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ココブー王国の再建!②



〜4時間後 ヒャタルシュメク 秘匿通路〜


「…ぜぇ…ぜぇ…!」


変わり映えしない通路をひたすら登る。


自動で床が移動するエスカレーターみたいな便利装置は見事にぶっ壊れていた。


「だ、駄目だ……もう無理!」


ハク達を召喚して移動しよう。


「ふぅ…ふぅ……ま、真神樂蛇」


息も絶え絶えに唱える。


見慣れた魔法陣が展開するも萎んでいく。


「え?」


弱々しく一瞬だけ光を放ち三人を召喚した。


「馳せ参じました」


「やっほ〜!」


「お腹空いた…ご主人様…ご飯」


「……小さくない?」


ココブー族と変わらない身長だ。


ちんまりしてて可愛いが乗れないやん。


「ちゃんと言ったじゃーん!力を殆ど使っちゃうってさ〜」


「荼枳尼印法・神御は荒神の言霊の中で最上級位の術ですので」


「…四日くらい元に戻らない」


「おうふ」


完全にあてが外れた。


MPを消費し無駄に血を流しただけかーい!


「…ご主人様…ご飯〜」


裾を引っ張り飯を強請るラン。


「僕は頭に乗る!ゴーゴー!マスター!」


シロは頭に飛び乗りはしゃぐ。


「小さき身なれど道案内を務めましょう」


前方を指差しよちよち歩きでハクが先導する。


帰る気は微塵もない様子だ。



〜2時間後 秘匿通路〜



「…はむはむ」


「ゆっくり噛むんだぞ」


「ねーねー…僕にもちょーだいよー」


「はいはい」


「主!段差があるので気を付けて下さい」


「…これで流石に転ばないぞ?」


右肩にラン…頭にシロ…左肩にハク…三人を乗せ出口を目指し通路を歩く。


「うーん」


「どうしました?」


「…ちょっと依頼結果の報告ついて考えてた」


目的は達成したがゼノビアさんにどう説明する?


…ナックラビィーの脅威が去りココブー族は漸く平穏に暮らせる訳だし現段階で第三者が介入するのは望ましくない。


嘘を吐いても暴露そうだな……ギルドカードのログも確認されたら拙いし先にラウラに事情を説明した方が無難か……そうしよう!


「堂々と御自分の成し遂げた偉業を説明すれば宜しいのです」


「偉業?」


「ええ」


「…むぐむぐ…むぐむぐ…深淵のふぇものふぉ…むぐ…駆除でひぃふのふぁ…ごくん!…マスターだけだもんね〜」


「凄いのはミコトだぞ」


「御謙遜を…決断し力を行使したのは貴方ですよ?」


ハクは首を振り否定する。


「ゴウラさんの方が滅茶苦茶強かったし」


「…うん…あの男は確かに強い…『雷神』と『地母神』の恩恵を顕著に受けてる……でも深淵の獣を倒せない…倒せるのは穢れを厭わず屠る者…ご主人様だけ」


「大袈裟だなぁ」


「あははは!そーゆー無自覚で鈍感なマスターが僕は好きだよ〜?」


「さいですか」


「…ふんっ!ハクはもっと慕っておりますからね?」


「ご主人様はご飯食べさせてくれるから好き」


他愛無い会話を楽しみつつ進むと遂に目的の昇降機が設置された場所に到着した。



〜秘匿通路 都市輸送昇降機〜



「長かった…マジで長かった……」


「お疲れ様です」


巫女服の裾で顔の汗をハクが拭う。


斜行型の大型昇降機のレバーを引くと低い金属音が鳴り稼働した。


等間隔でレールに設置されたライトが点灯する。


中々の速度で昇っていく昇降機の柵にもたれ座った。


「…古代人は発展した文明を築いてたんだな」


何気なく呟いた。


「滅びて当然の屑」


「え?」


ランが冷たく答えシロが頷く。


「主が仰る古代人とは創造神が定めた()()()()()を犯し見放された種族です」


「禁断の領域を犯した?」


「愚かにも()()()()()()()()()()()()としました」


「…えぇー」


粘土細工じゃあるまいし作れるもんなの?


「創造神に反旗を翻した古代人と神々の戦争が勃発し古代人は敗北……その折に深淵の獣が世界に溢れたのです」


スケールがぶっ飛んでる話だ。


「深淵の獣は…神も人も喰らい…混沌を招いたんだ」


「…ミコト様は皆を救うべく先陣を切り身を犠牲にして深淵の獣と闘った…穢れを背負い…瘴気に蝕まれ…それでも闘い続けた」


「………」


「でも勝利したミコト様を待ってたのはね〜」


()()()、か」


「左様で御座います」


「神々と古代人は秘密裏に結託…ミコト様を騙し真名を奪って神樹に封じた……御使の私達は歯痒い思いで……ずっと見てた」


「神々も古代人も深淵の獣も大っ嫌い」


ランとシロの言葉には強い憎しみが込もっていた。


「……」


レールを進む昇降機の音がやけに響いて聴こえる。


暫し間を置いて答える。


「…ミコトと出逢えて俺は幸せだけどな」


紆余曲折あったが紛れも無い事実だ。


自信を持って断言できる。


それを聴いた三人は嬉しそうに微笑み頷いた。


んー…歩き疲れたせいか眠気が凄い。


到着するまで少し休もう。



〜3時間後 秘匿通路 出口付近〜



「主…主…起きて下さい」


囁き声がする。


「ん…あと10分…」


微睡む意識の中でそう答えた。


「おっきろーー!」


「ごふぁ!?」


衝撃に襲われ目が醒めた。


「ランも起きるのだ」


「寝てない…寝てないよー…」


膝で涎を垂らし眠るランの頰をハクが抓る。


「いひゃい〜」


「……すっかり眠ってたみたいだな」


昇降機は静止し到着していた。


「そだよ〜!引っ叩いてよーやく起きたもん」


立ち上がり背伸びをする。


「あと一息か」


マップを確認すると緑の矢印はすぐそこだ。


「口惜しいですが我々の時間も底を尽きました」


「楽しかったよ〜」


「…ご主人様…またご飯食べさせてね?」


三人が透けていく。


「またな」


わしゃわしゃと頭を撫でた。


「わふーい!」


「ふふっ」


「…擽ったい」


光の粒子を残し消えた。


……あと一踏ん張りと行きますか!



〜数分後 秘匿通路 出口〜



緑の矢印が点滅する場所に到着するも出口が見当たらない。


頭上に微かな光が見える。


滑らかな鉄の壁は突起物はなく淵嚼蛇で登るのは難しいだろう。


「…なんだこれ?」


中央に横たわる物体を発見した。


スーパー戦隊シリーズの敵役が乗る合体ロボットみたいなデザインの…機械?デポルの駆動鎧(オートメイル)にも似てる…あれが()()()()()だと知った時は本当に驚いた。


攻防一体の広範囲武器って言ってたっけ?…今は関係ないか。


メッキが剥げ錆びているが原型を保ってる。


試しに頭を叩いてみたが反応はない。


…鑑定してみようか?



「動力炉稼働開始…体温感知…処理開始……」



う、動いたぁ!!


「魔導回路損傷…修復開始…記憶領域…再構成」


顔部分が点灯し動き出す。


「自動護衛機認識番号196」


慌てて距離を取り武器を構える。


「…言語領域拡張……起動者(ライザー)よ…御命令を」


「お、俺は契約者ですけど?」


素っ頓狂な返答をしてしまった。


正体不明のロボットは傅き問う。


「御命令を」


やべぇ…超展開だよ?


「(とりあえずサーチ…)」



ーー対象を確認。ステータスを表示ーー

名前:自動護衛機認識番号196


戦闘パラメーター

HP5000000

筋力12000

敏捷13000

技術17000


戦闘技

超熱排出ブレード

49mm魔導砲

魔導機関銃

制限解除

自爆

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

古代人の脳幹と魔導回路を繋ぎ合わせ動力炉で稼働する人造兵器でロストテクノロジーの結晶。起動者の命令を遵守するようにプログラムされている。


自動護衛機認識番号196は古代人の命令により秘匿通路を護衛してきた。風化を防ぐ為に活動を緊急停止し起動者を待つ。


遥か悠久の時をただ待ち続けた。起動した契約者の神魔の影響か…自動護衛機認識番号196のプログラムにはエラーが起きている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「……マジか」


思わず天を仰ぐ。


「御命令を」


「えーっとだな……?」



〜30分後〜



「…………」


頑張って知る得る限りの情報を伝えた。


拙い説明だったが自動護衛機認識番号196は理解しただろうか?


そもそも脳幹を繋ぎ合わせた人造兵器を造るって常軌を逸してる。挙句の果てに神も造ろうとするし創造神も怒るに決まってるわ…古代人って最低最悪じゃん。


「理解した」


「おぉ」


「起動者よ次の御命令を」


…やり辛い……あっ!


「俺が来る前に誰かここに来なかったか?」


「緊急停止中の録画記録検索…検索…検索…検索……該当…()()()()()()が到達…移動シャフト起動を確認」


「無事に脱出できたのか」


モアブと再開し家族で仲睦まじく暮らしたと信じたい。


「起動者よ次の御命令を」


「…もうちょっと感傷に浸らせてくれよ」


「1秒経過…2秒経過…3秒経過…4秒経過…5秒経過…」


そーゆー意味じゃない!


「まぁいいや…自動護衛機認識番号196は……あーもー呼び辛い…今日からお前の名前は…イクローな!」


「認識名変更処理開始…イクロー…了解」


よしよし!


「イクローはどうしたい?」


「起動者の御命令のままに」


「………」


家に連れて帰るのは無理だ…かといって放置じゃ可哀想だし……おっ!名案が浮かんだぞ!


「先ず外へ移動したいな」


「了解。移動シャフト起動」


イクローが中央に描かれたマークに触れる。


光の筋が床と壁を伝い床が動き上昇した。


「…こーゆー原理か」


「起動者よ御命令を」


「ふっふっふ…次はだなーー」



〜百合紅の月4日 早朝 ココブー王国〜



長かった秘匿通路の出口は東通路に繋がっていた。


穏やかで大人しくなったモンスターと緑に充ちた自然を満喫しつつココブー王国に到着!


無事に帰って来れて一安心だ。


イクローを従え帰還した俺をキング・ドドを筆頭にココブー族が総出で出迎える。



〜ココブー王国 東門〜



「ムガルガ…ユー…感謝の言葉もない……!」


「当然のことをしただけですよ」


「…我々…未来永劫…ユーの伝説を語り継ぐ…ココブー族を救ったムガルガ……一生の友…!!」


「ユー!ヤプーール!!」


「エヘヘ!…伝説ノムガルガ〜〜!」


「おっと」


ニコとミカが抱き着く。


…両親の遺言と真相を話さなければいけない。


二人にはとても辛い話になるだろう。


「……無事ニ帰ッテ来テ嬉シイ」


カカが笑う。


「ココブー族ノ戦士ヲ代表シ礼ヲ言ウ」


「マジシモ!ヤプール!」


「ヤプール!」


「ムガルガ!ムガルガ!」


「伝説ノムガルガーー!」


これだけ喜ばれると変に照れ臭くなっちまう。


「ユー…尋ねたい…あれは?」


キング・ドドが離れた位置で佇むイクローを指差す。


「自己紹介するよ…おーい!」


「「ワブール!?」」


ホバーリングで移動する姿を見て驚くニコとミカ。


「俺が見つけた古代人の遺物で名前はイクロー」


「護衛対象認識…護衛対象認識……対象人物…ココブー族…対象区域…ココブー王国…」


「ココブー王国を守る()()()()()だ」


「エエーー!?」


「古代人の遺物…」


「…危険ハナイノカ?」


「ない!」


イクローとの会話を思い出す。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『お前はココブー族と王国を守ってくれ』


『ココブー族…王国…了解。護衛期間は?』


『ずっとだ』


『半永久期間と認識』


『イクローにも新しい生き方がある』


『理解不能』


『…今は理解できなくてもきっと分かるよ』


『……』


『…絶対に危害を加えちゃ駄目だぞ?』


『最優先安全コードを適用』


『イクローはココブー族の守護者になるんだ』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「準命令権をココブー族に委譲…ココブー族の守護者イクロー…護衛開始」


「ワブール!守護者!」


「ムガルガノ使イ…守護者イクロー!」


「カターイ」


「ガムッチャ…変ナ臭イ…?」


「護衛対象が蝟集…対処方法検索…検索…検索…該当無…学習プログラム稼働」


イクローに興味深々だ。


その後、キング・ドドの遺跡で祝宴が開催される。


伝説のムガルガと皆が俺を褒め称えココブー族の伝統料理と秘蔵酒が振る舞われた。


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