ヒャタル・シュメク ②
4月23日 午後22時8分更新
4月24日 午前8時25分更新
〜ヒャタル・シュメク ココブー王国 南通路〜
「転移した…のか?」
広間にあった石像と同じ石像…?
その前で呆然と立ち竦む。
……マップも切り替わってる。
「ちょっと整理しよう」
…恐らくあの石像は転移石碑みたいな物で…あの呪文は起動するための鍵……古代語だから今まで読める人も居なかった。
石像を調べてみる。
「あ」
ビンゴ!!この石像にも文字が刻まれてるぞ!
〜数分後〜
試しに呪文を唱えるとあの広間に戻れた。
「行き来の仕方は判明したし先へ進もう」
んー…しっかし雰囲気が変わったな…。
このカラフルなラクガキ…いや壁画か?
部族っぽい飾り付けも独特な世界観を演出し甘酸っぱく濃い緑の匂いが不可思議な木の果実から漂う。
水が流れる音も聴こえた。
「天井が見えないぞ」
光も差し込まないのに植物の成長が著しい。
熱帯雨林の地域にある遺跡って感じじゃん。
…もしかしたらココブー族がいるのかも。
「むっ!?」
小さな白いマークに赤いマークが…!
黒いマークは俺……距離はさほど離れてないぞ。
マップを頼りに走って向かった。
〜ココブー王国 南通路〜
「クルナ!アッチイケ!」
「怖イヨウ…オ兄チャン……」
「…ブマーブ!ミカハ俺ガマモル!」
ーー…シュロロロロ……ブギッ!?
「「!?」」
…間一髪だったか。
ーージュギッギッギッギッ…!!
淵嚼蛇の黒蛇が百足とカメレオンが合体したっぽい醜いモンスターを締め上げる。
サーチしとくか…名前はムグジャジ…ふむふむ…麻痺攻撃を得意とするモンスター…肉食性で非常に凶暴……逃がすには目に余る。
「人ダト!?」
「…オ、オ兄チャン…」
赤ん坊位の大きさの小人が喋る。
…この子たちがココブー族か?
黒蛇を解除し燼鎚・鎌鼬鼠の刃が煌いた。
ーーシュ…ロッ…ロ……?
無数の肉片が地面に転がり溢れた青紫色の臓物がえぐい臭いを発する。
…これを回収するのは嫌だな。
呼び出した灼熱の炎で死骸を燃やし尽くした。
これで良しっと!
「さて…」
怯えた眼差しを向ける小人に視線をやる。
「… !」
「ウゥ…」
この愛くるしい風貌はアマルティアを思い出すぜ。
半裸の部族衣装を身に纏っている。
亜麻色のふわふわした髪…くりっとした眼…褐色の肌…それにギザっ歯で小さな細長い尻尾……超可愛いじゃないか!
「ナ…ナンデ…ココブー王国ニ人ガ……?」
「…王国?やっぱり君たちはココブー族か」
「コ、コイツ…俺ノ言葉ガ分カッテル!?」
ココブー族の少年が驚く。
「…ウソ……オ兄チャン…コノ人ハ契約者ダヨ!」
少年の背中に隠れてる少女が叫んだ。
どうやら分かるらしい。
契約者を好むってゼノビアさんが言ってたっけ。
「ドバーマ!?」
ドバーマ?
「…ちょっとお話をしないかい?」
「………」
「この距離から近付かないからさ」
座って穏やかな口調で喋り警戒し怯える二人に敵意はないとアピールする。
「…イイゾ」
手に持ったナイフを背負い少年は答えた。
〜数分後〜
簡単に互いの自己紹介をする。
「君はニコでその子はミカって言うんだな」
「ユー…変ナ名前…」
「…パコガ…人ハココブー族ヲ攫ウ怖イ生キ物ダッテ言ッテタ」
「…デモオドゥムカラ助ケテクレタヨ…?」
オドゥム?
「そーゆー悪い奴もいるが俺は違う」
「オ前ハ違ウ?」
「うん」
ニコは少し考えて頷いた。
「分カッタ」
…えー…あっさり信じてくれるんだな。
「契約者ハマジジモ!」
「ンワード!ンワード!」
会話の合間に不思議な単語が入る。
「ユーハナンデ王国ニ?パジャモノ石像ノ呪文…人ハ読メナイ」
「古代語は得意なんだ。…俺は君たちココブー族を助けに来たんだよ」
「!!」
「…ユーハムガルガ!?予言ノムガルガ!!?」
「ム、ムカルガ…?」
「王様ガ言ッテタ!ココブー族ノ危機…ムカルガ…助ケニ来ルッテ!!」
「ヤプール!ヤプール!」
「ヤプール!ヤプール!」
その場で急に踊り出すニコとミカ。
…会話の要領は得ないが警戒心は解けたかも?
「…ヤプー…オ兄チャン…オ腹空イタ……」
踊りを止めてミカは蹲る。
「ウー」
…俺も腹が減ったし二人に何か食わせてやろう。
〜10分後〜
「美味シイ!」
「ガツガツガツガツ」
オルティナが作ってくれたサンドイッチと非常食の干し肉をあげる。
…随分とお腹を空かしてたんだな。
「もっとあるからゆっくり食べろ」
二人の食べる姿を見てるだけで心が癒される。
「ユーハ優シイムカルガ!」
黙って俺はニコとミカを見守った。
〜20分後〜
「ケプッ…ダンビダ…ダンビダ…」
「アウ〜…」
ぱんぱんに膨れたお腹を摩りながら二人は満腹感に浸っていた。
俺は疑問を口にする。
「なんであのモンスターに襲われてた?」
「…『ナックラビィー』ノセイ』
「!」
「ウン……封印ガ保タナイッテ王様言ッテタ…ソレデ他ノ優シイオドゥムモオカシイ……本当ハ此処モ来チャ駄目ッテ言ワレテル…デモゴ飯ナイ……カッパノ実ヲ取リニ…」
「……お父さんとお母さんは?」
「「………」」
その俯いた悲しい仕草が答えを物語っていた。
子供が満足に飯を食べれないほどココブー族は大変な状況に陥ってるのか……。
「…魔女ノ予言…ムガルガ…ユー!!」
「…助ケテクレル…?」
服の裾を摘みミカは懇願するように見上げた。
「…さっき助けに来たって言ったろ?」
頭を撫でて安心するように微笑む。
「ヤプール!!」
「……」
昨夜のアルマとの会話を思い出す。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『知ってるわよ』
『おー』
『私が封印されて二年後だったかしら?…経緯は忘れたけどランダが行った場所だし」
『ランダが?』
『にゃふ!ランダはそこで可愛らしいライカンと……理外の魔物に出逢ったって言ってたわね〜」
『ライカンはココブー族だと思うが…魔物?』
『正確には魔物かどうかも怪しいらしいわ』
『…ふむ』
『やっとの思いで封印したって言ってたっけ』
『魔王って呼ばれてたアルマを封印したランダがやっと…?』
『……あっ!』
『?』
『………』
『急に黙り込んでどうしたよ?』
『…なるほどね〜…繋がったわ』
『?』
『ランダの予言はこれを意味してた……ったく!数百年後に約束を果たせって…こーゆー……あのバカ!!』
『…アルマ?』
『ちょっと悠!あんたに頼みがあるわ』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…アルマの頼み…それはヒャタル・シュメクの最深部にランダが封印した魔物の討伐だった。
対象はナックラビィーで間違いないだろう。
ゼノビアさんの依頼…ランダの約束…ココブー族…偶然か運命か全ては繋がっていたのだ。
緋の魔女と伝説的な偉人であるランダすら苦労した魔物を俺が倒す……上等だぜ!
約束も依頼も達成させなきゃ男が廃るってな!
「詳しい状況も知りたいし王様に会いたいな」
「王国マデ案内スル!」
「…ムガルガノ道案内…ミカモガンバル!」
……って言っても歩幅が違うしモンスターと遭遇したら危険だ。
「二人とも俺に掴まれ」
「ワーイ!」
「ンショ…ヨイショ…」
ニコとミカがコートをよじ登る。
「タカーイ!」
頭と肩に其々しがみついた。
「よし!行こう」
ココブー王国に向け出発する。
作者のキキです(。・w・。)
この後にちょっとだけ閑話を挟みます。
また直ぐに本編を再開する予定です((〃´▽`〃))/“




