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フィオーネの本気!②

4月17日 午後16時21分更新



「悠さんの冒険者ギルドに私を雇って下さい」


「……そう言ってくれるのは有難いが」


「他冒険者ギルドの移籍及び勧誘は禁止…ですよね?」


「ああ」


約束だし破るわけにはいかない。


「…ご存知ないでしょうがギルドガールは冒険者ギルドと複数年の契約を結び業績・勤務態度・勤務日数を参考にギルド側は契約を更新していきます」


「え!?ギルドガールって契約制なの?」


「はい」


……マジかよ。


「私は来月に『金翼の若獅子』で初めての更新日を迎えますが契約を更新するつもりはありません」


「……」


「フリーならどの冒険者ギルドに雇われようが誰にも文句を言う権利はない筈です」


「そりゃそうだが…」


有能なギルドガールを安易と手放すだろうか?


「今の給料だっていいだろうに」


「給金が低くても構いません」


「…でも」


「悠さんの力になりたい」


「……」


「…頑張る貴方の傍に私を居させて下さい」


沈黙が続き先に俺が答えた。


「…参ったな」


「え…?」


「断る理由が思い浮かばないよ」


「!」


「フィオーネがうちのギルドガールになってくれるなら俺もアイヴィーも嬉しい」


「悠さん…!」


「…後腐れがないようにラウラには俺からしっかり筋を通すよ。これからもよろしくな」


「私…私…頑張りますっ!!」


感極まったのかフィオーネの瞳が潤んでる。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()相談するつもりだった。


予想外だが悩みの種を一つ解決だぜ!


気心が知れたフィオーネなら気兼ねせず振る舞えるし仕事の知識も経験も豊富だ。


…あれ…ちょっと待てよ?


「フィオーネ」


「はい!」


「お父さんにはいつ説明するつもりなんだ?」


さっきの話を聞く限り絶対に反対されそうだが…。


「既に『金翼の若獅子』と更新しない旨と悠さんのギルドへ行く経緯を書いた手紙を郵送しました」


「…手紙?」


「断らないって信じてましたので」


頰に手を添え微笑む。


「おうふ」


……用意周到すぎて言葉がでない。


「ふふ!顔を真っ赤にして怒ってるかも」


殺意のベクトルが俺に向く予感がしてならない。


「とにかく私もこれで悠さんのギルドの一員です。経理・事務・手配等の仕事はお任せください。得意分野ですから」


めっちゃ頼りになる。流石はフィオーネ!


「本当に助かるよ」


「うふふふ」


んー…折角の記念に…そうだな。


「すみませーん」


「はい。御用でしょうか?」


ギャルソンを呼ぶ。


「この店で一番高いお酒をください」


「畏まりました」


注文を受け恭しく一礼する。


「…悠さん?」


「フィオーネの門出と選択に祝杯ってな」


「でも」


「まぁなんだ…俺も嬉しいんだよ」


照れた顔を誤魔化すように喋る。


「……はい」


フィオーネはとても嬉しそうに頷いた。



〜数分後〜



「ーーお待たせ致しました。こちら…当店で取扱う最高級の蒸留酒…リシュ・ブール・ドナテイロ…になります」


「まぁ」


…飲むのが勿体ないくらい綺麗な酒だな。


「ボトルの煌びやかな装飾に劣らず味も匂いも一級品のお酒…生産地『リマドーレ』の山峰に湧くエアウォーターの滑らかな舌触り…熟練の酒造り職人が蒸留した氷霊樹の果実の甘み…メルフランカの花の高貴溢れる匂いをご堪能下さいませ」


「ありがとう」


「正に()()()()()と飲むに相応しいお酒かと」


「まぁ…特別だなんてそんな…」


ギャルソンの言葉に目敏くフィオーネが反応する。


「リシュ・ブール・ドナテイロは値段が高く中々御注文されるお客様が居ません。…お二人のグラスに当店自慢のお酒を注ぐ事が出来て嬉しく思います」


「そんな高いお酒ですか?」


まぁ高いって言っても限度があるだろ。


「一本250万Gで御座います」


「へ、へぇー…」


我慢しろ…驚くな…ここでみっともなく騒いだら恥ずかしいぞ……完全に舐めてたわ…そりゃ頼む客も少ないだろうよ!!


「…凄く高いお酒ですけど大丈夫ですか?」


フィオーネが気遣う。


「…ははは!その程度の金額じゃ足りない位だ…フィオーネの美しさの前じゃ霞んじまう」


声を振り絞り精一杯の虚勢を張る。


「あ…あぅ…もう…本当に悠さんってば…」


頰に両手を添え顔を真っ赤に染める。


「左様かと存じ上げます」


反対に俺は口から魂が抜けそうだった。


…どんなに飲んでも酔えない自分の耐性が恨めしく思ったのは初めてかも…。



〜20分後〜



店内の客は遂に俺たち二人だけになった。


頃合いを見計ったかのようにフィオーネは喋る。


「悠さん」


「ん?」


「私をどう思いますか?」


「どう思う?」


「…綺麗とか…可愛いとか…」


フィオーネの頰は赤く口調も少しあどけない。


「美人で優しくて気配り上手…あとは…」


思い浮かんだ単語を口々に言う。


「……」


「守りたい人かな」


「守りたい?」


「放って置けないっつーか…困ってたら見過ごせない…フィオーネの辛い顔は見たくないしさ」


「私も同じ気持ちです…悠さんが笑うと嬉しいし…褒められると心が弾んで…舞い上がっちゃいます」


「照れるなぁ」


「…そんな悠さんが…!」


「?」


数秒の間を置いてフィオーネは言葉を紡ぐ。


「ちょっと頑固で…裏表のない不器用な性格で…他人のために一生懸命なとこも…心配で放って置けなくなっちゃうとこも鈍感でやきもきさせる態度も…全部含めて私は大好きです!」


………。


「俺もフィオーネが好きだぞ」


「…本当…ですか……?」


「嘘じゃない」


「じゃ…じゃあ…!!」


「上も下もなく俺は皆が大好きだし」


「はっ?」


「全員特別なオンリーワン…ってな!」


朗らかに俺は笑う。


「………もーーーっ!!!」


「!?」


急にテーブルに突っ伏しフィオーネが叫んだ。


「ちっ」


…え…ギャルソンの彼が舌打ち!?


「…ぶつぶつ…好きて伝えて…どーして…ぶつぶつ…」


何か囁いてる?


「絶対に…絶対に…いつか悠さんを…ぶつぶつ…射止めて…ぶつぶつ…もん…がんばれ私…挫けるな私…!」


「あのフィオーネさん?」


「〜〜〜っ!…ちょっと黙っててください!!」


「ふぇ!?」


フィオーネが怖いよぅ…!


「……お酒を注文してもいいですか?」


「ど、どうぞ」


ギャルソンを呼ぶ。


「…御注文でしょうか?」


「アルコール度数が高い酒を下さい」


「畏まりました」


「…結構な量を飲んでるしもう控えた方が」


「何か言いましたか?」


ギロっと俺を睨む。


「あー…うー…」


「お待たせ致しました」


「ありがとうございます…ごくっ…ごくっ…ごくっ!」


「えぇー!?」


ギャルソンが運んできた酒瓶をグラスに注がず瓶ごと飲む。


「ぷはぁっ…そもそも悠さんはですね……女心ってものを分かって無さ過ぎます!」


「…はい」


「…あっちこっちで女の子を誑かして……悠さんだって私が他の男性と仲良くしてたら嫌ですよね?」


「それは個人の自」


「…嫌ですよね!?」


「い、嫌です!」


酒乱モードのフィオーネの迫力ったら凄い。


たっぷり説教を食らったが途中で満足したようで…何故かすっげー甘えてきたけど…機嫌が悪いってゆーか…良いってゆーか…謎だ。


大好きって言われた時は()()()()()()しそうなった。


…あんな可愛い顔で言われたら正直堪らんわ!


紳士な俺じゃなきゃ誤解してるぜ……ってなもんよ。





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― 新着の感想 ―
[一言] 刺されて○ね! と言いたくなった。
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