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忿怒に燃ゆる荒神 ②



〜2時間後 厭世の底 封印の御柱〜


其処は無音で静寂が支配し黒い水が充ち睡蓮の花のように妖艶で不気味な黒花が咲いていた。


歩く度にぴちゃぴちゃと音がする。


端は確認できない。広く…空っぽで…不気味な場所だ。


漠然とした虚無感に冷静さを失いそうになる。


…封印されたナックラビィーの力なのか?


壊れる寸前の石柱に近付く度に強い胎動を感じる。


……戦う前に答え合わせをしよう。


「真神樂蛇」


ハクとシロとランを召喚した。


三人は厳しい張り詰めた表情で俺を見詰める。


「……主」


「マスター…」


「ご主人様」


「…言わなくても分かるよな?」


「はっ」


「…うん…ここに封印されてる怪物はね〜」


「人と神を喰らい…ミコト様が身を犠牲し闘った理の外の…異邦の襲撃者…」



()()()()、か」



「…左様で御座います」


…ミコトが怒りに震えるには十分過ぎる理由だ。


鋼の探究心が通用しなかった時点で予想は確信に変わった。


「神々を除き常世で深淵の獣を屠れる者は唯一人…主以外に居りませぬ」


「うんうん!ミコト様と強い絆で結ばれたマスターだけ〜」


「…神と仇なす者『冒涜者』のスキルは森羅万象を斬り臥せる刃『兇劒』へ変わった…()()()()()()()()()を超えてる……深淵の獣を殺し穢れを背負ったミコト様だけの……ううん」


()()()()の力に御座います」


「……そっか」


ハクは真摯な物言いでランの言葉を紡いだ。


「うー…ハクに台詞とられたー…」


「…五月蝿い」


「あはは〜」


「ふふふ」


こんな状況だが思わず笑みが溢れた。


そして…俺は願いを口にする。


「…ハク」


「何なりと」


「ミコトと話せる方法はないか?」


「……ミコト様と?」


「どうしても直接話がしたいんだ」


「この場所なら不可能じゃない…けど」


「うん〜……あのね?本当は日蝕の時しかマスターと邂逅できないミコト様を顕現させるとなると…うーん…召喚した僕たちの力を殆ど使っちゃうよ?」


「深淵の獣と闘う主に我らの力は必要不可欠では?」


「…それでも、だ」


「………」


「……あーもー!仕方ないなぁ」


「ご主人様は頑固」


「…愛念の情ゆえ…ハクは心嬉しく思います」


「我儘言ってごめんな」


「いえ!それでは早速……シロ!ラン!」


「ういー」


「了解……幾億呪禁の命背き」


「闇い黯い童詩」


「六方五文に鐘鳴らす」


其々が呪文を唱え複雑な印を結び声を揃える。


「「「荼枳尼印法・神御」」」


一瞬だけ眩い光に包まれる。



ーーー………。


黒花が散り三人が消え悲痛な面持ちでミコトが現れた。


ーーー悠よ…悍しき深淵の獣と相見えるか?


「ああ」


ーーー……逃げても良いのだぞ。


「………」


ーーー妾は…妾を穢した深淵の獣が憎い…憎くて憎くて…堪らぬのだ…怨嗟に身を委ね獣を嬲りたい衝動に支配されてしまう……御主の慈愛で癒されしこの体が…また穢れると思うと堪らなく怖いのだ…。


「怖い…か」


ーーー深淵の獣を屠れば悠もより穢れを纏う。


「……」


ーーー……御主に枷を背終わせとうない。


「…馬鹿野朗」


ーーー!


「ミコトは言ったじゃねーか…俺たちは一連托生だって…」


ーーー悠…。


「……お前の敵は俺の敵だ!ミコトが許せない奴は俺も許せない…ミコトの怒りは…俺の怒りなんだよ」


ーーー………。


「穢れを背負う?…そんなもん幾らだって背負ってやるさ……俺とお前は相棒だろーが!?」


ミコトの悲しみも焦燥も憎悪も繋がるからこそ分かってしまう。


「…託された想いが…負けられない理由があるんだ…一緒に闘ってくれ」


ーーー…嗚呼……嗚呼…。


ミコトの被った仮面に亀裂が走る。


「辛くて怖いなら俺が傍に居る…俺は何時だってミコトの一番の味方で理解者だ」


壊れた仮面の欠片が砂になり消えた。


顕になったミコトの瞳は潤んでいた。


見る者を虜にする美しく透き通った金色の左眼から一筋の涙が頰伝う。


ーーー…其方の敵は妾の敵…妾の敵は其方の敵…ふふふ…遥か昔の記憶が甦り蝕み妾は弱気になっていたか…。


「誰だってそんな時はあるよ」


ーーー神でさえ恐るゝ深淵の獣……しかし獣を祓う無二の刃に敵う道理はなし…感傷に浸り己が運命を呪う愚考……金輪際せぬと約束する……妾には悠が居るのだから。


決意に満ちた表情と吹っ切れた眼差しに安堵する。


「そうこなくっちゃな!」


ーーー……。


急に抱き締められた。


「わぷ!み、みふぉと…?」


む、胸に溺れるぅ!


ーーー愛しい男よ…この忿怒に燃ゆる猛き業火…力倆を授けん…。


赤い光が俺に流れ込む。


ーーー…悠…深淵の獣を解き放てば眷属が常世に具現するであろう。


「!」


ーーーこの封印石と空間には…審判と掟を司る『裁決神』に汲みするスキルの封印が施されておる……獣を解放しても()()汚辱を食い止めようが…猶予は余り無い。


「………」


ーーー出方を窺う必要ないぞ…全霊を持って迅速に殲滅せよ……()()()()()()と怒りを打つけるのだ。


「りょうふぁい」


ーーー…ふふ…こうして其方と睦み合って居たいが時間切れか……日蝕の刻を楽しみにしておるぞ?


甘い残り香と光の粒子を残しミコトは消えた。


「…ステータスを確認しとくか」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:黒永悠

性別:男

種族:人間

称号:約定の破壊者

職業:禍災の契約者 Lv2


戦闘パラメーター

HP410000 MP21000

筋力17500 魔力3000 狂気24000

体力7200 敏捷12000 信仰-12000

技術12000 精神3000 神秘7500


非戦闘パラメーター

錬金:180 鍛冶:200

生産:150 飼育:140


・耐性

狂気の極み

不朽の極み

聖奪の極み

不死耐性(Lv5)

神秘耐性(Lv Max)


・戦闘技

忿怒荒神流

剣者の理

簒奪技


・奇跡

骸の呼声

蛇縄絡

逆誄歌

倶利伽羅剣←



・呪術

禁呪・真神樂蛇

禁呪・淵嚼蛇

禁法・縛烬葬

禍面・蛇憑卸


加護:アザーの加護 夜刀神の加護

神魔:祟り神のミコト(親密度150%)


・固有スキル

鋼の探求心

鍛治師の心

閉心

兇劍

顕魔

魔人

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


奇跡

倶利伽羅剣くりからけん

MPを大きく消費し夜刀神の忿怒の業火を刃に宿す。付与された武器は一定時間(30秒)だけ属性を無視し攻撃力が大幅に増強する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


頼もしい奇跡をミコトは授けてくれた。


「ありがとな……よしっ!」


両頬を叩き気合いを入れ直す。


「ふぅ」


息を吐き金剛鞘の大太刀を抜いた。


……これは決闘じゃない。


深淵の獣(ナックラビィー)をこの世界から永遠に駆除するのだ。


「剣者の理」


黒い靄が一瞬だけ全身を覆う。


「淵噛蛇」


刀身を黒蛇が覆い金属音が静寂を破る。


「……」


集中し魔力を全身に漲らせた。


1…3…7…10…11……15…19…22…約22秒か。


「蛇憑卸の発動準備は完了…っと」


左手に持つ白面の魔力を漏らし弾き音を鳴らす。


白面を顕現する迄の時間は精神状態に左右される。


…ミコトと会話して正解だった…無策で挑めば甚大な被害が起きていただろう。真神樂蛇の助太刀がないのは痛いが攻撃特化の短期決戦……腹は括った。


封印石を睨む。


「…ナックラビィー討伐…」


大太刀を振るう。


「開始だ!」


封印石を壊したと同時に強い胎動の音が響き渡る。


大きな揺れに大気は震え崖道は瓦解し真っ逆様に落ちてゆく。


一瞬の無音の後に黒い水を巻き上げ嵐が起きた。


瞼は綴じない。



「…自由…命…魂…生…絶望せよ…深淵来たり」



ナックラビィーが姿を現した。


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