどこに行きたい?」


「『巌窟亭』」


「え」


「まだ行ったことがないから」


「遊ぶような所じゃないぞ。いいのか?」


「うん」


アイヴィーの希望なら構わないけど。


「じゃあ行こっか」


手を繋ぎ家を出て巌窟亭へ向かった。



〜午後12時50分 第2区画 巌窟亭〜



「煙がいっぱい」


アイヴィーは興味津々で施設を見渡す。


「あそこの鍛治工場で職人が働いてるんだ」


「…鉄の匂いがする」


「鉱石を叩いたり炉で溶かして精製し直したりするから熱気も凄いぞ」


モミジに挨拶に行こうと中に入る。


「…おっ!ユウとアイヴィーじゃねぇか」


「ん」


モミジが顔を綻ばせ脇を抱え抱っこする。


「今日はどーしたよ?」


「悠と遊びに来た」


「そっかそっか!」


「冒険者ギルドと違うし見てて楽しい」


「将来はアイヴィーも巌窟亭に登録して職人になるもんな!」


え、そうなの!?


「初耳なんだけど」


「職人になるかどうか分からないけどモミジに細工技術は習う約束」


「おうよ!」


「まだ先の話だけど頑張る」


「…俺がいつでも教えてやるのに」


「モミジがいい」


な、なんかショックゥ!


「アイヴィーはかわいいなぁ〜…うりうり!」


「あう」


頰を摺り寄せ愛でるモミジと満更でもない表情のアイヴィーにほっこりした。


「やっぱ面倒見が良くて優しいなぁ」


「そりゃアイヴィーは…ぎ、義理の…ごにょごにょ…だから当然だろ…?」


小声で聴こえない。


「あーー!?お、お前…姉貴に馴れ馴れしく甘えやがって……どこのどいつだよ!」


依頼書の束を抱えたダーニャが走ってきた。


「俺の娘だ」


「…えぇーー!ユーって子供いたの?」


「おう」


「二人とも10歳だっけか?ダーニャも挨拶しとけ」


ダーニャとアイヴィーが向き合う。互いにちょっと緊張してる様子だ。


「……私はアイヴィー」


「オレはダーニャ!姉貴の一番弟子だ!」


「そうなの?」


「おー!」


「ダーニャは鍛治職人?」


「まぁな」


「…かっこいい」


「べ、別に!…アイヴィーも冒険者なんだろ?」


「うん…影を操れるよ」


「影?」


「これ」


「う、うぉーーー!?スッゲー!」


アイヴィーの影が依頼書の束を持ち上げる。


「めっちゃカッコいいじゃんか!」


「…えへへ」


大興奮のダーニャにアイヴィーは照れ笑う。盛り上がり仲良くなっていく二人を遠目で見守る。


…他人に自分のスキルを隠し見せるのも戸惑っていたアイヴィーが笑ってる。そんな()()()()が俺はとても嬉しい。


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