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巌窟亭の支店と冒険者ギルド!



〜扉木の月28日 午前8時30分〜


昨晩はあのまま眠ってしまい気付けばフィオーネに起こされていた。


…寝不足でちょっと疲れてたからなぁ。


何故か頗る機嫌の良いフィオーネが用意してくれた朝食を食べ家に帰宅する。


〜午前9時40分 マイハウス リビング〜


「ただいま〜」


「…あ」


「うわぁ」


「おかえりなさい〜」


む…?


アイヴィーとアルマが何とも言えない顔で俺を見ていた。


「まさか朝帰りとは思いませんでした〜」


「ちょっと介抱してそのまま寝ちゃってな」


「介抱ですか〜…そうですか〜」


にこにこ顔のオルティナが不機嫌そうに見える。


「フィオちゃんと食事に行って朝帰り……どんな介抱だったんですかね〜」


含みありありの声色だ。


「…いや酔っ払ったフィオーネを部屋のベッドまで運んでそのまま…」


()()()()()()()()()


なんでそこにピンポイントに反応しちゃうの!


「…だからその…」


「どんな風に介抱したか非常に気になりますね〜」


洗濯物を畳みながら明るい声で話すオルティナの威圧感が半端ない。


「…壁に寄り掛かって暫く様子を見てたら寝ちゃってました」


「ふーん」


嫌な沈黙が流れる。


アルマが近付いてひそひそと話す。


「…何とかしなさいよあんた!」


「何をだよ!なんであんな不機嫌なんだ?」


「それ本気で聞いてるの?」


「当たり前だろ」


「…普通に考えて女と遊びに行って…朝帰りは……よ、()()()()()()()()()()()()()って思うでしょ!?」


「夜のバトル?」


「…あ〜〜〜〜っ!ったくこのバカ!!…だ、だから…ごにょごにょ…」


恥ずかしそうにアルマは囁く。


「!!…んなわけねーだろ!そんな事できる男に見えっか!?」


「見えないわよ!甲斐性なしだもん!」


か、甲斐性なしって断言された!


「それでオルティナの機嫌が悪い理由が分からん…」


これ見よがしに大きな溜め息をアルマは吐く。


「……とにかく責任とって宥めなさいよ!稽古も始めらんないでしょーが」


非常に納得がいかないが仕方ない。


「…なぁオルティナ?」


「……」


「その…なんだ……別にやましい事は一つもなくてだな…ちょっと寝不足気味だったし…あー…」


言葉が続かず困ってる俺をじーーっと見詰める。


「だからな…」


「朝ごはんの用意は出来てます」


「…へ?」


「私もまだ食べてなかったので一緒に食べましょ〜」


さっき迄の機嫌の悪さが一転し朗らかに笑う。


……意味が分からんぞ。


「オルティナ…?」


「変に勘繰った私がバカでした〜…ユウさんはユウさんですもんね〜」


「?」


疑問符しか浮かばない。


「ん〜…昨晩に()()()()()()()…私って結構嫉妬深いみたい」


「自覚?嫉妬深い?」


「ユウさんは気にしなくて大丈夫ですよ〜!早く食べましょ」


「あー…朝飯はフィオーネの家でご馳走に」


「何か仰いましたか〜?」


首を傾げ笑うが目が笑ってない。


「お腹が空いたなぁ!腹ぺこで死にそう!」


「ふふふ〜!スープを温め直しますね〜」


「…オルティナはなんで不機嫌だったの?」


「んー…」


「アイヴィーはよく分からないけど悠が悪いの?」


「…そーね。女の気持ちに鈍いとあーゆー風になるもんよ…あいつはずば抜けてるけどね」


「なるほど」


……もう何とでも言ってくれ!!


俺は腹がはち切れんばかりに用意された二回目の朝食を食べた。


…今日は家でゆっくり創作依頼をこなそう。


作業は順調に進み午後には無事完成した。最早ある程度の鍛治仕事は一日もあれば十分だ。


モミジから大事な話があるとメッセージも届いたので明日は納品と併せ巌窟亭に行こう。


…あ!ソロオーダーの件でゼノビアさんにも話を聞かなきゃな。


時間が空いたので刺繍魔導具の説明書を読み本格的に制服作成に向け練習も始める。技術と生産の数値が高いお陰で問題なさそう。


ただ糸や革が必要になるから買わないとなぁ…。


フィオーネのギルドガールの件はラウラとの話が終わってから皆に話す事にした。


…ギルド名は何が良いだろう…アイヴィーやオルティナにも一緒に考えて貰うか。


夕飯にその話をすると様々な案が出たが決定には至らない。ゆっくり皆で話し合って決めよう。



〜扉木の月29日 午前10時30分 巌窟亭〜



今日は先に巌窟亭に来た。


一時的に他の職人達も作業を中断しカウンターに集まる。


そんな重要案件か?…と思ってたらモミジから驚愕の内容が発表され俺が一番驚いた。



〜巌窟亭 受付カウンター付近〜



「ーーーーっつーわけだ!在籍する職人全員の了承は得てる……あとはGM(ジジイ)が同意すりゃ問題はねぇ」


「俺の冒険者ギルドに『巌窟亭』の支店か…」


「まさか嫌とは言わねーよな?…レイミーの道具屋は良くて『巌窟亭』はダメって言ったら……」


「…言ったら?」


「……泣くぞ」


「おふぅ」


てっきり殴るって言われると思った!


そんな憂いを帯びた表情と仕草で言うのは卑怯だ…断れんやん…。


「モミジ嬢を泣かせたらユーだって承知しねーぞ」


「じゃの〜」


「儂らはユウの冒険者ギルドなら喜んで力ぁ貸すぜ!」


「……」


「それによぉ冒険者と職人が互いを知り合う良いきっかけの場になるんじゃねーか?」


ローマンさんの一言に目を丸くさせる。


「儂らも今まで散々冒険者を毛嫌いしてきたが…あーゆー風に鍛えた武器や防具を直に喜ぶ姿を見ると……なぁ?」


「ガハハハ!悪い気はしねぇな!」


「…あいつら簡単な手入れもできねーしよぉ」


感動で目頭が熱くなる。


冒険者ギルドに歩み寄り手を結ぼうとしてくれてるのだ。……これを喜ばずにして何を喜ぶんだ?


「ベルカで一番頑固な職人共がこうも変わったのは…ユウ…お前のお陰なんだぜ?」


「モミジ…」


「一緒に頑張ろうじゃねーか」


肩に手を置き笑うモミジ。


「……宜しくお願いします!」


俺は色々何を言うか考えてたが最初に口から出たのはその言葉だった。


「わははは!今日は記念すべき日になんぜこりゃ」


「野朗ども!気合い入れっぞ気合い!!」


一気に活気溢れる。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「…ん?」


一気に場が静かになる。


「……あ」


「ローマン…てめぇ……このバカ!」


「口を滑らせ過ぎじゃ!!あれだけ内緒にしとけって……」


「内緒って?」


「い、いや…ユーは気にすんな!」


「…………」


指の骨を鳴らすモミジの無言の圧力がヤバい。


「さーて仕事仕事っと…」


「…あの鎧の依頼は今日までじゃったな!?」


「そーだったわい!二日は期日に余裕があった気がしたが……勘違いじゃな…うん!」


鍛冶場へ退散していく職人を横目にモミジに問う。


「どーゆーこと?」


「…オレの()()()()()()っつーか…」


「問題があるなら力になるぞ」


「力に……チッ!だったら…他の女を見ないでオレだけ見てろっつーの……」


「?」


小声でぶつぶつ呟くモミジに俺は首を傾げた。



〜20分後〜



支店の件について少し具体的にモミジと話す。


「…設備の建設はマジで任せていーのか?」


「おう」


「結構な額になるぜ?」


「大丈夫!僅かな費用で立派な鍛冶場を設置してくれる伝手があるんだ」


アルマって超一級建築士がいるもんでな!美味しい肉を食わせりゃ喜んでしてくれる。


「…ユウがそー言うなら信用すっけど…」


「そっちもGMに話を通すのは大丈夫か?」


「おー!放浪ジジイを探す手筈は打ったぜ」


「ほうほう」


「『金獅子』にジジイの捜索依頼を出した」


「…ゴウラさんに?」


「ファーマンのジジイとは仲が良いからよー……自分の武器のメンテナンスも頼みてぇらしいから喜んで探すってさ」


「マジか」


「『金獅子』の武器…『万夫不斧(ばんぷふとう)』はジジイが鍛えた最高傑作の一つだが手入れがめちゃくちゃ難しいんだ」


あの恐ろしい一撃を思い出し身震いする。


「支店進出の具体的な話はオレが考えて煮詰めっけど本格的に動くのは許可を貰ってからになんぜ」


「了解」


祭りは準備してる時が楽しいって諸説は本当だな。


楽しくなってきた!


「あとこれ…よっと!創作依頼の刀と銃な」


「…へぇ…銃は使い易さを重視してんのか?」


「銃の依頼者は女の子だろ?反動・重量を考えるとちょっとな。既製品よりか威力は高いし整備も単純で……何より弾切れの心配を減らそうと思ってさ」


「刀は…鉛重鉱石を惜しみなく使ってやがるなぁ」


「依頼通りに頑丈さを重視した」


「あの報酬金額でこの出来は破格だぜ。問題はねぇーし依頼者の二人に取りに来いって連絡しとく」


「頼むよ」


モミジから創作依頼の代金を受け取る。


ーーーーーーーーーー

所持金:1億4649万G

ーーーーーーーーーー


「それと来月…百合紅の月15日は予定を空けといてくれ」


「別に良いけど何かあるのか?」


「『武器市場』って職人・商人ギルドの合同イベントを第3区画で開催すっからよ」


「おぉ」


「レイミーから詳しい話があると思うけど先に言っとくわ」


「分かった」


百合紅の月15日…どんな催しか楽しみ!


「姉貴ーー!」


「あン?」


元気な見習い職人ダーニャの登場だ。


「ダーニャが鍛えたナイフを見て…ゲッ!?ユーじゃん」


「頑張ってるみたいだな」


自分で鍛えたであろうナイフが手に握られてる。


「せっかくだしユウに見てもらえ」


「ええーー……姉貴がいいっス」


「新米が選り好みたぁ良い度胸だな…あぁ?」


「…し、仕方ねーから見せてやんよ!」


分かり易くて可愛い子だなぁ。


「ふむ…けがきが甘いな…ほら」


甘い点を指摘をする。


「あ!ほんとだ」


「研ぎもまだまだ足りない」


「うぅ…自信作だったのに…」


「…でもしっかり鋼材を叩いてるのは分かる。細かい技術は練習が必要だけど……ふふ!手を抜かず取り組んでるのは偉いぞ」


「ま、まぁな!」


良い点はしっかり褒めてあげないとね!


「失敗は成功の母だ。鉱石ならいくらでも俺が用意してやるから頑張れよ」


「……こ、子供じゃねーし頭ぁ撫でんなよ!?」


「あははは」


照れてる照れてる。


「…ふふふ」


俺とダーニャのやり取りを見てモミジは笑う。


「あれ」


柱の物陰から職人達が此方を覗き見している事に気付いた。


「…本当の親子みてぇじゃな」


「あんな風に笑うとモミジ嬢もかわいいの〜」


「がははは!ちげぇねぇ」


「なんかこー…込み上げるもんがあるわ」


「わかる…わかるぞそれ!」


「…仕事を放り出して覗き見たぁ…よっぽどオレの拳骨制裁を食いたいみてぇだな!?」


顔を真っ赤にしたモミジが叫ぶ。


「やべぇ!!逃げろっ!」


「ーー待てコラ!?その髭引っこ抜いてやるっ!」


巌窟亭に悲鳴が響き渡ったのだった。



ーーーーーーーーーーーーーー

職人ギルド

ギルド:巌窟亭

創作依頼達成数:9

受注依頼達成数:1

納品達成数:3

CP:1650

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