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ヒャタル・シュメク ①

4月23日 午後12時25分更新


〜扉木の月30日 第99区画〜


翌日の午前7時20分。


支度を整えて目的地の第99区画に到着。


周囲は障壁魔導具の鉄線に囲われ厳重な鉄格子と扉がヒャタル・シュメクへの入り口を封鎖していた。


…この区画はこれだけの為にあるんだな。


周辺に民家や店は一件もない。


あるのは頑丈そうな建物だけだ。


「どうも」


作業服を着た中年男性が声を掛けてきた。


「あなたが依頼を受けたと彼女に聞いてね……昨日は事務所で寝て待ってましたよ」


「…えーっと?」


「私はベルカ下水局局長のプラナタイムです」


「あー!俺は」


「ご存知ですよクロナガさん」


さいですか。


「あなたは有名ですからね……依頼の詳細は?」


「ゼノビアさんから聞いてます」


「ならば前置きは省きますね」


懐から精巧なヒャタル・シュメクの地図を取り出す。


「ココブー族の目撃情報はここで確認されてる」


「ふむふむ」


記載された経路の最奥だった。


そこから先は未白である。


「…目撃地点は凶暴なモンスターの縄張りで…ここに至るまで道のりも険しい」


「分かりました」


「クロナガさんにはココブー族の痕跡採集と可能であれば未到達経路の開拓もお願いしたい…ゼノビアはあなたを()()()()()()()()()()だと私に太鼓判を押して紹介してくれました。…霊獣族以外で獣人の言語が分かるのは契約者しかいないですし」


あのゼノビアさんが俺を?…やる気が漲るぜ!


「宜しく頼みます」


未到達経路の開拓か。


…どのみち()()()()()()()()()()まで行くしな。


いよいよヒャタル・シュメクへと足を踏み入れた。



〜ヒャタル・シュメク 絡み合う廃道〜



「これは迷路だわ」


プラナタイム局長の地図を確認したお陰で詳細に表示されたマップウィンドウを眺め呟く。配線されたランプが照らす複雑な地下廃道は縦横共に広い。この辺りは先駆者達が整備したのか思ったより荒れてないな。


結構な距離を進んだがココブー族が目撃された場所はまだ先だ。モンスターもいるけど本能による危険察知能力が高いのか襲ってこない。


寧ろ避けられてる?


…それもそれでちょっと悲しい。


ーーウガァァ!!


ーーヴヴヴ……!


「おっ」


…ってタイミングが良すぎるわ!


現れたのは体毛がない一つ目の猿…いや熊が敵意剥き出しで俺を威嚇してきた。


「退くなら見逃しーー」


ーーウガッ…ガ…?


「……てやるつもりだったんだが」


襲ってきた一匹が血反吐を撒き散らし絶命する。


放った殴打がHPを根こそぎ刈り取ったのだ。


…この程度の相手なら武器を使うまでもない。


ーーグッギャ!!


もう一匹には踵落としをお見舞いした。


「死骸は回収っと…」


知能が低くて力量差が分からないモンスターは危険だし倒しとこう。


マップを頼りに目的地を目指す。



〜ヒャタル・シュメク 息止の廃道〜



糞が煮詰まったような悪臭に顔を顰めた。


「きっつ…!」


薄暗い一本道がずっと続いてる。


…どうやら最短距離を選んでる内に開拓されてるルートを外れたみたいだ。


モンスターの骨や人骨が散乱してる。


この悪臭が異常状態を引き起こし動けなくなったのだろうか…?


「…長居は無用だ…さっさっと行こう」


ダッシュで移動した。



〜ヒャタル・シュメク 途絶えた廃道〜



「抜けたぞーー!」


深呼吸を繰り返す。あー…空気が美味い。


「…これは…」


一難去ってまた一難。


今度は道が分断され途切れてる。下は底が見えないほど真っ暗だ。


淵嚼蛇で掴んで飛ぶか。


「よっと」


ばっちり壁に食い付く。


これでオッケー…無限の彼方へさぁ行かん!


勢い良く跳躍すると余裕で飛び越えた。


そのまま進むと無数の古びた宝箱を見つける。


「マジか!」


箱が開けられた痕跡はない。


「……」


……持って帰っても良いよね…?…放置してるし…こんな所はきっと俺以外に誰も来ない。


持ち主がいたら返せば良い…うん!そうしよう。


僅かな罪悪感に苛まれつつ宝箱を腰袋に仕舞った。


家に帰ったら鍵穴を弄って開けてみよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

貴重品(分類不明)

・古びた宝箱×10

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



〜ヒャタル・シュメク 加虐の廃道〜



体感時間ではもう4時間以上は経過してる気がする。


いよいよ目撃地点まで目と鼻の先!


察するに此処に至るまで色んな道があるみたいだ。


俺が来たルートは近道っぽい。


「それにしても…」


外敵の侵入を阻む入り組んだ構造…闊歩するモンスターの出現箇所…罠の配置…アルマが言ってた通り最深部には……っ!


ーー………。


「…やる気満々ってか?」


目の前でのんびりし過ぎたらしい。


痺れを切らしゴーレムが岩石を放ってきた。


凶暴なモンスターの縄張りってプラナタイム局長は言ってたが…ひぃ…ふぅ…みぃ…結構いるな。


行手を阻むなら仕方ない。


「かかってこいよ」


四方八方からモンスターが襲い掛かってきた。



〜30分後〜



金剛鞘の大太刀が血塗れだ。


「えーっと…タオル…タオル」


刀身を拭きつつ貪欲な魔女の腰袋に吸い込まれたモンスターの死骸と素材を確認する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・モンスター

キュクロベアの死骸と素材×2

ヒャタルゴーレムの死骸と素材×1

ヒャタルレックスの死骸と素材×1

ヒャタルオーガの死骸と素材×1

遺跡竜の死骸と素材×1

カミダナツボミの死骸と素材×1

魔蛸オトの死骸と素材×1

遺跡スライムの死骸と素材×1

デュラハンの死骸と素材×1

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「良い運動にはなったな」


凶暴なモンスターもレベルアップした俺の前じゃ無力に等しい。


…饕餮はそう考えるとかなり強かった。


忿怒荒神流は以前の獣狩りの技法に比べ戦闘技の威力を増幅させてる。消費するHPの量も相応に増えてるが純粋な強化vr(バージョン)って感じ。


剣者の理で更に物理攻撃力の上乗せした一撃は凄まじかった。


…練度を高める自主練の成果も実感できたし努力ってのは期待を裏切らないぜ!



〜ヒャタル・シュメク 紡ぎ歩む光の間〜



石像が等間隔で並ぶ広間に辿り着く。


此処はココブー族が目撃された場所だ。


……それらしき生物は見当たらないしマップにも表示されてないがマップの縮図を考えるとまだまだ先があるのは確かだ。


しかし、抜け穴や仕掛けは見当たらない。


…こうなりゃ壁を壊して進むしかないか?


思案してると石像に刻まれた埃と傷で風化している奇妙な文字を発見する。


「古代文字か?…なになに…コッコブー…チャチャリ…ムチャマー?…変な呪文…っておわーーっ!!?」


体が宙に浮遊し光に包まれた。



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